緊急避妊薬のOTC化は時期尚早なのか?~意見はパブコメで

この件については、なるべく早く記事化と思っていたのですが、議事録公開・パブリックコメント開始で概要がわかったので、紹介しておきます。

すでにご存知かと思いますが、7月26日に開催された医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議で、スイッチOTC医薬品の候補となる成分の要望のあった、ヒアルロン酸ナトリウム(点眼)、レバミピド、レボノルゲストレル、メロキシカム、フルチカゾンプロピオン酸エステル(点鼻)の5成分ついて、スイッチOTC化の妥当性について検討が行われました。

医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議
(厚労省 2017.7.26開催)
資料:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000172610.html
議事録:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176856.html

検討の結果、レボノルゲストレル(緊急避妊薬)以外の4成分については妥当、レボノルゲストレルは不可とされました。

議事録によれば、レボノルゲストレルについては、国立国際医療研究センター病院の副院長・第一婦人科長の矢野哲先生と 日本産婦人科医会常務理事の宮崎亮一郎先生が参考人として意見を述べています。

議事録をみても分かる通り、OTC化は次期尚早という声が出される一方、日薬の委員はこれに対しての反論や前向きな発言は一切なく非常に残念でした。(要は、医師会と対峙するような余計なことはしたくないのでしょう)

本来なら、否となった段階でレボノルゲストレル(緊急避妊薬)のOTC化は当分お蔵入りかと思われましたが、座長の笠貫宏氏(早稲田大学特命教授・医療レギュラトリーサイエンス研究)が、「例えばパブコメで、今のようなたくさん御議論が出ました。そういう議論を踏まえてパブコメとして否として結論をここで出しました。これは多分時代の流れの中で、こういうものがどう変わるのか。これからいろいろな条件が変わるかどうか分かりませんが、そういうことでは、ここで時期尚早という形でパブコメを出していただくということで、多種多様な価値観を持つ国民サイドから御意見を頂くということも、ある意味でこれをどう周知していくのかという点にもつながると思います。」と、パブリックコメントにかけることを提案、他の委員も説得し、今回次のようなパブリックコメント募集となりました。(生活者の立場にたって賢明だったと思う)

「要望された成分のスイッチOTC化の妥当性に係る検討会議結果」に関する御意見の募集について
(意見・情報受付締切日 2017年10月10日)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170163&Mode=0
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170163&Mode=3
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&bMode=2&bScreen=Pcm1040&id=495170163
パブリックコメントの資料として、検討会議結果 が添付され、発言の内容がまとめられているのですが、下記の通り、今の地域薬局や薬剤師の状況から、「薬剤師が説明できるとは思えない、教育も受けていない、販売もできない(在庫もしない)」とされてしまったことには、複雑な思いです。

○「緊急避妊」は、避妊薬では完全に妊娠を阻止させることはできないこと、悪用や濫用等の懸念があること等により、レボノルゲストレルを有効成分とし、緊急避妊を効能・効果とする医薬品は、OTCとすることは認められない。

○OTC化が認められない理由として、以下の意見がある。

  • OTCとなった際は、緊急避妊薬の使用後に避妊に成功したか、失敗したかを含めて月経の状況を使用者自身で判断する必要があるが、使用者自身で判断することが困難であること。
  • 本邦では、欧米と異なり、医薬品による避妊を含め性教育そのものが遅れている背景もあり、避妊薬では完全に妊娠を阻止させることはできないなどの避妊薬等に関する使用者自身のリテラシーが不十分であること。
  • 薬剤師が販売する場合、女性の生殖や避妊、緊急避妊に関する専門的知識を身につけてもらう必要があること。例えば、海外の事例を参考に、BPC(Behind the pharmacy Counter) などの仕組みを創設できないかといった点については今後の検討課題である。
  • 実際の処方現場では、緊急避妊薬を避妊具と同じように意識している女性が後を絶たない。OTCとなった場合、インターネットでの販売も含め、安易に販売されることが懸念されるほか、悪用や濫用等の懸念があること。
  • 緊急避妊薬に関する国民の認知度は、医療用医薬品であっても現時点で高いとは言えないこと。
  • スイッチOTCとして承認された医薬品については、医薬品医療機器法第4 条第5項第4号の厚生労働省令で定める期間の経過後、特段の問題がなければ、要指導医薬品から一般用医薬品へと移行される。現行制度では、劇や毒薬でない限り、要指導医薬品として留め置くことができないため、要指導医薬品として継続できる制度であることが必要であること。
  • 本剤は高額であることから、各店舗に適切に配備できない可能性が高く、 薬局によって在庫の有無がばらつく懸念があること。

