ディレグラ配合錠ってニーズがあるのかなあ

 ちょっと考えさせられる配合剤が、29日開催の薬食審の医薬品第二部会で審議されるそうです。

29日に第二部会 「アレグラ」と鼻詰まり改善薬の配合剤を審議
(RISFAX 2012.11.16)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=39888

第二部会・29日審議  アレグラ配合剤「ディレグラ」、新規RA薬も
(日刊薬業WEB フリーサイト 2012.11.15)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226570849950.html?pageKind=outline

 記事の通り、その名も(名称が変わるかもしれないけど)「ディレグラ配合錠」という、フェキソフェナジンと塩酸プソイドエフェドリンの合剤です。

 プソイドエフェドリンは、心臓血管系の副作用で販売中止となったフェニルプロパノールアミン(昔ダン・リッチに含まれていました)の代替成分としてOTC医薬品にも広く使われていますが、構造的には近いものがあり、やはり心臓血管系の副作用の懸念があります。(意外と禁忌や使いにくい人も多いと思う)

 おそらく臨床試験もきちんと行われているので、その辺のところは大丈夫だと思いますが、後発品対策と次のスイッチ品の販売を念頭に置いての製造販売申請であることは否めません。

 また、最近では医療用としての使用実績がない(私が薬剤師になってからも、プソイドエフェドリンが配合された医療用医薬品というのは記憶にない)こともあり、単剤としての評価(インタビューフォーム)なども存在しないので、承認された場合、メーカーがどのようにプロモーションするかも興味あるところです。

 米国ではアレグラブランドの一つとしてAllegra-Dの名前で、OTC医薬品として販売されていますが、この薬だけはネットでの購入ができません。(州や店舗によってはオンラインで販売履歴の管理を行い、一定期間内での購入量の制限も行われている)

 Allegra http://www.allegra.com/products.aspx

 これは、以前にも紹介していますが、プソイドエフェドリンによるメタンフェタミン密造問題があるからです。(米国のいくつかの州ではプソイドエフェドリンを処方せん医薬品にしている)

 もしこのディレグラ配合錠が日本で承認された場合、施設によっては、30日を超える花粉症での処方が行われる可能性が考えられます。

 「保険で安く入手して、悪用する」などということは、まずありえないとは思いますが、プソイドエフェドリンを含むOTC医薬品を購入するよりはコスト・効率がよくなることを考えると、日本でもし承認された場合には、処方・調剤にあたってはこのことを頭の片隅に入れておく必要があります。(個人的には分割調剤にするか、処方日数の規制をした方がいいと思う)

 また成分から処方せん医薬品になることは考えにくく、薬局医薬品の取扱いとなれば、処方せんなしでの販売も可能になります。

 連用されることによる、心血管系への影響や、乱用や悪用への潜在的な懸念を考えると、本当に医療用医薬品としてのニーズがあるのかなあという気もします。

Pseudoephedrine(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Pseudoephedrine

(2013.01.28 追記)
関連記事です→TOPICS 2013.01.17 ディレグラ配合錠の審査報告書を読んでみた

関連情報:TOPICS
  2012.09.08 プソイドエフェドリン製品の販売制限、中国でも
  2011.05.18 プソイドエフェドリン大量購入者へは購入理由の確認が必要
  2010.06.10 プソイドエフェドリンを原料とした覚せい剤密造が摘発
  2010.06.11 プソイドエフェドリン問題の解説記事
  2010.10.16 プソイドエフェドリンの不適正販売で7760万ドルの罰金(米国)
  2009.07.30 プソイドエフェドリンのさらなる販売規制は行わず(英国)
  2007.06.06 市販鼻炎薬の販売は1回につき3日分までに制限(韓国)(旧サイト)
  2007.03.08 英国、プソイドエフェドリンの販売規制を検討
  2005.12.12 プソイドエフェドリン配合剤、全米で販売規制へ
  2005.11.03 カナダ州政府がプソイドエフェドエリンの販売を規制
 


2012年11月16日 14:19 投稿

コメントが3つあります

  1.  プソイドエフェドリン製剤のOTC医薬品からRx(処方せん医薬品)への逆スイッチ要請は、米国では覚せい剤(メタンフェタミン)密造防止の取組みと絡み、大きな流れとなっています。
     一方、実際にはOTC製剤しかも配合剤からの抽出、転換といったものは、小規模なものはあり得ても、大規模なものは見当たらないと聞いています。 現実の乱用薬物としての供給は、原料レベルでの横流しや密造といった大規模なレベルのものが主流を占めており、その摘発が進まないことが問題とされています。
     一方、生活者のOTC利用が阻害されないようにとの配慮から、電子的な記録システムの導入により、不適当な購入を阻止するが、通常の購入は阻害しないという仕組みの導入へと向かっているのが、米国の実情です。

  2. アポネット 小嶋

    いつもコメントありがとうございます。

    悪用についてはまず心配はいらないということですね。

    ところで、この配合パターンはどちらかといえばOTC医薬品にありがちな配合パターンですよね。

    個人的には第一類としての安全性が確認されてから、OTC医薬品として販売すればいいのにと思うのですが。

    花粉症となると当然何か月と続けて服用することになるので、鼻づまりに効果があっても、心臓に持病がある人などにはちょっと使いづらいと思うのですが。

    現時点ではどういう条件(例えば連続して何週間までとかのしばり)で承認されるかはわかりませんが、海外でもこういった配合剤は定期的にずっと飲まれているのでしょうか?

  3. アポネット 小嶋

    29日開催の薬食審・第二部会で、承認が了承されたそうです。

    アレグラの配合剤の承認を了承- 第二部会
    (医療介護CBニュース 2012.11.29)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38702.html

    薬価収載されないと使えないので、今シーズンはちょっと無理かなあ。

    承認審査情報が出たら、どのようになっているか注目ですね。