第11回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会

 31日、注目の一般用医薬品のインターネット販売等のルール作りを行う11回目の検討会が開催されて います。(今後記事更新する場合があります。詳しい状況は、今後の報道等でご確認下さい。)

第11回一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会 資料
(厚労省 2013.05.31 開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000032rnf.html

 今回もいつもツイートして下さっている江口氏の他、じほうの記者さんがやりとりの一部をツイート(https://twitter.com/hideharus https://twitter.com/jihomagplus)しています。

 冒頭、相当議論が紛糾していたらしく、お二人ともほとんどツイートがありませんでしたが、予定の時間を延長して議論が行われたようです。

 本日提出された資料です。

資料 これまでの議論の取りまとめ案(座長の指示により事務局が作成したたたき台)(PDF)

 いわゆる報告書案になるもの。最後の部分が注目

おわりに

今般の新たなルール作りに向けた取りまとめは以上のとおりであるが、安全確保のための方策等、更なる詰めの検討を要する点は多い。これらの点については、必要に応じて専門家による検討の場を設置し、詳細な検討を行うことが望ましい。

本検討会では、新たなルールの検討に当たり、安全性の確保と利便性のバランスを考慮し、十分な議論が行われるよう、インターネット販売等を推進する立場、慎重な立場それぞれから、関係事業者や医学・薬学の専門家、一般消費者等が参集し、議論を重ねてきた。

それゆえ、合意形成には一定の時間を要することとなったが、様々な立場から出された幅広い意見を取りまとめるに至ったことは大きな成果である。

本検討会としては、改めてこの取りまとめの意義を強調するとともに、他の様々な場における議論も参考にした上で、早急に一般用医薬品のインターネット販売等の具体的なルールが策定されることを期待する。

  参考資料1 國重構成員提出資料(PDF)

 参考資料2 後藤構成員提出資料(その1)(PDF)

 取りまとめ案が事前に配布されていたらしく、これに対する修正意見。特に上記の「おわりに」の部分については、文言の削除や大幅な書き換えを求めています。 

参考資料3 後藤構成員提出資料(その2)(PDF)

 浅尾慶一郎衆議院議員の質問主意書(答弁は出ていますがWEBには現時点ではアップされていません)
   質問→テキスト 答弁書→テキスト(衆議院WEBサイト)

 参考資料4 後藤構成員提出資料(その3)(PDF)

 蓮舫参議院議員の質問主意書。答弁書は蓮舫氏のHPに掲載されています。(→リンク 確かにこの答弁には、蓮舫氏が言うように全く中身がない)

当日配付資料 後藤構成員提出資料(PDF)

 前回検討会(TOPICS 2013.05.24)で森構成員が提出した資料、「ネット販売の規制が違憲であるという結論は示されていないなどとした弁護士の見解」(→リンク)と、(日本チェーンドラッグストア)協会の検討会がまとめた考え方をまとめたもの(→リンク)についての反論や意見。

 後半の部分については下記に抜粋します。(赤字の部分は注目)

