英国におけるスイッチOTC25年の歩み

 4日の英国医薬品庁(MHRA)のウェブサイトに、興味ある情報が掲載されています。

What next for the reclassification of prescription only medicines (POM) to pharmacy status (P)? (MHRA Press Release 2008.12.4)

 プレスリリースによれば、1983年にイブプロフェンが処方せん医薬品から薬局医薬品にスイッチが始まってから25周年を受けて、今日、OTCの業界団体 The Proprietary Association of Great Britain (PAGB) とMHRAが記念のレセプションを行ったそうです。

 PAGBの会長は、「新たな成分のOTC化は、OTC医薬品産業の改革の原動力となったのと同時に、近年は病気の予防や慢性病の治療に寄与している。さらに今後は、sexual Health や肥満などの公衆衛生の分野にも広がっていくだろう。」とコメント、またMHRAのビジランスとリスクマネジメント部長も、「この25年間、草分けとも言える取り組みが、患者や人々の健康、医療システムに利益をもたらした。これからの25年もこれまでの実績を基にさらなる取り組みを続けていきたい。」とコメントし、官民挙げて必要な医薬品について今後もOTCへのスイッチを推進することを確認したようです

 さらに、その下にはこれまでの25年間にスイッチがされた成分の一覧表が掲載(PAGBのウェブサイトにリンク)されています。

Promoting Responsible Consumer Health POM – P Switches(PAGB)
  http://www.pagb.co.uk/pressarea/releases/POMtoPlist4.12.08.pdf
  http://www.pagb.co.uk/regulatory/pdfs/pomtoplist.pdf

 著作権の問題もあるので、詳しくは紹介しませんが、日本では処方せん医薬品なのに対し、英国ではすでにスイッチされているものは、一部を紹介しただけでも次のように相当数あります。

YEAR 成分名 効能 他
1983 テルフェナジン hay fever、1997年に処方せん医薬品に再分類
1988 アステミゾール hay fever、1997年に処方せん医薬品に再分類
1989 メベンダゾール 蟯虫症
1993 セチジリン塩酸塩 アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚疾患
1993 ロラタジン 鼻炎
1994 プロピオン酸ベクロメタゾン
(点鼻スプレー)
季節性アレルギー性鼻炎
(1995年に予防も効能追加)
1995 フルコナゾール(内服) 膣カンジダ症
(2001年にカンジダ性亀頭炎も効能追加)
1995 ヒドロキシジン塩酸塩 じんましん、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎
1995 パモ酸ピランテル 蟯虫症
1998 ドンペリドン 悪心、腹部膨満、胃もたれ、胸焼け
2001 レボノルゲストレル 緊急避妊
2002 プロピオン酸フルチカゾン
(点鼻スプレー)
アレルギー性鼻炎
2003 オメプラゾール 胸焼け
2004 シンバスタチン 冠性心疾患の一次予防
2005 クロラムフェニコール
(点眼液)
急性細菌性結膜炎
2006 スマトリプタン 偏頭痛
2008 ナプロキセン 月経困難
2008 アジスロマイシン クラミジア
2008 ジクロフェナクナトリウム 頭痛、歯の痛み、筋肉痛、腰痛、風邪などによる体の痛み

 また、PAGB公表資料には、「トリメトプリム」「ゾルミトリプタン」など、現在スイッチ化の検討が行われている(難航している)成分もリストアップされています。

 英国王立薬剤師会では、TOPICS 2008.09.16 でも紹介したように、新しい成分がスイッチされるごとに販売指針(Practice Guidace)を作成して、販売がきちんと行われているようにしています。

 医療制度が異なるので、一概には比較できませんが、日本では現場での販売方法のあり方も含めて、英国から5〜15年遅れているといえましょう。

関連情報:TOPICS
   2008.09.16 OTC販売時の業務指針・チェックリスト(英国)
   2008.11.08 アジスロマイシンのOTCが発売(英国)
   2006.05.19 スマトリプタンがOTCにスイッチ(英国)
   2005.11.03 OTCとして供給される緊急避妊薬(英国)

2012.10.15 リンク再設定


2008年12月05日 01:36 投稿

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