プソイドエフェドリン製品の販売制限、中国でも

 メタンフェタミンの密造の原料となる可能性があるとして、プソイドエフェドリンを含有するOTC風邪薬・鼻炎薬については、世界各国で厳しい販売制限が行われていることをこれまでもたびたび紹介してきましたが、お隣中国でも購入制限が今月から実施されているそうです。(地域によっては10日から実施のところも)

国家食品药品监督管理局 公安部 卫生部 关于加强含麻黄碱类复方制剂管理有关事宜的通知
(エフェドリンを含む製品に関する事項について 中国国家食品医薬品局 2012.09.04)
http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0844/74739.html

 今後、1錠あたり30mgを超えるものについては処方せん医薬品に、またOTC製品については一包装あたり固形剤で720mg、液剤で800mgの上限が設けられるそうです。(風邪薬の30%にプソイドエフェドリンやエフェドリン塩酸塩が含まれているとのこと。現有品は2013年2月末まで。当局は製造自体も大幅に削減したいらしい)

 また、購入にあたっては身分証明書(外国人はパスポート)の提示と、名前とID番号の記載が求められ、1回の購入も2個までに制限されるそうです。

 各紙によれば具体的に販売が規制の対象となるのは日本でいう総合感冒薬にあたる下記製品だそうです。

白加黑(1錠中プソイドエフェドリン塩酸塩30mg)
 http://baike.baidu.com/view/168949.htm

日夜百服宁(1錠中プソイドエフェドリン塩酸塩30mg)
 http://baike.baidu.com/view/432694.htm

新康泰克(新コンタック。1錠中プソイドエフェドリン塩酸塩30mg)
 http://baike.baidu.com/view/743500.htm
   (1カプセル中90mgを含む鼻炎薬は生産停止しているとのこと)

泰诺(タイレノール。1錠中プソイドエフェドリン塩酸塩30mg)
 http://baike.baidu.com/view/569523.htm

 韓国でも同様の規制(TOPICS 2007.06.06)は既に行われており、プソイドエフェドリン製品の購入に際し、はっきりとした制限がないのは日本くらいとなってしまいました。(60日分以上の場合は疑えといっても・・・)(→TOPICS 2011.05.18

 2010年のイラン人による覚せい剤密造事件が摘発(TOPICS 2010.06.10)されて以来、日本では問題が発覚はしていませんが、改めて大丈夫なのだろうかと心配になります。

関連ブログ:
エフェドリン含有薬品の購入制限|中国の覚せい剤事情
(弁護士小森榮の薬物問題ノート 2012.08.13)
http://33765910.at.webry.info/201208/article_2.html
わが国での密造事件|覚せい剤密造事件3
(弁護士小森榮の薬物問題ノート 2010.06.12)
http://33765910.at.webry.info/201006/article_12.html
キッチン・ラボの危険性|覚せい剤密造事件4
(弁護士小森榮の薬物問題ノート 2010.06.15)
http://33765910.at.webry.info/201006/article_15.html
やっぱりアシがつく|覚せい剤密造事件5
(弁護士小森榮の薬物問題ノート 2010.06.22)
http://33765910.at.webry.info/201006/article_21.html

関連情報:TOPICS
  2011.05.18 プソイドエフェドリン大量購入者へは購入理由の確認が必要
  2010.06.10 プソイドエフェドリンを原料とした覚せい剤密造が摘発
  2010.06.11 プソイドエフェドリン問題の解説記事
  2010.10.16 プソイドエフェドリンの不適正販売で7760万ドルの罰金(米国)
  2009.07.30 プソイドエフェドリンのさらなる販売規制は行わず(英国)
  2007.06.06 市販鼻炎薬の販売は1回につき3日分までに制限(韓国)(旧サイト)
  2007.03.08 英国、プソイドエフェドリンの販売規制を検討
  2005.12.12 プソイドエフェドリン配合剤、全米で販売規制へ
  2005.11.03 カナダ州政府がプソイドエフェドエリンの販売を規制

参考:
風邪薬購入の実名制を緊急実施=北京
(大紀元 2012.09.08)
http://www.epochtimes.jp/jp/2012/09/html/d99869.html
Public sneezes at law that tracks ephedrine
(China Daily 2012.09.04)
http://www.chinadaily.com.cn/china/2012-09/04/content_15730810.htm
(広東省:エフェドリンを含む風邪薬を購入際はIDカードが必要。1回の購入は2箱までに規制する)
http://www.news365.com.cn/xwzx/gd/201209/t20120908_665892.html
<事例が紹介されている。(製造中止になった)コンタックのカプセルが使われたらしい>
http://news.enorth.com.cn/system/2012/09/08/009970380.shtml
<詳細な解説がある>
http://roll.sohu.com/20120907/n352650514.shtml

16:30 17:20 リンク追加


2012年09月08日 15:56 投稿

コメントが3つあります

  1.  米国に端を発したPSE製剤規制が、英語圏以外にも広がりつつあるようです。 PSEが覚せい剤の密造原料となることは事実であるし、PSEを含む医薬品製剤から、PSEを分離精製することは理論上可能であり、また成功した例もあるとされています。
     一方、米国での覚せい剤密造の主体となっている巨大規模の密造工場では、横流しされた原末やそれに準じたものを原料とし、多成分の配合剤であるOTC咳止め薬や風邪薬は効率が悪すぎて、利用されていないとされていたはずです。 無論、密造の元を立つという意味で、取り組みを否定する必要はないと思いますが、ある種、スケープゴート探しの結果となっているとの批判もあったはずです。
     鼻かぜの諸症状に対処する上で、PSEの有用性は高く買われていますが、科学的な論議抜きに魔女狩りが進む中で、また一つ、信頼できるOTCが葬られようとしています。

  2. アポネット 小嶋

     購入に際しさまざまな制約がありながら、未だ米国で販売が中止とならないのは、やっぱり生活者から効果があると支持されているのでしょうね。代替のフェニレフリンでは効かないというのも見たことがありますよ。
     
     一方、中国のニュース記事を見ると、まいけるさんがご指摘のような原料横流しによる摘発例も確かにありますが、実際に風邪薬からPSE(プソイドエフェドリン)を精製して、大量密造したという事例も出ている以上、中国当局もかなり厳しい対応を行わざるを得ないのだと思います。

     セルフセレクションでの陳列も禁止とする通知も出ているようですね。
     
     麻薬犯罪が最高死刑になる(最近死刑になった日本人もいましたね)お国ですから、今の日本の販売状況をみて、「我が国や韓国も販売を制限しているのに、どうして日本はもっと厳しくしないんだ」って言われることはないでしょうかね?

  3.  各国の国内法での規制について、国際条約に基づくものでない限り、文句が出ることは無いと思われます。もっとも、日本でPSE製剤を大量に買い付け、それを韓国や中国で覚せい剤密造に利用した事犯が出れば格別かと思いますが、OTC医薬品の価格を考慮した場合、先ず引き合わないだろうと思われます。
     むしろ、医療用の単味製剤の不正利用の方が効率的なのではないでしょうか?