ビクトーザ皮下注に関する学習メモ

 実際に参加されていない方でないと様子を想像できないと思いますが、ここ最近のアポネットR研究会では、最近の新薬ラッシュに対応すべく、メーカーの学術担当者を招いて、十分時間をかけてそれぞれの新薬の薬効・薬理とそのメカニズム、使用上の注意、患者さんへの指導のポイントなどを学んでいます。

 昨日4月21日は、「GLP-1アナログ製剤の新しい糖尿病治療」というタイトルで、ビクトーザ皮下注について学びましたが、理解を高めようと今回は下記サイトの資料にざっと目を通してから学習に臨み、一問一答でいろいろな質問をしてみました。

ビクトーザ皮下注18mg 審査結果報告書(→リンク
(PMDA 新薬の承認に関する情報 平成22年1月承認分→リンク

FDA Approves New Treatment for Type 2 Diabetes
(FDA NEWS RELEASE 2010.1.25)
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm198638.htm

Questions and Answers – Safety Requirements for Victoza (liraglutide)
(FDA 2010.1.26)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/
PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm198543.htm

Medication Guide
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM199170.pdf

REMS/ DEAR HEALTHCARE PROFESSIONAL LETTER 他
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/
PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/UCM202063.pdf

Weighing Risks and Benefits of Liraglutide — The FDA’s Review of a New Antidiabetic Therapy
(NEJM 362(2010):774-777)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/362/9/774

Health Dayの上記解説記事
原 文;http://www.healthday.com/Article.asp?AID=636183
日本語:http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2385&Itemid=39

April 2, 2009 Meeting of the Endocrinologic and Metabolic Drugs Advisory Committee(FDA、承認審議の諮問委員会 資料)
   Briefing Information→リンク slide→リンク

Victoza(EMA、product infomation など)
http://www.ema.europa.eu/humandocs/Humans/EPAR/victoza/victoza.htm

 以下は、上記の資料と21日のアポネットR研究会での学習を基に整理したメモです。誤り等があるかもしれませんので、皆さんの地元で勉強会を行うときは、どうかこれを参考にご確認下さい。

  • 承認は、食事療法、運動療法のみの人、もしくはSU剤を使用している人で、十分な効果得られない場合のみ
    (メトホルミン、αGI、TZD のみへの追加は承認外→疑義照会が必要?)
  • 他のインスリン製剤との併用はない
    (海外も含め臨床試験はない)
  • GLP-1(インクレチン)の作用を強める側面があるので、胃内容物排出の低下を考慮する必要がある
  • このため、副作用は、心・胃不快感などの胃腸障害が最も多い(1~1ヶ月半程度で発現)
  • 胃腸症状を有する患者さんには慎重投与し、モニターする必要があるかもしれない
  • また、併用薬のCmaxの低下やtmax延長の傾向があり、併用薬の吸収速度を低下させる可能性がある
  • 腸溶性製剤、徐放性製剤、ジゴキシンなど治療域が狭い薬剤との併用は影響を考慮する必要があるかもしれない
  • 投与は、これら胃腸障害などの耐容性を見ながら、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量するが、目盛りは0.1mgごとなので、1回0.5mgなどのオーダーが出てくる可能性がある
  • 1本当たり18mg含有しているので、0.9mg/日で使用する場合は空打ちなどを考慮すると、1本で2週間強、少ない投与量なら、1ヶ月使えるかもしれない
  • 投与する時間は毎日同じ時間なら、食事に関係なくい基本的にいつでもよい(承認の用法は朝又は夕)
  • 但し、SU剤使用者に本剤を追加投与する場合は、低血糖のリスクを考慮し、時間をずらす、SU剤の減量などの配慮が必要かもしれない
  • 膵炎リスクは、同効薬のexenatide(Byetta→FDA)に多いが、海外の臨床試験では膵炎の発現が認められている他、死亡例も報告されている
  • 日本でも膵炎を発現していた可能性を完全に否定できない死亡例も報告されており、胃腸症状や嘔吐を伴う持続な激しい腹痛を訴える場合には、膵炎発症の可能性も考慮する必要がある
  • GLP-1アナログは甲状腺C細胞由来の甲状腺随様癌の増殖を促進する可能性がある(但し、ヒトではC細胞は少ない)との指摘がある
  • これらの可能性は、動物試験であり、直ちにヒトにあてはまるというわけではないが、遺伝性の甲状腺随様癌が多いことを考慮し、甲状腺随様癌の既往のある患者及び甲状腺随様癌又は多発性内分泌腫瘍型2型の家族歴のある患者への投与は慎重に行う必要がある
    (日本では、その他の注意の項での注意喚起だが、米国では黒枠警告で注意喚起が、またMedication Guide では、甲状腺随様癌の既往のある患者及び家族歴がある場合は should not use になっている)
  • 米国のMedication Guide、FDAのWEB情報では膵炎リスクと甲状腺がんリスクについて、わかりやすく注意喚起が行われている

 ビクトーザは、欧州では昨年、米国では今年承認されたまさしく新薬であり、まだまだわからないことも少なくありません。

 確かに画期的な新薬ではありますが、日々新しい情報にアンテナを張って、患者さんにわかりやすい、最新の正しい情報を提供する必要があるでしょう。

関連情報:TOPICS
 2010.04.14 シタグリプチンの追加投与時はSU剤の減量が必要
 2009.10.30 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.7 No.24
 2008.11.13 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.6 No.23


2010年04月22日 00:46 投稿

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