プソイドエフェドリン、2010年からはWADA禁止物質

 スポーツファーマシストの方はもうご存じだと思いますが、The World Anti-Doping Angency(WADA:世界ドーピングの防止機構)の2010年の禁止表(2010 Prohibited List)に、2004年から6年間モニタリング物質として使用が可能だったプソイドエフェドリン(PSE)が再び掲載されています。(但し、尿中150mg/ml以上。STIMULANTSの項に掲載)

2010 Prohibited List(WADA 2009.9.19) 

 PSEは2003年まで、尿中25μg/ml以上は禁止とされてきましたが、2004年からは the Monitoring Program(監視プログラム)のモニタリング物質に緩和されたことから、使用は一応可能でした。

 一方WADAでは、5年間にわたりプソイドエフェドリンの監視活動を続けてきましたが、尿中の検出量が増えているなど、いくつかのスポーツやいくつかの地域で明らかな濫用が認められること、科学的にもパフォーマンスを高めることが分かったことから、再び禁止物質にすることに決めたようです。

2010 Summary of Modifications (WADA 2009.9.19)

 これにより、2010年1月1日からは尿中150μg/ml以上検出されるドーピング違反となりますが、WADAではPSEを含む医薬品が少なくないことから、関係者に次の様な情報を提供するよう呼びかけています。(11月30日、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)から和訳が示されましたので、ご確認下さい)

  • 運動選手は競技会の少なくとも24時間以内にはPSEが含まれた医薬品は服用しないこと
  • 競技期間中に、治療目的でPSEが含まれた医薬品を使用する場合は、治療目的に使用に係わる除外措置(TUE)の申請を行うか、医師に相談し使用が可能な他の成分を使用する
  • PSE240mg/日を服用した場合の検出量として禁止ラインが設定されているが、60mgのPSEが含まれた錠剤3錠を1日量として1回で服用すると禁止ラインに達する可能性がある(修正しました)

Additional information in regards to the reintroduction of pseudoephedrine to the 2010 Prohibited List(WADA 2009.9.30)

 日本におけるOTC薬のPSE配合上限は180mg/日であり、アスリートへのPSE配合のOTC鼻炎薬・風邪薬の販売は年明けからは十分注意が必要です。

2010年禁止表・和文訳(2010年1月1日発効、JADA11月30日掲載)
 http://www.anti-doping.or.jp/doc/downloadfile/2010_ProhibitedList_JP.pdf

WADAウェブサイト http://www.wada-ama.org/en/

JADAウェブサイト http://www.anti-doping.or.jp/

11月30日 17:20更新


2009年11月13日 01:42 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    Pubmedで“pseudoephedrine”“doping”で検索をかけたら、結構論文がヒットしました。

    Problems of the use of pseudoephedrine by athletes.
    Int J Sports Med. 2009 Aug;30(8):569-72.)
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19382058

    The relevance of the urinary concentration of ephedrines in anti-doping analysis: determination of pseudoephedrine, cathine, and ephedrine after administration of over-the-counter medicaments.
    Ther Drug Monit. 2009 Aug;31(4):520-6.)
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19571776

    Pseudoephedrine enhances performance in 1500-m runners.
    Med Sci Sports Exerc. 2006 Feb;38(2):329-33.)
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16531903

    Patterns of ephedra and other stimulant use in collegiate hockey athletes.
    Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2006 Dec;16(6):636-43.)
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17342884

    “pseudoephedrine”“WADA”でGoogle検索をかけると、ニュース記事が結構ヒットしますね。

    日本でも、関係者は早めに知っていた方がいいと思います。

  2. アポネット 小嶋

    JADAは11月30日に禁止表の和訳をウェブサイトに掲載しました。

    プソイドエフェドリンについては、p15-16、18に記載があります。

    2010年禁止表・和文訳(2010年1月1日発効)
     http://www.anti-doping.or.jp/doc/downloadfile/2010_ProhibitedList_JP.pdf

    最後の方で、シルデナフィル(バイアグラ)についてふれています。

    WADAでは、現時点では禁止リストとされていないものの、シルデナフィルが高度の非常に高い状況では肺機能を回復する能力を有する可能性があるとして、現在資金を提供して研究を進行しているとのことです。

    関連情報:TOPICS 2008.06.24 WADA、バイアグラを禁止リストに加えることを検討