スイッチ候補10成分についての関係学会の意見2(UPDATE)

 TOPICS 2011.08.15 で、スイッチOTC化を推進する医療用医薬品の候補として日本薬学会が選定した10成分(TOPIPCS 2011.04.28 )について、12の学会から寄せられたスイッチが適当かどうかの意見紹介しましたが、7日、新たに3学会の意見が公表されています。

医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としても利用可能と考えられる候補成分について
(医学会等からの御意見・平成23年度(2))
(厚労省2011年10月6日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001qj0c.html

資料2:医学会等からの御意見(2)(PDF:443KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001qj0c-att/2r9852000001qj3w.pdf

成分名 投与経路 意見
ポリカルボフィルカルシウム
メペンゾラート臭化物
内服 × 日本大腸肛門学会
× 日本老年医学会
アカルボース(再提案)
オメプラゾール(再提案)
メペンゾラート臭化物
ポリカルボフィルカルシウム
ピランテルパモ酸塩
メナテトレノン
内服 × 日本老年医学会
コレスチミド(再提案) 内服 (×)日本動脈硬化学会
(見解は、2009年6月12日提出の意見の通り→p18-22
× 日本老年医学会
プロピベリン塩酸塩 内服 × 日本老年医学会
× 日本泌尿器科学会
セルニチンボーレンエキス 内服 ○ 日本泌尿器科学会

 日本大腸肛門学会では、理由として「本来過敏性結腸症の診断は特に一般消化器医師にとて診断、治療に難渋して疾患であり、他の疾患を鑑別した上で投与されるべき薬剤」を挙げています。

 また、老年医学会では、理由として「薬物動態の加齢変化や併用薬剤の影響など、高齢者の薬物療法上の特性を鑑みれば、少しでも有害事象の危険性のある薬剤は医師の管理のもとに処方されるべき」などを挙げています。(これは極端な意見だと思う)

 さらに、日本泌尿器科学会では、「プロピベリン塩酸塩は副作用として尿閉や強度の口渇、便秘、緑内障の発作が認められる場合があり、今まで通り医療用医薬品として取り扱う方が安全と考えます」とした意見を明らかにしています。

 一方、日本動脈硬化学会では、日本薬学会がまとめた「医療用医薬品の有効成分の一般用医薬品への転用に係る候補成分検討報告書」に対し、改めて疑問点や意見等を付した他、「スイッチ化する方策の1つは、自己血糖測定と同様に患者自身による自己測定システムを拡充し、たとえば薬局などに血清脂質、肝機能、腎機能等が迅速による自己測定システムを拡充し、たとえば薬局などに血清脂質、肝機能、腎機能等が迅速に測定可能な機器を配備し、迅速に血清脂質が定期的に測定でき自己管理できるシステムと法整備とを構築すること」などの提案を行っています。(建設的な意見ですね)

 日本動脈硬化学会の意見書をみると、厚労省は改めて意見提出を求めたようです。日本動脈硬化学会など、さまざまな意見があることを改めて認識する次第ですが、厚労省がもっと「スイッチするんだ」という姿勢も示さないと、結局は関係学会の意見に押されてしまうような気がしてなりません。

関連情報:TOPICS
  2011.08.15 スイッチ候補10成分についての関係学会の意見
  2011.04.08 厚労省、スイッチ候補10成分を公表
  2011.04.11 スイッチ成分として不適切だとするその理由は?

11月16日 更新


2011年10月07日 13:02 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    11月16日付けで、10月6日公表追加分として日本泌尿器科学会の意見を公表しています。(元記事も追記更新しました)

    医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としての利用も可能と考えられる候補成分について(医学会等からの御意見)
    平成23年度(2)(一部訂正)
    (厚労省 2011年11月6日)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001v73t.html

    資料2:医学会等からの御意見(2)・訂正版(PDF:443KB)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001v73t-att/2r9852000001v7br.pdf

  2. アポネット 小嶋

    今日届いた Pharma Tibune 誌 No.38(2012年2月号)で、この意見についての誌上ディスカッションが行われています。

    「効果自体に疑問がある」「お薬手帳や薬歴などで併用薬の確認が必要」「代理人で確認ができない場合は危険」「血液データなどの把握が必要」などさまざまな意見が示されており、大変興味深いです。

    私も現在の第一類の販売状況やメーカーのプロモーションの仕方を見るとスイッチOTCにすることの有用性はあっても、日本での現状ではムリという意見は同意できる部分もあります。

    ただ一方で、トクホなどがあたかも薬効を期待されるようなプロモーションで広く販売されていることも問題であり、エビデンスがあるものをきちんと販売するということも検討すべきだと思います。

    また、早期治療、短期治療などで有用性がある、トリプタン系偏頭痛治療薬やヘルペスのための抗ウイルス内服薬(海外では一部スイッチされている)などについては、販売方法(やはりお薬手帳での確認は必須だと思う)を再検討した上で、将来的にはスイッチの検討の余地があると思います。

    関連情報:TOPICS 2011.02.22 海外におけるスイッチOTCの状況

    論文・報告あれこれ 2012年1月で紹介しましたが、カナダでは医薬品の分類についての現場の声を集めた調査があります。

    Results of a national survey on over-the-counter medicines, Part 1: Pharmacist opinion on current scheduling status
    (Canadian Pharmacists Journal 2012. 145(1), pp40-44)

    日本でも、リスク区分の妥当性やスイッチの是非について、専門委員会での検討だけでなく、現場薬剤師の意見を収集し、販売方法の在り方も含め、活用することも欠かせないと思います。(Pharma Tribune 誌の今回の企画に拍手)