  • 第一類医薬品のネット販売を禁止すべき理由として、①第一類医薬品は医療用医薬品から移行してきたものであるが、ネット販売が可能になれば一般生活者が病院の薬をネットで買っても「安全」であると誤解し、「海外通販サイト」などから「処方せん医薬品」を購入してしまう者が増え、健康被害が多発することをあげている。しかし、この理由付けはまさに観念上の想定であって、昭和50 年薬事法違憲判決において観念上の想定にすぎないとして否定された「適正配置規制が存在しないことによって引き起こされる業者間の過当競争と「経営上の不安定が、ひいては当該薬局等における設備、器具等の欠陥、医薬品の貯蔵その他の管理上の不備をもたらし、良質な医薬品の供給をさまたげる危険を生じさせる」可能性となんら異なるレベルのものではない。
  • さらに②として、「かかりつけ薬局」が地域医療の一役を担う環境整備が進み重要性が増しており、地域医療連携により一般生活者の安全性が高まることをネット禁止の理由としてあげている。たしかに「かかりつけ薬局」が一般的に普及し、更に義務化されるのであれば、それが適切に機能することで、より質の高い医薬・医療サービスが提供される可能性は全くないわけではないが、しかし、その必要性も高くない(現行制度での弊害はほとんど存在しない)のに、医薬品の需用者には過大な負担を強要することになるから、そのような制度を導入することは違憲の可能性も高い。そうすると、かかりつけ薬局が多少普及しようと、このことは、ネット販売を禁止する必要性と合理性を裏付ける根拠にはまったくならない。むしろ、ネット通販を利用する者にとっては、ネット通販会社がかかりつけ薬局になるのである。
  • 参考資料2(→リンク)ではまた、指定第二類医薬品のネット販売を禁止すべき理由として、麻薬成分などを配合している医薬品がありリスクが高いため、簡便なネット販売は禁止が妥当としている。しかし、具体的な医薬品について、ネット販売に直接起因して副作用等の健康被害が発生するリスクが高まることが科学的根拠に基づき個別に示されているのであればともかく、一般用医薬品のなかで(さらには第二類医薬品の中で)相対的にリスクが高いことを理由にネット販売を禁止することには、その必要性も合理性もないと考える。
  • これまでの計11回にわたる検討会において、特定のリスク区分の医薬品について、専門家が使用者と直接対面しないことを理由にネット販売を禁止しなければ副作用被害を防ぐことができないことを証明する(禁止の必要性を根拠づける)立法事実は、報告されていない。仮にそのような一般用医薬品が具体的に存在するのであれば、ネット販売を禁止すると同時に、薬局・店舗においても専門家は使用者に対してのみ販売すること、使用者であっても症状が出ていないときには販売しないこととし、その実効性を確保するために販売記録を記録することを義務として整備する必要があるといえる。

(ケンコーコムがひとりで頑張ってもね。楽天市場への出店者には問題点も少なくないんですよ。→前回記事コメント

 じほう記者さん(https://twitter.com/jihomagplus)のツイートによれば、今日の議論(どんな意見が出たかは現時点ではさっぱりわからない)を踏まえて、とりまとめ案を修正して、座長確認のうえ構成員に示してから報告書として公表することになったそうです。

 今後はどうやら新たな検討会を立ち上げ、詳細について決めると思うのですが、おそらく焦点はネット販売で取り扱える品目をどうするかになるかと思います。(委員の選定でおそらく難航しそう)

 ちなみに、まだ概要版しか出ていませんが、昨年度次のような厚生労働科学研究も行われています。(国会図書館に行けば見れますが、全文がWEBで見れるのはこれまでの掲載ペースだとおそらく来年になってからだと思う)

一般用医薬品における、化学合成品等のリスク区分の見直しと漢方製剤の安全性確保に関する研究
(平成24年度 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD01.do?resrchNum=201235044A

  上記を見ると、

  • 制度創設当時の分類基準を再確認し、その後に第1類及び指定第2類に追加された成分の分類時の議論なども踏まえて、第1類及び指定第2類の考え方の整理を行ったところ、一般用医薬品についても,「重篤な副作用」が報告されているものや、その使用に当たって「患者背景」に十分な注意を払う必要があるものが存在することが明らかとなった。指定第2類については,習慣性,乱用の可能性、諸外国の規制のあり方も含めてさらなる検討が必要と考えられた。
  • 低用量全身曝露時の副作用発現について、主にNSAIDs外用剤のデータを基に検討したところ、なくとも解熱鎮痛消炎成分に関しては、量的制限を導入しても、有効性を維持したまま安全性を高めることはできないことが示された。

と指摘、「今後、本研究の成果をベースとし,新たなリスク区分について調査会、部会等での審議が行われる物と考えられる。」と結論づけられていることから、ネット販売の可否も含めて、リスク区分の再検討が行われるのではないかと思います。(医療用医薬品の添付文書に基づいてのみリスク区分を行ったことがそもそも無理があったと思う)

 これまでの検討会での感想ですが、この間の議論(ツイートや報道に頼るけど)や資料を見て、厚労省は医薬品のインターネット販売の海外の事例や最新の現状についても調査したのかどうか疑問に感じます。(厚生労働科学研究の報告(→リンク 第6回資料6)頼りというのも個人的には腑に落ちない)

