5月8日の参議院厚生労働委員会で、薬剤師でもある自民党の神谷まさゆき議員が質問にたちました。
通告のテーマは、
- 後発医薬品調剤体制加算について
- 安定供給回復に向けた現状とこれまでの取り組みについて
- 後発医薬品製造基盤整備基金の設置とその予算確保について
- 需給状態のモニタリングへの取り組みについて
- 革新的医薬品等実用化支援基金による活発な創薬環境整備について
- 条件付き承認の適用対象となる患者について
- 不適切な零売の事例について
- いわゆる零売対応とスイッチ化の促進、一般用医薬品のリスク区分について
- セルフメディケーション推進においてPHRを活用する方策について
の9項目で、持ち時間30分の間に全て質問をしています。
動画を確認し、零売など、最後の3つのテーマについて文字おこしをしました.
【参議院インターネット審議中継】
厚生労働委員会(2025.05.08)
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8498
神谷委員:
続いて、零売について伺います。
まず本題に入る前に、私はまちの相談薬局で生まれ、幼いころから父が薬局で健康相談にのる姿を見て育ち、自分自身も同じように15年近く働いてきました。
その経験を持って零売について議論される際に、セルフメディケーションが引き合いに出されることに強い違和感があります。
我が国においては、セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度の身体の不調は自分で手当てすることとされています。
またWHOの定義を読み解くと、自己診断された症状に対してという枕詞がつき、定義の後段の文章には、処方された薬を適切に使用する、これは服薬コンプライアンスにすると思いますが、そのような内容が含まれています。
それを踏まえますと、服薬コンプライアンスは別にして、我が国のセルフメディケーションの考え方では、基本的に医師の診断前になるため、薬機法に事業者の選択により使用されると定義づけられた、一般用医薬品が使用されることになると考えます。
そしてその際は薬剤師が適切に介入することでよりよい薬が選ばれる。
また、必要に応じて受診勧奨につながるべきだと思います。
そのことも踏まえ、零売とセルフメディケーションを混同して考えることで、より議論がわかりにくくなっているのではないでしょうか?
そのうえで、近年零売を薬局営業の主たる目的として掲げる薬局が現れ、本来診療が必要な疾病であっても、医師の診断を経ずに購入できるような販売形態をとっている事例なども見られると聞いています。
今回の改正法では、不適切な零売を制限し、現行で認められているやむを得ない場合を明確化するものだと理解していますが、不適切な零売として、どのような事案があるのか、厚労省にお尋ねします。
城医薬局長:
はい、いわゆる零売におきます不適切な事例につきましては、これはしっかり的に把握しているものではございませんけれども、例示いたしますと、例えば緊急時等やむを得ない場合ではなく、日常的に医療用医薬品が販売されている事例、また、医師が通常処方する数量を大きく超えた数量の販売等がなされている事例、複数の医薬品を組み合わせたうえで、効能効果を逸脱した標ぼうをした販売等がなされているという事例で行政指導が行われわれていることを把握をいたしております。
今回の改正は、こうした保健衛生上の懸念がある事例が散見されることをふまえまして、適正な情報提供や数量に基づく販売が行われるよう、零売の要件を明確化にし、適正な運用を確保することを目的とするものでございます。
神谷委員:
ありがとうございます。少なくとも法令遵守は医療に関わるものは、最低限守らなければならないことだと思います。
そのうえで次の質問に入りますが、今回の法改正に不安の声も聞こえています。
ご存じのとおり、コロナ禍では行政と薬剤師会が連携をとって、解熱鎮痛剤の販売対応をしたことで、地域の医療従事者の負担軽減につながりました。
それも含めて、薬剤師がその職能を生かし、適切な対応により零売を行っている現場の薬局からは、本改正に対し多くの不安の声があります。
やむを得ない場合に、最小限の数量を販売する本来の趣旨に則った例外はこれまで通り継続できるという点をとりたいと同時に、そのような声が上がる要因に、スイッチOTC医薬品の上市が遅々として進まない、セルフメディケーション先の展望が見えないというフラストレーションもあると考えます。
上市が順調に続けば先ほど申し上げた専門家の能力が生かされたセルフメディケーションにつながります。
