零売訴訟国側勝訴も、処方箋医薬品ではない医療用医薬品の薬剤師の関与の下での供給の仕組みづくりは必要

零売薬局3社が、厚労省の販売規制は過剰で無効だと訴えた訴訟の判決が18日言い渡され、原告側の請求を退ける判決が言い渡されました。

「処方箋なしで零売薬を販売できる地位」「零売薬の広告ができる地位」「処方箋なしで買えるといった広告表現」「損害賠償」などが争点だったのですが、いずれも退けられたそうです。

個人的には今回の訴訟の争点は果たしてどうだったのかと思います。

使用者のニーズの名の下に、「処方箋なしで買える」ということを訴求し、零売(医療用医薬品)をいわば商品化したことが大きかったのではと考えています。

一方で、判決文では、「薬局医薬品の販売等は、実質的医行為等に該当する」ということが理由として挙げられました。

薬剤師は調剤だけ黙ってやっていればいい、生活者のニーズに合わなくてもOTCメーカーがつくったOTCだけを供給すればよい(これも今や薬剤師ではなく登録販売者) ということなのかもしれません。

今後は、法律上認められている「やむを得ない場合」がどう運用されるかになると思います。

考えられるのは次のケースです。

  1. 次回受診までに対応する薬が足りない場合
    屯用の痛み止め、軟膏類、貼り薬など
  2. 市販化されている成分でもOTCでは同じ剤型がなくOTCで代替ができない場合
    ピコスルファート液 アセトアミノフェン単剤のシロップ
  3. OTC化されていない漢方処方
    これについては除外の可能性がある
  4. メリットが大きいのに効能効果の違いからOTCでは代替できないもの
    フェキソフェナジンなどの第二世代抗ヒスタミン薬の皮膚領域への使用(代替の多くは第一世代は眠気の問題がある)
  5. スイッチOTC化されても、メーカーの意向で一部のドラッグチェーンにしか供給されないために取り扱いに障壁があるもの
    アレグラFXプレミアム(フェキソフェナジン+プソイドエフェドリン)、シアリス(タダラフィル)
  6. 薬剤師の関与することで短期の使用に限り販売は可能だが、需要や開発費用に見合わないためにOTC化が難しいと考えられる成分
    ドンペリドン 他

こういった場合に、医療用医薬品の処方箋なしでの販売ができるよう、可能にする仕組みをしっかりつくることは必要だと思います。

なぜならそうしないと、これらの薬の入手だけのために時間をかけて受診をし、受診や処方・調剤といったコスト増となり、その費用を保険で賄うことにつながるからです。

ピコスルファート液1本のためにわざわざ受診が必要ですか?

実際海外ではOTCとは別に通常は医師の処方で使われる医薬品を薬剤師の関与の下で販売できる施策をとっている国もあります。

Liste B+ 医薬品は日本でいうところの零売?(スイス)
(アポネットR 2025.08.19)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/20250820.html

直接アクセス医薬品(Médicaments en accès direct)(フランス)
(アポネットR 2025.04.20)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/20250416.html

さらに最近では、前回の記事でも紹介した、⼀般的な症状や軽度疾患に対し、薬剤師による面接を行い必要に応じて医薬品を供給を供給するという、Common Ailment Schemes(CAS)という取り組みが広がっています。(処方集を作るなどして、供給できる薬や数量も決められている)

こういった背景には、いずれの場合もOTCだけでは軽度疾患への対応ができないケースが少なくないからです。

日本でも同じではないでしょうか?

たびたび論争になっている薬剤師の「処方権」とは何か
(アポネットR 2026.09.14)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/20260904.html

また、薬剤師会は職能団体だからこそ、具体的にどういう場合に、どの数量であれば販売できるか、利用者への周知の方法といったガイダンスを作るべきでした。

製品指定による販売ではなく、症状に対する適切な医薬品の提供ができるよう販売手順を体系化(アルゴリズム化)し、薬剤師が関与する仕組みも必要です。

処方箋医薬品でない医療用医薬品はOTC類似薬でもあります。追加負担でもらうよりも、自費でもいいので欲しいという場合もあるかもしれません。

おそらく、薬剤師会は零売よりも処方箋での調剤の方がフィーがあると考えたからなのかもしれません。

薬剤師会には今回の訴訟の結果に関わらず、法律上認められている「やむを得ない場合」の対応について、厚労省任せではなく、自らガイダンスをしっかり作り、現場に徹底することが求められます。

(この記事はX記事としても投稿しています)


2026年09月18日 17:01 投稿

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