英国当局も6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告

 英国医薬品庁(MHRA)は28日、小児用OTC風邪薬は12歳未満の子どもには有用ではなく(ファーストチョイスとして勧められない)、6歳未満へは使用すべきでないなどとした、安全性情報を発表しました。(土曜日の夕方の発表は異例です)

Better medicines for children’s coughs and colds
(MHRA Press Release 2009.2.28)
http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON038902

Children’s over-the-counter cough and cold medicines: New advice
(MHRA Safety warnings and messages for medicines 2009.2.28)
http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/Safetywarningsalertsandrecalls/
Safetywarningsandmessagesformedicines/CON038908

 MHRAは、OTC風邪薬が幻覚などの有害事象と関連づけられないとしながらも、「OTC風邪薬や咳止め薬は長年使用されているという理由で、子どもへの臨床試験は行われてこなかった。子どもを小さな大人として、有効性と安全性を判断することは望ましくない」として、下記の成分が含まれるOTC薬について、6歳未満については使用中止を勧告すると共に(6歳未満の適応のラベルを来シーズンまでに削除)、6歳以上12歳未満(適応がある製品)については、GSL(一般販売品)からP(薬局用医薬品)に医薬品分類を変更し、パッケージとラベルを変更(2010年3月までに)したうえで、薬剤師のアドバイスの下、慎重に販売することを求めました。

 なお、12歳未満の有効性についても今後さらなる検討を行うとしています。

鎮咳薬 デキストロメトルファン、pholcodine
去痰薬 グアイフェネシン、トコン(ipecacuanha)
鼻粘膜充血除去薬 エフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、 oxymetazoline、 xylometazoline
抗ヒスタミン薬 クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、brompheniramine、doxylamine、 triprolidine

 今回のMHRAの発表を受け、英国王立薬剤師会は、今回のMHRAの決定を支持すろとともに、親や保護者に次のような対応行うことを呼びかけるステ−トメントを発表しています。

  • 発熱や痛みにはアセトアミノフェンかイブプロフェンで対応しましょう
  • 咳に対しては、単シロップ、グリセロール、またはハチミツ、レモンなどを含んだ薬理作用のない物を与えて下さい
  • 鼻づまりに対しては、0.9%食塩水の点鼻で対応しましょう

NEW ADVICE FOR THE TREATMENT OF COUGH AND COLDS IN CHILDREN
  (Royal Pharmaceutical Society of Great Britain 2009.2.28)
 http://www.rpsgb.org/pdfs/pr090228.pdf

 一方業界団体のPAGB(The Proprietary Association of Great Britain http://www.pagb.co.uk/)も同日ステートメントを発表すると共に、「咳のときは、ハチミツやレモンを含んだものを与える。鼻づまりの時は薬局で手に入る食塩水の点鼻薬や蒸気で対応する。」などを記した保護者向けのリーフレットを公表しています。(右図)

Use of Children’s Cough and Cold Medicines
http://www.pagb.co.uk/pressarea/
releases/coughcoldrelease28.2.09.pdf

Leaflet on how to treat children’s coughs and colds
http://www.pagb.co.uk/pressarea/
releases/Coughcoldleaflet2009.pdf

 英国では去年3月に、2歳未満のOTC風邪薬の使用禁止を勧告し、6歳未満についても薬剤師による販売のみに制限する販売規制を行うと発表(TOPICS 2008.03.27)していますが、今回の措置で販売規制はカナダと同じ6歳未満(TOPICS 2008.12.19)となりました。

 一方、日本ではどうかというと、TOPICS 2008.07.05 及び、日経DI2月号(TOPICS 2009.02.07)でも指摘しましたが、[用法及び用量に関連する注意]の項に 「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させること。」と追記されているだけで、変更になったこと自体を知らない人も多いのではないのでしょうか?

 確かに、有害事象が起こっていない(エビデンスがない)以上、過剰に反応する必要はないのかもしれませんが、少なくともこういった海外当局の対応状況を、もっと日本でも広く一般にきちんと知らせることは必要ではないでしょうか?

