一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究

 エパデールのスイッチ問題などにより、医療用医薬品の一般用医薬品への転用(スイッチ承認)については現在、萎縮・停滞しているともいえる状況ですが、こういった現状を改めるべく、今後のスイッチの仕組みを改善することの提言をまとめた報告書が公表されています。

「一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究報告」が公表されました
(厚労省 2015.05.20)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000086074.html

 この報告書は、2013年度に厚生労働科学特別研究として行われた同名の研究「一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究」の調査結果を踏まえ、医師・薬剤師等の専門家の意見を集約し、スイッチOTC 医薬品のあり方についてまとめたものです。

一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究
(2013年度厚生労働科学特別研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201305012A

一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究
(2014年度厚生労働科学研究)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/0000086065.pdf

 日本におけるOTC医薬品へのスイッチの仕組みの問題については、これまでも本サイトで度々指摘してきましたが、今回の研究では海外でのスイッチ状況や生活者のニーズなどを踏まえ、日本でも新たな仕組みを導入することを提案しています。

 特に、スイッチOTC医薬品候補品目の選定が行われながら、承認審査までの流れがうまくいっていないことについては、次のような改善策の提言を行っています。

  • 承認審査に先立つスイッチOTC 医薬品の候補品目の選定について、多様な主体からの
    提案を認めることとする
  • 専門家を中心とした一般消費者も含めた場において、提案者等のヒアリングを行うほか、パブリックコメントの実施等を通じて、広く一般からの意見提出が可能な仕組みを設ける

 スイッチOTCの承認審査の問題については、国内の団体からも要望書が出されていますが、今回の報告書を踏まえて、新たなスキームが早急に確立することが望まれるものです。

関連情報:TOPICS
 2013.10.08 スイッチOTCの承認審査が不当に妨げられている(OTC医薬品協会) 
 2012.12.28 スイッチOTCについてオープンな議論を求める要望書

 2014年度研究の23ページ以降に、調査6か国(米英仏独豪NZ)のスイッチ状況の一覧表(ちょっと誤りがあるような気も)がありますが、PPIや抗肥満薬(オルリスタット)、緊急避妊薬(レボノルゲストレル、欧州ではulipristal acetate のスイッチも勧告されている)は全ての国でスイッチ済み、トリプタン製剤もいくつかの国で、また英国ではタムスロシンやシンバスタチン、アジスロマイシン(クラミジア限定)、米国ではオキシブチニン貼付剤、ニュージランドではファムシクロビル(内服)、トリメトプリム(正式には処方せん薬をプロトコルの下、販売)、表にはありませんがオセルタミビル(インフルエンザシーズン限定)もスイッチされています。(一方で、ドンペリドンなどは安全性への懸念から、処方箋医薬品に再分類が行われている)

 医師の管理下での使用が望ましいとする圧力がかかる日本において、果たしてこういった品目がスイッチされるのは現状では難しいような気もします。

 厚労省は、OTC医薬品をセルフメディケーションの中でどう位置づけ、どう活用していくか(薬剤師の活用も含め)ということも併せて考えて頂きたいとおもいます。

 海外のスイッチ状況について興味をある方は、下記サイトでチェックしてみて下さい。(アドレスが変更になっていた)

OTC ingredients
(AEGSP:Association of the European Self-Medication Industry)
http://www.aesgp.eu/facts-figures/otc-ingredients/

関連情報:TOPICS
  2014.11.22 EMA、緊急避妊薬 ellaOne のスイッチを勧告
  2014.09.30 NZ、豪、英、蘭、米、日本、スイッチが進んでいるのは?
  2013.06.11 ニュージーランドのPharmacist Only Meidicines
  2013.05.14 欧州9か国における地域薬局をとりまく状況
  2013.12.28 タミフル、要薬剤師薬に分類変更へ(NZ)
  2013.01.26 米FDA、オキシブチニン貼付剤のスイッチを承認
  2012.11.21 生活習慣病分野におけるスイッチOTCのあり方に見解(日医)
  2012.10.15 シンポ「諸外国から学ぶセルフメディケーション支援」に参加して
  2012.09.06 インフルエンザワクチンとトリメトプリムの再分類(NZ)
  2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
  2011.10.07 スイッチ候補10成分についての関係学会の意見2
  2011.07.29 スイッチOTC医薬品の選定要件は?(厚生労働科学研究)
  2007.05.16 シーズン中は、処方せんなしでもタミフルが入手可能に(NZ)
  2008.12.05 英国におけるスイッチOTC25年の歩み


2015年05月24日 23:54 投稿

コメントが2つあります

  1. 弱小OTC担当者

    承認申請の面から見れば後発品のレベルの内容で申請できれば参入会社も増えると思います。現在の要求される提出資料の内容では先発メーカーのデータを入手せざるを得ず、OTCとしてはかなりのロイヤリティーが発生しますし、そもそもスイッチする気なし(やらせない)という会社もあります。また販売面でも大入り+簡易包装の医療用に比べれば、「小包装単位+過剰包装+販売量が医療用ほど望めない」という現状では経済面であってきません。○○ソニンの成功はそもそも大量採算の錠剤を自社でスイッチしたできたことによると思われます。うらやましい限りです。

  2. アポネット 小嶋

    紹介するのを忘れていましたが、29日にロキソニンパップ、テープ、ゲルのスイッチを審議する、要指導・一般用医薬品部会で、「医療用医薬品の有効成分の一般用医薬品への転用の仕組みについて」が議題として取り上げられるそうです。(こちらは公開。おそらく今回の報告書が資料として提出されるのでしょう)

    薬事・食品衛生審議会 要指導・一般用医薬品部会の開催について
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000086307.html