 また、日本でのインターネット販売の状況については潜在的な問題点(→前回記事コメント →ツイートツイート)が少なくないのに、厚労省はきちんと把握する努力をしていないのではないかと感じました。

 結局は、検討会での議論に頼り、自分たちの方針や独自の調査が全くなかった厚労省の責任はかなり大きいと思いました。(蓮舫氏の質問主意書の答弁書が物語る)

 年内に、誰もが納得する(というのは難しいだろうけど)きちんとルールが決まることを願うばかりです。(経過措置は年内いっぱいに延長されています→TOPICS 2013.05.31

関連情報:TOPICS
 2013.05.24 第10回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.05.16 第9回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.05.10 第8回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.26 第7回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.19 第6回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.05 第5回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.22 第4回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.13 第3回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.27 第2回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.14 一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討が始まる

6月3日 13:30リンク追加


2013年05月31日 20:52 投稿

コメントが5つあります

  1. 薬ネット販売「危険視やめて」=稲田行革担当相
    時事通信社 2013年05月31日12時07分
     稲田朋美行政改革担当相は31日午前の閣議後の記者会見で、現在は一部しか認めていない一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売について「インターネットだから危険だという前提に立った規制は、最高裁の指摘を踏まえ、やめていただきたい」と述べ、全面解禁慎重派をけん制した。 
    ----------------------------------------
    医薬品の郵便等販売を一律禁止した省令は違法であるという最高裁判決が確定したにもかかわらず、厚労省大臣は議員立法でも早急に新たな規制を行うと薬業界の機嫌を取り、新たな規制を有識者検討会で決め薬事法の改正を目指したものの有識者検討会の意見さえ纏められず、挙句の果てには与党自民党内はおろか内閣の大臣間でさえ意見の集約ができず、まったく先行きが見えない状態です。いったいどうなるのでしょうね。

  2. アポネット 小嶋

    業界紙等の報道はこれからですが、日経DIは、リスクが高い品目を販売する際に、目視や接触による患者のにおいや挙動などの情報を収集することを義務付けるかどうかが争点になったと伝えています。

    OTCネット販売検討会、「両論併記」で幕引き~結論は先送り、新たな検討会設置の可能性も
    (日経DI 2013.06.01)
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201306/530831.html

    一方、全国紙はこれからの行方などについてさまざまに報じていますが、何も決まったわけではないのに、朝日新聞のように、「薬ネット販売、大部分解禁へ」と見出しを打つのはいかがなものかと思いました。

    次なる検討会については、読売新聞が、医薬品の専門家らを中心メンバーに、依存性などや子どもや妊婦など使用などに焦点を当てて審議を進め、現在の3区分よりも細かいグループ分けでどの薬のネット販売を認めるべきかが議論される見通しと伝えており、私もそのようにすすめるべきだと思っています。

    そうなると当然、本サイトでこれまでたびたび紹介してきた小児への風邪薬の使用(有用性)の問題や、海外で近年包装規制の対象になりつつある鎮痛剤やコデイン類の問題、プソイドエフェドリンの販売規制も議論の対象となるかもしれません。

    また、注目はKatsu さんが紹介していただいたように、内閣府の規制改革会議や官邸の産業競争力会議からの圧力にどう対応するかです。

    混乱に拍車をかけるような、政治的な介入は個人的には望んでいません。

    とにかく、専門家による新たな検討会のすみやかな立ち上げが必要であり、まずは国内外のリアル店舗も含めたOTC医薬品(非処方せん医薬品)の販売状況(特に乱用による健康リスクが高いもの、誤用、依存や乱用、悪用の潜在的なリスクのあるもの)の詳しい実態の把握を行い、より安全な一般用医薬品の販売のあるべき姿を検証すべきだと思います。

    個人的には、インターネット販売のルール作りと並行して、大包装品(特に総合感冒薬や鎮痛薬)の販売制限や、一部の国で行われている、外箱への乱用や依存のリスクについて記載などの検討も必要ではないかと思います。

  3. こんにちは、初めてメールします。
    もしも、ネット販売が全面解禁になればネット上の
    怪しげなストアで購入するより、素性がハッキリして
    いる製薬メーカーから直接購入したいと思うだろう。
    安心だし、卸しや小売店を通さない分価格も安くなる
    かもしれない。そう言った声が消費者等から高まれば
    静観視している製薬メーカーは待ってましたと言わん
    ばかりにネット販売を開始するだろう?となれば薬の
    小売店は必要なくなり全滅です。結局、製薬メーカー
    の一人勝ちと言うシナリオ。考え過ぎですかね?