 ただ、「これらOTCを使用する場合には、薬剤師に相談しましょう」ということだけは各国とも共通の認識です。(日本ではまだまだですが) ですから、これらOTC(特に鎮静作用のある抗ヒスタミン剤を含むもの)のネット販売については、慎重に対応せざるを得ませんね。

関連情報:TOPICS
 2008.03.27 小児用OTC風邪薬の2歳未満の使用禁止を勧告(英国)
 2008.07.05 2歳未満はOTC風邪薬は使用せず受診を
 2008.12.19 カナダ当局、6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告
 2008.10.08 小児用OTC風邪薬は4歳未満に与えてはいけない(米国)
 2008.12.21 OTC風邪薬による有害事象は、偶発的過量服用だけが原因ではない
 2006.01.11 OTC咳止め薬は、本当に有用か?(米国)

参考:
Child cold drugs under scrutiny(BBC News 2009.3.1)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7917188.stm
Parents told not to give cough and cold remedies to children
(Telegraph 2009.2.28)

http://www.telegraph.co.uk/health/children_shealth/4886504/

Parents-told-not-to-give-cough-and-cold-remedies-to-children.html

3月2日 10:40 18:30更新


2009年03月01日 23:16 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    3日、昨年11月27日に開催された平成20年度第3回医薬品等安全対策部会の議事録が公開され、この問題について議論されています。以下抜粋します。

    平成20年度第3回医薬品等安全対策部会議事録
     (2008年11月27日開催 2009年3月3日公開)
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/txt/s1127-8.txt

    ○事務局:「2歳未満の乳幼児へのかぜ薬、咳止め薬及び鼻炎用内服薬の使用に対する注意喚起の重ねてのお願いについて」でございます。2ページ目を御覧ください。本件は、平成20年10月17日に日本OTC医薬品協会から出されたプレスリリースでございまして、2歳未満の乳幼児へのかぜ薬、咳止め薬、鼻炎用内服薬につきましては、7月4日付けで使用上の注意の改訂が行われておりまして、「用法及び用量に関連する注意」の項に「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさ
    せることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させること。」という改訂を指示したところでございます。
     その旨の注意喚起をお願いするとともに、10月7日に米国OTC医薬品協会が、薬剤の乱用・誤用による事故防止のため、業界の自主基準として4歳未満は使用しないということを発表したことをお伝えしております。あわせまして、米国以外では、豪州、英国では同様の措置は取られず、「2歳未満」のままとなっているというプレスリリースを受けまして、当課としても参考配付ということで情報提供したものでございます。

    (中略)

    ○池田康夫委員(慶応大学医学部教授):2歳未満の乳幼児の投げ込み発表で、OTC医薬品協会が出したわけですが、大事なのは、子供を持っているお母さんたちがどのように認識したかということ、それから、もちろん日本薬剤師会にお願いをして、薬剤師会はこれを受けて何かアクションを起こしたわけですが、どのようなアクションを実際に起こして、それが本当にお母さんたちにも伝わったのか、あるいは薬剤師、薬局の方たちがどのように変わったか、その辺を実際のところは知りたいところだと思うのですが、どうでしょうか。

    ○安全使用推進室長:7月4日時点で、2歳未満の乳幼児については医師の診療を受けさせることを優先するという注意喚起を図った際には、日本薬剤師会あるいは販売業の関係の団体にも、こういう改訂が行われているので、その販売に当たって注意喚起をしていただくようにという対応は行わせていただいたところでございます。

    ○生出委員:日本薬剤師会ですが、今回だけではなく、ここにありますように「重ねてのお願い」と書いてありますのは、昨年だったかと思いますが、一昨年辺りにアメリカでこういう事例が起きたために、自主的に売らないようにしようということをすぐに決めまして、県の薬剤師会、それから会員あてにすべて通知がいくようになっておりますので、御心配ないと思います。

    11月4日の日薬ニュースで確かにこのことを触れていますが、「自主的に売らないように」という通知ってありましたでしょうか? ご存じの方がいましたら教えて下さい。

    批判めいたことはあまり言いたくありませんが、もしこういった事実がないのに、会員に徹底されているかのような発言をしたなるとちょっと問題ではないでしょうか?