(市民)マラソン参加者の消炎鎮痛剤の使用の実態

マラソンなどスポーツでは、時に体への痛み対策として、さまざまな消炎鎮痛剤を使う機会が多いと思います。

このほど、国内マラソン大会参加者を対象にした調査で、その使用の実態の一端が明らかになっています。

【一般用医薬品セルフメディケーション振興財団・令和6年度 研究成果報告書 2025.06.30】
スポーツ活動中の鎮痛剤(一般用医薬品または要指導医薬品含む)の使用実態と副作用に関する認識との関連
https://www.otc-spf.jp/wp-content/uploads/2025/05/r06b-02.pdf

調査は2024年10月~2025年3月にかけて行わた、箱根駅伝予選大会や東京マラソン、地方の市民マラソン大会など11の国内マラソン大会の参加者にオンラインで実施。

年齢、性別、競技歴のほか、過去の鎮痛剤使用状況、大会当日の使用状況、ヘルスリテラシー、鎮痛剤の副作用の認識に関する項目について調査が行われました。(1924人が回答)

その結果、

大会開始 24 時間前から大会終了後 24 時間後までの間に 294 名(15.5%)が鎮痛剤を内服していることがわかりました。

そして、このうち

  • すでに痛みがある状態への対応のみとして使用した人 123 名(全体の6.4%)
  • 痛みの予防のみを目的として使用した者は       69 名(全体の3.6%)
  • 両方の目的で使用した人              102 名(全体の5.3%)

となったそうです。

また痛みの有無にかかわらず、鎮痛剤服用者の98%がマラソン開始前または実施中に服用していたそうです。

服用薬は、NSAIDsのロキソプロフェンが最も多い結果になっています。

また、添付文書に記載されている鎮痛剤の副作用のなかで、知っている症状について尋ねたところ、「胃部不快感」が最も多く(40.7%)答えた一方で、「知らない、またはこの中にない」と回答した者が31.8%にも達したそうです。

運動時の鎮痛剤の使用実態や安易な服用のリスクについての論文や報告は、Pubmedなどで検索するといくつか紹介されていて、以前本blogでも取り上げています。

マラソン前の鎮痛薬の予防的使用は臓器にダメージを与える
(アポネットR 2013.04.20)(コメント追記も)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/130424.html

そう、スポーツ活動では発汗や血流分布の変化により、体内での薬物動態に影響を与えたり、ことが知られており、心血管イベントや消化管障害、そして普段プロスタグダンジン類によって保護されている臓器組織が、NSAIDsのシクロオキシナーゼ阻害作用がダメージとなって腎障害などの有害事象が引き起こされる可能性があるのです。

体調が悪いのに無理をして痛み止めを飲んで、マラソンなどの激しいスポーツに臨むことは健康リスクが高くなることがうかがえます。

研究者らはマラソン大会参加者の約1割に鎮痛剤の不適切使用(予防服用)が疑われたとして、健康情報を理解し活用する能力が、鎮痛剤の使用行動に影響を及ぼしている可能性があるとしています

今回の調査データのさらなる解析を期待したいものです。

関連情報:TOPICS
2013.04.20 マラソン前の鎮痛薬の予防的使用は臓器にダメージを与える
2012.06.06 サッカー選手と鎮痛薬の使用
2012.12.08 運動前のイブプロフェンの服用は小腸にも有害(海外研究)


2025年07月02日 16:55 投稿

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