医療情報化に関するタスクフォース報告書(IT戦略本部)

 おくすり手帳の電子化や電子版「糖尿病連携手帳/カード」などの導入の提言が行われた、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)・医療情報化に関するタスクフォースの報告書が25日掲載されています。

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・医療情報化に関するタスクフォース
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryoujyouhou/

 報告書の内容はこれまでに紹介した通り(TOPICS 2011.03.02)ですが、最終的な報告書では各省庁が行うべきアクションが示されており、今後どのようなスケジュールで進められていくか注目です。このうち、私たちと関連の深い部分を抜粋します。

「どこでもMY病院」(自己医療・健康情報活用サービス)構想の実現(→概要・6.28MB)
  • 関係省庁は、電子版「お薬手帳/カード」を2013年度から提供するため、日本薬剤師会等の関係団体の協力を得て、電子版「お薬手帳/カード」に盛り込むべき具体的な情報を検討する。
  • 関係省庁は、個人参加型疾病管理サービス(例えば、電子版「糖尿病連携手帳」)を2014年度以降から提供するため、検査データ、健診データ、健康データを用いた当該サービスにつき、関係団体(例えば、日本糖尿病学会)等の協力を得て、提供を行う情報を具体的に検討する。
  • 関係省庁は、電子版「お薬手帳/カード」については2011年度に、関係団体の協力を得て、個人提供用標準フォーマットを作成する。厚生労働省は、サービスの開始に向けて、作成した電子版「お薬手帳/カード」の個人提供用標準フォーマット等を、2011年度中に全国の医療機関等に通知する。
シームレスな地域連携医療の実現(→概要・6.85MB)
  • 経済産業省は厚生労働省、総務省及び関係学会(例えば、糖尿病学会)の協力を得てモデル事業を推進する。モデル事業の実施に当たっては対象疾病に応じて、「どこでもMY病院」構想の個人参加型疾病管理サービスの取り組みと連携することを、検討する。
  • 関係省庁は、多くの都道府県が「医療情報連携に係る地域協議会」を設置し、管内の医療情報連携が推進されるよう、所要の措置を講じる。また、地域協議会の取り組み内容の充実についてさらに検討するとともに、当該検討を踏まえて、都道府県間における患者情報共有の取り組みへの支援に向けた検討を行う。

 経済産業省ではすでにモデル事業の募集を行い、採択結果も発表されています。(動きが速いな)

平成22年度「医療情報化促進事業」に係る実証事業者の委託先の採択結果について
(経済産業省2011年3月11日)
 http://www.meti.go.jp/information/data/c110311aj.html

 日薬雑誌5月号(p.15)によれば、このうちの「能登中部地域医療情報化促進事業推進プロジェクト」 がお薬手帳情報の電子化に関するものらしく、地元石川県薬剤師会と日薬が協力団体として参画するとのことです。(さらなる情報は現時点ではWEBにはありませんでした)

なお、「医療情報化促進事業~IT活用により、すべての国民が地域を問わず、質の高い医療サービスを受けられる社会の実現~」として、経済産業省の新規事業として15億円が計上されています。(http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/2011/pr/doc_pr012.pdf

 一方、東日本大震災を受け、報告書本文とは別に報告書・別添が作成され、離れた場所での医療情報のバックアップを作成、、医療機関による相互にバックアップ、あるいは患者自身が必要最小限の自己の医療情報を別途所持(手書きのお薬手帳も一定の役割を果たしたとの評価あり)により、災害時や避難先でも電子化した医療情報が取り出すことができるとして、医療情報化にあたっては災害対応についての参考事例として活用するよう求めています。

資料:
新たなIT戦略における 医療分野の取り組みについて
(2011.01.14 日本PACS研究会 講演スライド)
http://www.jpacs.jp/20110114_1.pdf

関連情報:TOPICS
 2011.03.02 IT活用、まずは電子版「お薬手帳」と「糖尿病連携手帳」を
 2010.09.15 第1回医療情報化に関するタスクフォース
 2010.05.11 2013年にもおくすり手帳は電子化される?
 2010.08.05 「地域医療連携体制の構築と評価に関する研究事業」報告書


2011年05月27日 13:19 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    調剤と情報の2011年6月号に、徳島文理大の飯原氏がまとめた解説記事がわかりやすいです。上記リンク先資料と合わせて読むと理解が深まります。

    また、同号のRx news のページに5月13日の日刊薬業の転載記事が掲載されていて、能登でのパイロット事業は患者情報をQRコードを活用して患者の携帯電話に取り込むという方法で行われるそうです。

  2. アポネット 小嶋

    見落としていたのですが、新たな情報通信技術戦略工程表が改訂が行われています。

    東日本大震災からの被災地の復旧・復興の促進及び震災の教訓を踏まえて
    社会全体の災害リスクへの対応を踏まえたものについても盛り込まれています。

    新たな情報通信技術戦略 工程表 改訂版
    (高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 2011.08.03)
    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pdf/110803_koutei.pdf

    電子版「お薬手帳/カード」については、

    電子版「お薬手帳/カード」を2013 年度から提供するため、日本薬剤師
    会等の関係団体の協力を得て、電子版「お薬手帳/カード」提供情報の
    検討、2011 年度中に電子版「お薬手帳/カード」の個人提供用標準フォ
    ーマット・提供方法を策定した上で全国の医療機関等に通知(経産省と
    連携)

    などと記されています。