個人的にも難しい部分は確かにあるかとは思いますが、上記の意見を示されると、薬剤師・薬局は時期が来ても対応できないでしょうと言われているようでだまってはいられませんね。

ツイッター上ではさまざまな意見があり、同意できる部分もあります。

 今回のパブリックコメントは、資料・議事録にもきちんとリンクが張られておりまっとうなやり方ですが、そもそも、緊急避妊薬のOTC化を要望した方には、それなりの理由があったはすです。それなのに、今回検討会でその具体的な意見を示さずに議論を始めたことも問題だと思います。(事務局は冒頭、「公開ということはおそらくできないかとは思うのですが、個々の要望について、委員の先生方にどういった背景があるかを御説明することは可能かと思います」と発言)

今回のパブコメについて、委員からは「あくまでもパブコメというのは意見であり、国民全員から聞くわけではありませんし、しかもある意味偏っているかもしれない意見です。」の声もありますが、できる限り多くの生の声が検討会に届いてもらいたいものです。

関連情報:TOPICS
2016.12.09 緊急避妊薬・トリプタン・PPI・ドネペジルなどにスイッチ化の要望
2016.08.06 スイッチOTCの候補成分の要望の募集が開始(厚労省)
2016.05.05 海外におけるスイッチOTCの状況(2016)
2015.05.30 現場・生活者のニーズも~スイッチ化の新たなスキーム
2015.05.24 一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究
2014.09.30 NZ、豪、英、蘭、米、日本、スイッチが進んでいるのは?
2013.09.08 2020年東京五輪開催までに医薬関係者が考えておきたいこと
2011.09.17 ノルレボ錠、認知の課題は価格とアクセス+啓蒙


2017年09月11日 14:20 投稿

コメントが3つあります

  1. 生の声を届けるためにはどう行動したらよいですか。署名のリンクや意見を届ける方途など教えていただけますとより多くのみなさんの声議論の場に届けることができます。

  2. アポネット 小嶋

    元記事に示しましたが、下記リンク先から意見を直接届けることができます

    「要望された成分のスイッチOTC化の妥当性に係る検討会議結果」に関する御意見の募集について
    (意見・情報受付締切日 2017年10月10日)
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170163&Mode=0

    検討会議の現時点での結論はOTC化ノーですが、座長のはからいで検討会の結論に関わらず、生活者の意見を聞きましょうということになりました。

    生活者の意見を聞いて新たなOTCを作ろうというこの検討会議ですが、議論の進め方は、専門医学会や業界団体などの意見ばがりが重視され、生活者の声をとりあげる姿勢はありません。

    ツイッター上には下記のようなさまざまな意見があります。署名をという声もありますが、まずはこの意見募集で、ひとりひとりの思いをぶつけることが肝要かと思います

  3. アポネット 小嶋

    週刊ダイヤモンドに刺激的な記事が掲載されました


    Yahoo!ニュースへの転載記事へのコメントがすごくなっています(たぶん期間限定だと思う)

    一方日薬は、今回のパブリックコメントに対して、こういう見解も

    確かに今の薬局の状況を見れば、緊急避妊薬をOTCとして販売することは難しいと思います。しかし、今後は public health 分野の取り組みとして薬局が行っていかなければいけないように思います。

    世界を眺めてみると、地域薬局における public health 分野の取り組み(役割)は、いまや処方箋調剤と同じくらい重視されている感があるからです。

    日本は地域包括ケアの名の下に、在宅・かかりつけ薬剤師ばかりに力が入っているように感じてならいのですが、こういった分野へも今後しっかり取り組まないと、世界の遅れをとるような気がしてなりません。

    ツイートに対して、コメントがあったので紹介させていたただきます。