日本調剤が水野薬局を買収

 個人的には今年最大の衝撃のニュースです。薬局の買収はこのご時世日常茶飯事ですが、買収されるのがあの水野薬局で、買収したのが日本調剤となると話は違います。

日本調剤、初の調剤薬局「水野薬局」買収
(日本経済新聞 2016.09.20)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ20HWG_Q6A920C1000000/

「合同会社水野」の持分取得(子会社化)に関するお知らせ
(日本調剤株式会社 2016.09.20)
http://www.nicho.co.jp/wp/wp-content/uploads/67a5e0591293fe4b1b5f690063adbc3f.pdf

 若い方にとって、「東京の水野薬局って何」と思われる方が少なくないかと思いますが、我々の世代にとっての「水野薬局」は、最新のコンピューター技術を導入したり、海外の地域薬局をモデルに店舗づくりをするなど、当時はあこがれの的で、学生~薬剤師になりたてだった私も見学に行った記憶があります。

 大学病院の門前に店舗を構え、高度の調剤技術も学べるということで、当時から薬局の跡継ぎや開局を考える人が研修生などとして在籍するという話もよく聞きました。(現日薬山本信夫会長も75-81年に在籍。今の薬剤師会の役員をしている人も少なからずOBがいます。是非コメントが欲しいな)

 今のように医薬分業が当たり前になった時代では想像できないかと思いますが、当時はまだまだ分業は進んでいない時代。理想の地域薬局を目指して、私たち若い薬剤師に様々な教示をしていただいた水野睦郎氏と水野薬局には、私にとって、医薬分業の先駆者としてがんばってこられてきた偉大な存在でもあります。

 今回の子会社化について水野薬局もニュースリリースを発表していますが、代表の水野善郎氏のコメントがとても気になりました。

水野薬局ニュースリリース2016.09.20
http://drug.com/ja/pdf/v2.pdf

 お客様志向の薬局をめざして、試行錯誤を恐れず、朝令暮改をモットーにアジャイルな薬局業務を追求してまいりました。しかしながら、昨今の薬歴未記載問題に対しての業界団体等の対応等に疑問を覚え、社会的にもコンプライアンス責任を持つ公開企業の日調に、【水野薬局】ブランドをお任せすることにしました。
 大規模オペレーションの一部になることは、真摯で優秀な弊社従業員のキャリアパスを充実させることにもなります。他業界とくらべ、薬局業界はまだまだ寡占化も進んでおらず、これからが戦国時代です。その時代を勝ちぬく後継者を育てられなかったこと、この点には自責の念にかられております。お客様におきましては、これまでと変わらず水野薬局をよろしくお願い申し上げます。

 赤字の部分は本当に意味深です。(個人的にも薬歴未記載問題の関係団体の対応は問題があったと思う。)

 今回の水野薬局の決断をみるにつれ、理想とする地域薬局像は追求するには、もはや個店や小規模店舗では無理と考えたのでしょう。

 そして、今の薬剤師会にも見切りをつけた のだと、このコメントをみて思いました。(日本調剤の看板になったら薬剤師会もやめるのかなあ。そうであったら本当に残念)

 もはや、理想を追求するには規模がモノを言う時代と判断したのでしょう。

 ちなみに、先代の水野睦郎氏は、1987年に薬局の沿革や自らの理念、各種関係雑誌の投稿や対談などをまとめた、「開局薬剤師30年」を発行し、その一部をWEBで公開しています。(屋根裏の本棚の片隅に本書の存在を確認。どういう経緯で入手したかはもちろん覚えていない)

 「単なる大病院前の門前薬局でしょ」と思われる若い方も、是非一度目を通して頂ければと思います。(日本調剤になっても、この貴重な資料はWEBに残して欲しい)

医薬分業の理念 – 水野薬局/開局薬剤師30年
http://www.drug.com/ja/archive/30year/001.html

いくつかツイートも紹介


2016年09月21日 00:54 投稿

Comments are closed.