日本セルフメディケーション学会で話をしました

 TOPICS 2011.10.10 でお伝えしましたが、16日、東京八王子で開催された第9回セルフメディケーション学会のシンポジウム「地域コミュニティにおける新たなセルフメディケーション支援」(座長:鹿村恵明(東京理科大学薬学部 教授))で話しをさせていただきました

 シンポジウムは、下記4人が話題提供をしたのち、20分ほど質疑応答・ディスカッションを行っています。

  • 「医師から見た地域医療とセルフメディケーション」
    石川鎮清(自治医科大学 地域医療学)
  • 「地域薬剤師による新たなセルフメディケーション支援の可能性」
    小嶋慎二(コジマ薬局、アポネットR研究会 世話人)
  • 「地域の健康管理ステーションとしての薬局」
    中川裕子(株式会社エルクコーポレーション ヘルスケアビジネス推進部)
  • 「薬剤師と登録販売者の連携による新たなセルフメディケーション支援」
    平出勝美(株式会社スマイルドラッグ 教育部 次長)

 石川氏からは、自治医大における総合医養成の現状について、学生や卒後の研修の様子などを紹介するとともに、医療コミュニケーションの重要性などについてお話を頂きました。

 中川氏からは、本サイトでも紹介している政府がすすめる「どこまでMY病院」構想(TOPICS 2011.05.272011.03.02)に触れ、今後地域薬局には新たな役割が求められていくことが強調された他、自社が行っている自己血糖測定や骨粗鬆症など種々の健康測定サービスや地域でのヘルスプロモーション活動の紹介とその反応についてお話を頂きました。

 また、平出氏からはドラッグストアを利用する生活者のニーズについて具体例を挙げて紹介して頂くとともに、薬剤師・登録販売者には生活者の健康や悩みに応えられるために、コミュニケーション能力の向上が必要とのお話を頂きました。

 そして、私は、

  • OTC医薬品を使用する際に薬剤師などからの助言を重視する生活者は必ずしも多くない
  • 一方、セルフメディケーションを支援する側の地域薬局や地域薬剤師にもこのことが十分に行えないさまざまな事情や制度的な課題がある
  • これらの課題をなるべく早く解決するとともに、セルフメディケーション支援を行うのに必要なサポート体制(統一した資材・実践的な研修システム)が必要である
  • またセルフメディケーションはセルフケアの一つであり、セルフケアの支援となる情報の提供、疾病予防・健康教育・健康管理・メンタルヘルスなどの Public Health 的活動、くすりや医療への関わり方についての啓発といったことも必要である
  • 行政に健康増進や疾病の予防と早期発見に地域薬局や薬剤師の活用が可能なことを認識してもらうための努力が必要である

 といったお話をさせて頂きました。

 下記は、当日の私のスライドと要旨です。一部が画像でさまざまな資料から引用していますが、引用元を記すことで著作権の問題がクリアできればと思っています。(問題があれば、スライドは削除する場合があります)

地域薬剤師による新たなセルフメディケーション支援の可能性
 発表スライド 【PDF1.29MB】 要旨 【PDF114KB】
 (2011.10.16 第9回 セルフメディケーション学会)

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引用サイト・記事、関連サイト 関連書籍
p2   About Self-Care
(Euopean Self-Medication Industry)
 
p3-5 2011.07.26  一般用医薬品に関する都民の意識調査【報告書】
(東京都福祉保健局 2011年7月)
 
p6 2009.06.12 ニールセン・カンパニー合同会社
ニュースリリース2009年6月11日
 
p7  2010.11.05 グラクソ・スミスクライン株式会社
プレスリリース11月4日
 
p9 2011.02.22 OTC Ingredient Tables(AESGP)  
p10  2010.10.25
2011.06.24
特定保健用食品 イマーク(ニッスイ)  
p13   SUBMISSION BY THE PHARMACEUTICAL SOCIETY OF AUSTRALIA ON THE NATIONAL DRUG STRATEGY 2010–2015
(Pharmaceutical Society of Australia)
Pharmacy Self Care
(National Pharmacies)
 
p15 2007.03.14  CHOOSING HEALTH THROUGH PHARMACY A PROGRAMME FOR PHARMACEUTICAL PUBLIC HEALTH 2005-2015
(英国保健省 2005.04.01)
 
p16 2011.07.28 Public health in community pharmacy: A systematic review of community pharmacist and consumer views.
BMC Public Health 2011, 11:582 Published: 21 July 2011)
 
p17-18    Public Health a practical guide for community pharmacists  
p19 2010.06.04  区内の禁煙支援薬局で禁煙のためのアドバイスを受けられます
(東京都練馬区)
Pharma Tribune No.34(2011.11)
p20 2010.10.20
2011.10.12
糖尿病診断アクセス革命  
p21 2007.02.10
2008.09.08
2009.02.17
総合的介護予防システムについてのマニュアル(改訂版)
(「総合的介護予防システムについてのマニュアル」
分担研究班 2009年3月、該当箇所は、総合的介護予防システムについてのマニュアル(改訂版)の p36
平成22年度版自殺対策白書
(共生社会政策統括官・自殺対策、該当部分は、「事例紹介12〉健康介護まちかど相談薬局の取組~薬局を活用した特定高齢者把握事業(青森県)~
薬ゼミブックレットシリーズNo.5
高齢者の暮らしを支える薬剤マネジメント
―薬剤師は生活機能の見張り番
p22  2011.02.26
2010.05.29
うつ自殺予防対策「富士モデル」事業
(静岡県精神保健福祉センター)
うつ・自殺予防対策「富士モデル事業」
(社団法人富士市薬剤師会 2010年7月21日)
平成20年度版自殺対策白書
(共生社会政策統括官・自殺対策、該当部分は、「(事例紹介5〉「富士モデル事業」 -産業都市・富士市における働き盛り世代の自殺予防対策-」
 

 ディスカッションやシンポジウム後の意見交換で感じたこと・留意すべき点をいくつか列挙します。

  • 医療機関外での自己血糖測定のの取り組みは紹介した事例が以外にもあるが、歓迎される地域と歓迎されない地域があるなど、(地域薬局における)新しい試みへの評価は地域によって大きく分かれる
  • 近い将来、日本でも地域薬局における血液検査などを通じた生活習慣病のスクリーニングが行われるようになる可能性があるが、その結果を生かすべく医療機関との連携の在り方についても今から検討しておく必要がある
  • 薬局などでの血糖等の測定は、検診を受けていない人の拾い上げには有効かもしれないが、スクリーニングは本来行政の役割である。行政が行う保健サービスとのすみわけについて今から検討する必要がある
  • プライマリケアにおける医療コミュニケーションで重要なのは、主訴(どうしましたか)と来診(来店・来局)理由の把握(何が心配ですか、何に困っていますか、詳しくお話し下さい)である
  • 商品説明は成分による効果・効能だけではなく、生活者にとってどのようなメリットがあるかなどの情報提供も必要であり、薬学的知識だけで対応できるものではない
  • 症状別のチャート式トリアージも有用ではあるが、現場ではさまざまなケースがあり、必ずしもその通りにはならない。繰り返し使用する人やOTC医薬品での対応をサポートするためには、ケーススタディを基に、より実践的な「販売ガイダンス」を学会・大学などの協力のもと、できるだけ早く作成する必要がある(特に、ドラッグストアにおける対応事例の収集は重要) 

2011年10月20日 14:46 投稿

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