今や抗不安薬や眠剤への依存はシンナー等の依存を上回る

 すでにチェックされている方も多いと思いますが、今日の毎日新聞の記事が目に留まったので、調べてみました。

薬物依存:処方される向精神薬が2位に
(毎日新聞 2013.02.22)(リンク切れ)

http://mainichi.jp/select/news/20130222k0000e040187000c.html

薬物依存:医師処方、安心してた 向精神薬依存症の男性、覚醒剤の治療で「はまる」
(毎日新聞 2013.02.22)(リンク切れ)

http://mainichi.jp/select/news/20130222dde041040018000c.html

 特にはじめの方の記事の「薬物依存症の原因で最多の覚醒剤は53.8%(361例)。次いで睡眠薬と抗不安薬を合わせた向精神薬が17.7%(119例)に上り、シンナーやトルエンなど有機溶剤は8.3%(56例)だった。」という部分が気になり、調べたところ原著(報告)は次のようです。(たまたま読んでいた日経DI2月号にも同様の記事があった)

わが国における最近の鎮静剤(主としてベンゾジアゼピン系薬剤)
関連障害の実態と臨床的特徴―覚せい剤関連障害との比較―
(精神神経学雑誌 113(12), p1184-1198,2011)
https://www.jspn.or.jp/journal/journal/pdf/2011/12/journal113_12_p1184-1198.pdf

 上記報告によれば、鎮静剤(抗不安薬・睡眠薬)関連の症例は、覚せい剤関連障害患者に比べて、女性の比率が高く、比較的若年であるだけでなく、暴力団や非行グループとの関係を持つ者、逮捕・補導歴を持つ者が少なかったとした他、「不眠の軽減」「不安の軽減」「抑うつ気分の軽減」あるいは、「自暴自棄になって」という動機から薬物使用を開始した者が多いという特徴が見られたとしています。

 また研究者らは、鎮静剤の依存・乱用が、先行して発症した精神障害に対する不適切な「自己治療」であった可能性も考えられると指摘するとともに、自己破壊的行動の手段(自傷や自殺企図)として鎮静剤の過量摂取を用いる場合もあったとしています。

 一方、研究者ら、日本では薬物依存の治療ができる医療施設がきわめて少ない現状を指摘、専門治療施設でさえも、多くは,アルコール依存に対する治療プログラムで代用したり、薬物誘発性精神病や急性中毒の治療が終わり次第、ダルクなどの民間リハビリ施設に丸投げせざるを得ない状況を憂いています。

 さて、日本おいては2010年、厚労省の「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」が、こういった過量服薬の対応策として薬剤師の活用を掲げたことを以前紹介しました。(TOPICS 2010.09.10

 しかし、実際の介入となると、薬局-医療機関との関係上、なかなか指摘じずらいとの調査結果も明らかになっています。(TOPICS 2012.07.29

 そんな中、茨城県では、向精神薬等の過量服薬リスクが高い患者のゲートキーパーとして薬局薬剤師の活用を図るため、薬剤師会や医師会、精神科病院協会などの協力を得て、過量服用を未然に防止するための具体的なポイントを示した「向精神薬服薬指導マニュアル」を作成しています。

「向精神薬服薬指導マニュアル~STOP!過量服薬!!~」を作成しました
(茨城県 2012.12.21)
http://www.pref.ibaraki.jp/news/2012_12/20121221_01/index.html

向精神薬服薬指導マニュアル
~STOP!過量服薬!!~
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/yakumu/mayaku/gkmanual.pdf

 マニュアルでは、患者さんへの接し方、薬剤師が取り組むべき「気づき」「かかわり」「つなぎ」のポイントについて記されていて、具体的な過量服用防止策が示されています。

 一方、論文・報告あれこれ2012.9で紹介しましたが、ベンゾジアゼピン系薬剤を長期服用した場合の、副作用や薬物依存の症状や、減薬する場合の手順などを記した「アシュントンマニュアル」の日本語版が去年WEBにアップされれていて、依存者はこれを頼りに、依存からの脱出を試みている人も少なくないようです。

アシュントンマニュアル日本語版
http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf

 海外ではベンゾジアゼピン系の薬剤の長期処方はやめる方向になっており、欧州では国をあげて処方と消費の面から長期使用を控える Anti-BZD campaigns も展開されています。(論文あれこれ2012年11月

Contribution of prolonged-release melatonin and anti-benzodiazepine campaigns to the reduction of benzodiazepine and z-drugs consumption in nine European countries.
Eur J Clin Pharmacol. Published Online 2012 Nov 1. )
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00228-012-1424-1

 そろそろ日本でも国を挙げて、これら薬剤を安易に使用しないよう、処方する側も含めた啓発が求められているのかもしれません。

関連ブログ:
医師たちが作る薬物依存 ・・・ 依存症原因の2位に
(内科開業医のお勉強日記 2013.02.22)
http://kaigyoi.blogspot.jp/#!/2013/02/blog-post_2801.html

関連情報:TOPICS
  2013.01.18 最近の薬物乱用と依存症への取組(厚労省 他)
  2012.07.29 向精神薬の不適切処方、門前薬局では指摘しずらい?
  2010.10.22 自殺対策で薬剤師の活用は必要(参院厚労委)
  2010.09.10 薬剤師は適切な医療に結びつけるキーパーソン(自殺対策PT)
  2010.05.29 地域薬局は自殺・うつ病対策のゲートキーパーとならないのか

 うつ病患者のケア~「自殺」「薬物依存」に薬剤師ができること
 (日経ドラッグインフォメーション2013.2)


2013年02月22日 22:16 投稿

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