  4. アポネット 小嶋

    今朝チェックしたら注目記事が。

    議論された状況がつかめないので、どこまで本当なのかを確認したいです。(大事なことなので速やかに議事録を。これまでも議事録も未だ少ししか出ていないのは本当に問題)

    薬のネット販売:市販薬99%超解禁 政府方針
    (毎日新聞 2013.06.03)
    http://mainichi.jp/select/news/20130603k0000m020099000c.html

    最も品目が多い第2類は全て解禁し、第1類についても、かつては医師の判断でしか使用できなかった市販薬(スイッチOTC薬)をリスクごとに分類、特に危険度の高いものを除き、解禁する方向とかなり断定的に書いています。

    薬のネット販売は全面解禁された
    (ライフネット生命副社長 岩瀬大輔のブログ 2013.06.02)
    http://blog.livedoor.jp/daisuke_iwase/archives/6562939.html
    http://blogos.com/article/63495/?axis=b:199

    構成員である岩瀬大輔氏のブログですが、「更なる詰めの検討を要する点は多い。これらの点については、必要に応じて専門家による検討の場を設置し、詳細な検討を行うことが望ましい」という部分については、削除してもらったとのこと。

    私は最後の部分は残すべきだと思います。その削除を求める背景には、OTCによる依存や乱用による健康リスク、誤用や悪用の潜在的なリスクについて、今回の検討会では、共通認識が作られなていないことに他なりません。

    ここの部分については、今回の検討会ではほとんど議論されていないのに、削除に簡単に応じるとなれば、私は厚労省のOTCに対する見識を疑います。

    いずれにせよ厚労省は、政府・与党と今後調整を図るようですが、朝日・毎日の記事を読む限りと政府・与党の圧力に屈するようですね。

  5. アポネット 小嶋

    最終的なとりまとめがアップされました。

    「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」のこれまでの議論の取りまとめについて
    (厚労省 2013.06.13)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034av6.html

    「おわりに」の部分も結局両論併記になりました。

    今般の新たなルール作りに向けた取りまとめは以上のとおりであるが、安全確保のための方策等、更なる詰めの検討を要する点は多い。

    本検討会では、新たなルールの検討に当たり、安全性の確保と利便性のバランスを考慮し、十分な議論が行われるよう、インターネット販売等を推進する立場、慎重な立場それぞれから、関係事業者や医学・薬学の専門家、一般消費者等が参集し、議論を重ねてきた。

    当初は双方の意見の対立が多く、合意形成には一定の時間を要することとなったが、様々な立場から出された幅広い意見を取りまとめることができた。特に、安全性確保のための方策の大枠や偽造医薬品対策の強化等について合意に至ったことは大きな成果である。

    本検討会としては、改めてこの取りまとめの意義を強調するとともに、他の様々な場における議論も参考にした上で、早急に一般用医薬品のインターネット販売等の具体的なルールが策定されること
    を期待する。

    なお、これまでの検討会の経過や今後の方向性などについて、以下のような意見が提出された。
    ・安全確保のための方策等については、必要に応じて専門家による検討の場を設置し、詳細な検討を行うことが望ましい。
    ・更なる検討はこの場で行うべきであり、別の検討会に委ねるべきではない。
    ・今後の具体的なロードマップが一切示されていない。残された論点を整理し、それぞれについての今後のロードマップを明確に示すべき。
    ・インターネット販売についてのルールがない状態は消費者の安全を考えると望ましいことではなく、早急なルール作りが必要。

    今後は、この取りまとめと政府官邸の方針がどう折り合って、どのよう目的で専門家による検討会が設置されるかが注目となります。(特ににどのような人が委員に人選されるか注目。あまり現場を知らない薬学研究者が人選されるかもしれないのがいちばんの憂慮)