糖尿病診断アクセス革命~地域薬局でHbA1c測定

 以前、血糖値・総コレステロール値・中性脂肪・骨密度をそれぞれ500円で、コンビニ感覚で測定してくれるというビジネスが都内で開始されたという話題(TOPICS 2008.12.01)を紹介しましたが、今度はHbA1c値を薬局で測定し、数値が高い人には受診を勧めるというプロジェクトが東京都足立区で10月からスタートしているそうです。

糖尿病診断アクセス革命 http://a1c.umin.jp/

 m3.comなどの記事によれば、このプロジェクトの正式名称は、『未発見糖尿病対策としての指先微量採血法でのHbA1c検査実施の有効性の検証』で、地元足立薬剤師会などと共同で行われている東京大学の研究だそうです。

 研究では東京都足立区の西新井、綾瀬周辺の9薬局の店頭にHbA1c測定装置を設置、20歳以上の一般住民で、糖尿病で通院中でなければ利用でき、測定の結果数値が高い人には受診を勧めるというものです。(採血は自分で行う)

 費用は無料(約2000人分が研究費として確保されているそうです)で、利用者の年齢や性別、HbA1c値や糖尿病治療歴の有無を把握し、「何人検査すれば、どのくらいの糖尿病患者が見つかるか」を数値化し、薬局でHbA1cを測定することの費用対効果や、どういった人がこのサービスを利用するかなどの検証を行うそうです。

 敷居の高い病医院に行く前に、地域薬局で採血などのスクリーニングをまず行い、結果によって受診勧奨に結びつけることは、糖尿病のような病気の早期発見のために有用であり、海外ではすでにいろいろと行われているようです。

 英国では、日本でも対策が急がれている肝炎のスクリーニングのパイロットプロジェクトが行われ、6人に1人に感染者が見つかったとの報告もあります。 

Pharmacy testing pilot diagnoses 1 in 6 clients with hepatitis B or C
(Hepatitis C Trust 2010.1)
http://www.hepctrust.org.uk/NR/exeres/885DAFB7-E61D-4AA6-B8FF-7F98CC8BCBA2

上記報告書→PDFリンク

HEPATITIS B & C PHARMACY TESTING PROJECT PROTOCOL
(Hampshire & Isle of Wight LPC、上記のプロジェクトとは直接関係ないようですが)

 地域薬局を疾病対策や公衆衛生の分野で活用するという視点で、こういった医学研究が行われることは歓迎されるものであり、私は、国や(社会)薬学分野の研究者がこういった研究を医学の研究者と共に積極的に行うことで、将来の地域薬剤師の活躍の場が広がっていくものと考えています。

関連情報:TOPICS  2008.12.01 ケアプロ  

参考:
薬局店頭で「HbA1c測定」 10月に東京都足立区でプロジェクトを開始
(糖尿病ネットワーク資料室 2010年10月5日)
http://211.16.227.160/calendar/2010/10/010577.php
薬局での「指先採血」で糖尿病チェック、東京都足立区で開始
(m3.com 医療維新 2010年10月20日 要会員登録)
http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/127133/


2010年10月20日 12:40 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    ちょうどのタイミングですが、北海道のドラッグストアのツルハの店舗でも同様のことが行われているそうです。

    北海道新聞10月20日
     http://www.hokkaido-np.co.jp/news/life/256165.html

    これは道内3店舗で行われているもので、自己採取した血液を生活習慣などに関する問診票とともに東京の検査機関に送るというもので、検査項目は尿酸値やコレステロール値など13項目だそうです。

    金額は実証実験の期間中は2,500円とのことですが、実際の運用となるともう少し高くなるのかもしれません。

    総合的なチェックをするなら、やはり自治体や勤務先で行う検診を利用した方がいいかもしれませんが、それでも忙しいとして利用をする人がいるかも。新しいビジネスとなるかどうか注目ですね。(ドラッグストアが積極的に取り組むとなると脅威ですが)

    元記事の病気を早期発見するためのスクリーニングとは性格が異なりますが。

  2. アポネット 小嶋

    調剤と情報2011年1月号のReportにもありますが、10月12日~30日の間に9薬局で134名が検査を受け、受診勧奨(HbA1c5.6%以上、糖尿病が強く疑われる・もしくは糖尿病予備軍)は37名(27.6%)、そのうちの9名はHbA1c6.1%以上(最高は10.7%)だったそうです(全体の6.7%)。

    またHbA1c6.1%以上の人が見つかる確率は、毎年健診を受けている群では4.7%(3人/64人)、それ以外の群では8.6%(6人/70人)で、研究者らはプレスリリースで少なくとも毎年は受診していない群の方が約2倍程度、「潜在糖尿病」が見つかりやすいことが判明したとしています。

    東京都足立区での薬局店頭での「指先HbA1c測定」実施で、約7%の潜在糖尿病発見率
    (COMSearch 2010.12.22)
    http://www.comsearch.jp/release/archives/2010/12/comsearch32537-20101222234300.html