コデイン服用後の有害事象は遺伝子の型によって左右される

 米FDAは17日、授乳婦(nursing mothers)に対し、ごく稀ではあるが、コデイン服用後代謝の過程でできたモルヒネが乳汁に移行し、これを飲んだ乳幼児が呼吸抑制などの有害事象を起こす可能性があるとして、注意喚起を行っています。

FDA Warning on Codeine Use by Nursing Mothers
May Increase Chance of Serious Side Effects in Infants
(FDA 2007.8.17)
 http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/2007/ucm108968.htm
(リンク切れ)

Use of Codeine Products in Nursing Mothers
(FDA 2007.8.17)
 http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/
PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm118108.htm
(リンク切れ)

Use of Codeine By Some Breastfeeding Mothers May Lead To Life-Threatening Side Effects In Nursing Babies
(米FDA 2007.08.17)
https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm054717.htm

日本語訳概要が、医薬品安全性情報(海外規制機関 医薬品安全性情報)Vol.5 No.18に掲載されています。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly5/18070906.pdf#page=20

 コデインは通常、80%が肝臓中のCYP3A4で代謝され、ノルコデインやコデイン-6-グルクロニド(6位の水酸基がグルクロン酸抱合)になる他、10%がCYP2D6によってモルヒネに代謝され、この一部が中枢に働き鎮痛作用を示します。

 今回問題になっているのがモルヒネに代謝するCYP2D6で、CYP2D6のうちの遺伝子の特定の型ではコデインが超迅速に代謝(ultrarapid metabolisum)されるため、モルヒネが体内で多くできてしまうそうです。2004年のNEJM 誌にはコデイン服用後のモルヒネの血中濃度が健常者の20倍〜80倍に達するとした事例も報告されています。

Codeine Intoxication Associated with Ultrarapid CYP2D6 Metabolism
NEJM 2004;351: 2827-2831)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa041888
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/351/27/2827

咳止めでもコデイン中毒に!びっくり。(薬辞苑From Ph.由紀 2005年6月18日)
http://www.officemiks.com/yakujien/fromph2/nikki.cgi?act=browse&nmb=236&year=05

 カナダでは、コデイン+アセトアミノフェンの製剤を、会陰切開や帝王切開時の痛みを軽減するために広く使われ、また母乳で育てる習慣も多いことから、コデイン授乳後の母乳を飲んだ乳児が、呼吸抑制や嗜眠などを起こしたのち死亡する事例も報告されています。このため、専門家からは授乳婦がコデインをできるだけ使うべきではないとする意見も示されています。

Safety of codeine during breastfeeding: Fatal morphine poisoning in the breastfed neonate of a mother prescribed codeine.
Canadian family physician 2007;53: 33-35)
http://www.cfp.ca/cgi/content/full/53/1/33

 今回の注意喚起はあくまでも授乳婦を対象としてものですが、モルヒネは授乳婦の中にできるわけですから、当然授乳婦本人もモルヒネによる呼吸抑制などの中毒反応がおこる可能性があります。このためFDAでは、医療専門職に対し、こういった有害事象が起こる可能性があることを授乳婦に伝えるとともに、異常な眠気、錯乱、呼吸抑制、ひどい便秘などの症状が発現しないかどうか乳児だけではなく母親についてもモニターするよう求めています。

Information for Healthcare Professionals Use of Codeine Products in Nursing Mothers
(FDA 2007.8.17)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/
PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm124889.htm

 FDAの発表によれば、迅速代謝を起こす遺伝子の型を持つ人は人種により差はあるものの、日本人でも1%程度いるとのことです。私たちもコデインの調剤時やコデインが含まれたOTC(咳止めアネトンなど)を販売する場合は副作用の発現には十分注意を払う必要があるのではないでしょうか。

関連情報:授乳婦への薬の服用〜薬の母乳移行の観点から〜
      (第81回アポネットR研究会報告)

参考:
FDA warns nursing moms of pain drug risk
-Side effect of codeine can cause overdose in breast-feeding infants
(AP 2007.8.17)
http://www.nbcnews.com/id/20319327/ns/health-womens_health/t/fda-warns-nursing-moms-pain-drug-risk/
Codeine can turn toxic in nursing mothers: doctor
(CTV Ca 2006.5.11)
https://www.theglobeandmail.com/life/codeine-can-turn-toxic-in-nursing-mothers/article708316/

8月18日 18:30掲載 9月10日リンク追加 2009年12月2日、2017年6月24日リンク再設定


2007年08月18日 18:30 投稿

Comments are closed.