またその際は、適切な受診勧奨がなされることも重要です。
リスク区分の見直しは専門家の意見を十分に反映して、安易な規制がないように行う必要があると考えます。
そこで3点伺います。
今回の法改正が本来の趣旨に則った零売を行っている現場を規制するのではないという点。2点目にスイッチ化促進について、3点目にリスク区分の見直しについて、厚労大臣に伺います
福岡厚労大臣:
はい、今般の改正案につきましては、緊急時等のやむを得ない場合に薬剤師と相談したうえで、必要最小限の数量を販売する、本来の趣旨に則って行われる零売につきましては、現行と比較して制限の範囲が変わるものではございません。
そういう意味では本法案が成立した場合にも、これまで通り継続して頂くことが可能でございます。
また、スイッチOTC化について関しましては、昨年厚生労働省においてワーキンググループを設置いたしまして承認申請時の添付資料の簡素化の見直しなどをおこなったところでございます。
関係者のご意見を伺いながら、引き続きスイッチOTC化の推進を図ってまいりたいと思います。
そして、スイッチOTC化ごのリスク区分は現行でもですね、薬事審議会の意見を聴いたうえで変更が可能でございますが、長年第一類医薬品に留まっている品目があることを踏まえまして、今後定期的にリスク区分の変更の要否を検討する仕組みを検討していくこととしております。
その検討にあたりましても、個別品目のリスク区分の定期的な変更につきましては、引き続き薬事審議会において専門家のご意見を聞くことが必要だというふうに考えております。
神谷委員:
はい、ご回答ありがとうございます。
本来の趣旨に則った零売の規制にはつながらないということ、またスイッチ化に関してこれをしっかりと進めていただくこと、またリスク区分の引き下げに関しては、専門家の意見をしっかりと反映をして、慎重に検討することを重ねてお願いをいたします。
関連して最後にセルフケア・セルフメデフィケーション推進において、PHRを活用する方策について伺います。
先ほど申し上げました、スイッチ化促進とセルフケア・セルフメディケーション推進は、過疎化と高齢化率化が高まる我が国において、医薬品アクセス向上と医療資源の有効活用を考えるうえでもより必要性が高まってくると考えます。
その際、相談者の生活習慣や状態などの情報が多いほど、薬剤師の指導助言の一助になります。
そのうえで昨今は、スマートウォッチに、心拍数や血圧、睡眠スコアなど、さmままなパーソナルヘルスレコード、PHRを記録できるようになっており、これを利用しない手はないと思います。
またセルフケア・セルフメディケーションで活用するには、相談者の手元の情報と薬剤師をつなぐツールが必要になってきます。
そこで、現在処方された薬がPHRとして、電子お薬手帳で確認されていることを踏まえ、その電子お薬手帳へ一般用医薬品情報とともに、心拍数や睡眠スコアなど、PHRとして組込み、活用できるのではないでしょうか?
セルフケア・セルフメディケーション推進にあたって、電子お薬手帳に幅広いPHRが登録されて、薬剤師や登録販売者が活用しやすい環境整備は有用と考えますが、政府のお考えをお聞かせ下さい。
城医薬局長:
ご指摘頂きましたように、限られた医療資源を有効に活用しながら、国民の健康づくりを促進するために、セルフケア・セルフメディケーションを推進することが必要と考えてございます。
このため、スイッチOTC化の推進の他にも、電子版お薬手帳の活用推進、税制上のインセンティブであります、セルフメディケーション税制やその周知広報等の取り組みを行ってきたところでございます。
特に電子版お薬手帳につきましては、厚生労働省におきまして定めておりますガイドラインにおきまして、実装すべき機能として、一般用医薬品等の登録機能を位置付けております他、将来的に実現することが望ましい機能として、健康食品の購入・使用について記録することができる機能や、バイタルデータ等の記録機能などを掲げて、民間事業者に対して機能実装を求めてきたところでございます。
既に一部の電子版お薬手帳ではこれらの機能が実施されているものと承知をいたしております。
引き続き適切なセルフケア・セルフメディケーションの推進とその環境整備等に向けまして取り組んでまいりたいと考えております。
神谷委員:
はい、ご回答ありがとうございます。
今改正法案では、健康増進薬局の法制化も盛り込まれていますが、そういった視点や受診勧奨を含めた機能を生かしてもらうことをお願いすると同時に、そこへつながるための方策との一つとして、PHRが活用しやすい環境整備をお願いして、質問を終わります。
2025年05月08日 14:43 投稿