調剤・薬剤費の費用構造や動向等に関する分析(内閣府)

 内閣府が、政策課題分析シリーズのページ(→リンク)で25日公表したレポートです。おそらく、来春の調剤報酬改定に向けての格好のたたき台となりそうなので、紹介しておきます。

調剤・薬剤費の費用構造や動向等に関する分析
-調剤技術料の形成過程と薬局機能-
(2017年8月 内閣府政策統括官(経済財政分析担当) )
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/08seisakukadai14-0.pdf

  • 伊藤 由希子(東京学芸大学 准教授)
  • 坂巻 弘之 (東京理科大学 教授)
  • 中村 洋 (慶應義塾大学 教授)
  • 西村 周三(座長、 一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会
    医療経済研究機構 所長)

 このレポートは、規制改革推進会議の下記専門調査会部会で議論されたものを整理し、厚生局への届け出データなどを解析し、上記有識者によって構成される研究会を複数回開催しまとめたもので、現状についての分析と今後の課題を提起しています。

【内閣府・規制改革推進会議】
社会保障ワーキング・グループ
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/index.html

第19回 2017年4月11日開催
資料:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/290411/agenda.html
議事要旨:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/summary_19th.pdf

(関連)
第2回 評価・分析ワーキング・グループ(2017.04.06開催)
資料:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg5/290406/agenda.html
議事要旨:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg5/summary_290406.pdf

 いくつか目に留まった箇所の指摘を掲げておきます

  • 2016年度に「大型門前薬局」への基本料減額を導入したが、実効性に乏しい
  • 減算調剤基本料の適用比率(調剤基本料2、3適用比率)には大きな地域差
  • 門前薬局対策での調剤基本料の引き下げは論理的には逆効果
  • 施設基準による調剤基本料のばらつきは大きい
  • 薬剤費1,000円当たりの技術料は、院外処方時に院内処方時の3.3倍必要
  • 地方厚生局への届出内容から、常勤薬剤師として保険薬局に登録されている人数別に、全保険薬局に占める比率をみると、常勤薬剤師が1人しか登録されていない保険薬局が47%と約半数を占めている。続いて、2人体制の保険薬局が27%であり、24時間対応が出来るほど人員を抱えた店舗は希薄
  • 対物業務から対人業務への変換が求められ、地域包括ケアシステムを構築し、24時間・在宅対応が求められているにも関わらず、常勤薬剤師1人薬局において、患者サービスを向上させる取組に積極的に関与できる余地は少ない
  • 人口密度が低いほど、全保険薬局に占める常勤薬剤師1人薬局の比率は高い傾向

 これらを踏まえ、次のような提言を行っています。

  • 院外処方時には、院内処方時の約3.3倍必要であり、高い技術料に見合うサービスが患者に提供されているのか否か、技術料の水準の妥当性が説明されるべきである。
  • 薬剤師の業務を「対物業務」から「対人業務」に転換するためには、技術料に占める薬学管理料を引き上げることや、薬学管理料に相当する対人業務を基本業務と規定して、包括化評価をする調剤報酬体系も考えられる。
  • 人口密度の低い地域にて常勤薬剤師1人薬局の比率が高い現状下で、「かかりつけ薬局・薬剤師」を推進するためには工夫が必要である。立地過多の都市部では薬局の集約化、希薄な地域では連携が進むよう、地域社会・医療環境の特性に応じた調剤報酬を検討することも一案である。

関連資料:
医薬分業と二つの政策目標—医薬分業の進展の要因—
(社会薬学 Vol. 32 (2013) No. 2 p. 33-42) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsp/32/2/32_33/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsp/32/2/32_33/_pdf

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2017年08月30日 14:02 投稿

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