医療砂漠への対応策としての地域薬局・薬剤師を活用した行動計画(仏)

フランソワ・バイルー仏首相は4月25日、国内で問題になっている医療砂漠(déserts médicaux)への対応策として、地域薬局・薬剤師を活用するなどを含む、フランス国民の医療アクセス強化のための行動計画(le pacte)を発表した。

【フランス政府 2025.04.26】
PACTE DE LUTTE CONTRE LES DÉSERTS MÉDICAUX
https://www.info.gouv.fr/actualite/former-plus-principe-de-solidarite-le-plan-du-gouvernement-face-aux-deserts-medicaux
https://www.info.gouv.fr/upload/media/content/0001/13/0f332cd5f6e3b38dcacebe3247423386667ae3b1.pdf

医療砂漠と医療へのアクセスは新たな段階を迎えている。それは、どこに住んでいても、誰も自分のニーズを満たす医療サポートを奪われるべきではないという明確な政治的意志を体現している。

この行動計画は、すべての医療従事者に向けた信頼のメッセージでもある。

彼らの専門知識、発明力、取り組み、患者に寄り添う能力は、この変革の成功に不可欠である。

これは4つの優先事項に基づいており、いずれも地域の関係者、患者、選挙で選ばれた代表者とともに策定されたもので、その影響を透明性をもって評価しながら、迅速に実施される予定である。

医療砂漠と闘う協定を構成する中心的提案

  1. より多くの若者がフランス全土で保健医療を学ぶことで、学生の地理的・社会的出身を多様化する。
  2. 最も深刻な地域での医療提供を発展させるために、医療界全体の連帯原則を展開する。
  3. 医療従事者の組織を近代化・簡素化し、より多くの患者に対応できるよう、そのスキルを結集する。
  4. 地元選出の代表者と協力し、全国の学生や医療従事者にとって魅力的な条件を整備する。

特筆すべきでは2で地域薬局・薬剤師の活用について記している点。

薬局の地域ネットワークを保証する(p21)

地域薬局数の減少に歯止めをかけるため、地域ネットワークを見直し、夜間や週末にどの薬局が待機しているかをより簡単に確認できるようにするために、次の取り組みを行います。

  • 最後の薬局が最近閉鎖された小さな町(人口2,500人未満)に、例外的に薬局を設置しやすくする
  • フランスの医療保険との協定に基づく、脆弱な薬局に対する財政的支援策の展開を可能にする。
  • フランスの健康保険制度と独立薬剤師の間の協定に基づく、脆弱地域の薬局に対する財政支援措置の展開を可能にする。
  • 薬学部長会議が実施する取り組みに関連して、SDIS 内の特定の院内薬局(PUI) の活動を維持するために、専⾨研究証書 (DES) を持たない薬剤師が病院薬学の短期研修コースを修了した上で、⼀時的に交代したり、実際に働いたりすることを認可する。
  • このプロジェクトは、EHPADへの拡張や、医療過疎地でのケアの継続性を保証するための特定の施設での実験の基礎とする。

医療システムにおけるすべての技能の動員(p22)

  • 地域薬剤師が特定の⼀般的な症状に対して直接応急処置を提供し、治療薬を直接処方できるようにする
  • 例えば、季節性アレルギー性鼻炎に苦しむ患者が、期限切れの処方箋を持って薬局に行き、治療を受けることができるようにする。
  • 同様に、虫刺され感染症の患者も治療を受けるようにする。
  • 急性副鼻腔炎などの直接的な治療は、フランス国家衛生局によって承認された意思決定プロトコルに基づき、管理を組織化する。

こちらに記事によれば、政府筋の話として次のような点も記している

Solidarité territoriale pour les médecins, nouvelles compétences pour IPA et pharmaciens, accès direct kiné : le plan Bayrou contre les déserts médicaux
(concourspluripro 2025.041.25)
https://www.concourspluripro.fr/exercice-pluriprofessionnel/metiers/solidarite-territoriale-pour-les-medecins-nouvelles-competences

この構想は、すべての医療専門職を非常に迅速にスピードアップさせることである。

アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、耳炎、創傷などの第一選択プロトコルによる薬剤師の新たな任務。

薬剤師が溶連菌感染症や膀胱炎の場合、検査を実施した後に処方箋なしで抗生物質を調剤することを許可するプロトコルに基づけば、「年間900万件」の相談に対応することが可能になる。

すでにフランス国内では、4つの地域の200薬局が、簡単な傷、ダニによる咬傷、第1度熱傷、結膜炎、尿路性器熱傷、咽頭痛など、さまざまなプライマリーケアの治療にあたる試行事業を行っていて、今後具体的な枠組みについては早急に議論する必要があるとしている。

Bayrou confie de nouvelles missions aux pharmaciens !
(lemoniteurdespharmacies 2025.04.25)
https://www.lemoniteurdespharmacies.fr/nouvelles-missions/prevention/bayrou-confie-de-nouvelles-missions-aux-pharmaciens

フランスでも、軽度疾患は地域薬局がまず対応するとした、英国の Pharmacy First の仕組みが採用されるのかもしれない。

今回の発表について、薬剤師組合連合のUPSOは、「コロナ禍の時と同様、薬局はプライマリ・ケアに効果的に貢献できる立場にある。今後、地域薬剤師は、鼻炎、刺され、アレルギーなどの日常的な病気に対する患者のニーズに応えることができるようになる」とした、地域薬局の使命の拡大を歓迎するとしたコメントを発表している

L’USPO salue l’élargissement des missions des pharmacies d’officine
(USPO 2025.04.25)
https://uspo.fr/luspo-salue-lelargissement-des-missions-des-pharmacies-dofficine/


2025年05月04日 13:15 投稿

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