テルビナフィンと聴覚障害

 Drug Safety 誌のオンライン版に、抗真菌薬のテルビナフィンの服用と聴覚障害との関連性について検討を行った研究が掲載されています。

Hearing Impairment Associated with Oral Terbinafine Use: A Case Series and Case/Non-Case Analysis in the Netherlands Pharmacovigilance Centre Lareb Database and VigiBase™
Drug Saf. published Online 2012 Jul 4.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22762134
http://www.lareb.nl/LarebCorporateWebsite/
media/publicaties/2012_3_DS_terbinafine.pdf

 この研究はオランダのファーマコビジランスセンター(薬剤監視センター)のLareb に寄せられた、6つの事例を検討し、統計的に解析したもので、研究者らはテルビナフィンの使用により聴力障害の有害事象の可能性が示されたとしています。

 症例については、Larebのウェブサイト(http://www.lareb.nl/Home)のQuarterly reports (→リンク)の Quarterly report 2011-1 に掲載されています。

Oral terbinafine and hearing disorders
(Quarterly report 2011-1 2011.09.29)
http://www.lareb.nl/LarebCorporateWebsite/media/publicaties/kwb_2011_1_terbi.pdf

 研究者らは、聴覚障害の発症メカニズムは明らかになっていないとしながらも、テルビナフィンのスクアレンエポキシダーゼを抑制する薬理作用に注目、蝸牛コレステロールレベルの減少させ、蝸牛機能を低下させ、聴覚障害を引き起こす可能性があると推測しています。 

 日本でも2011年10月の改訂で、副作用の項に、「聴覚障害、聴力低下」が追記されており、症例は集まっているのかもしれません。(Larebのレポートによれば、WHOのデータベースに聴覚障害83例、Eudravigilance database に36例の聴覚喪失の関連性が疑われる報告があるという)

関連資料:
データマイニング手法の導入に関する検討結果報告書
(2008年3月 独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
http://www.info.pmda.go.jp/kyoten_iyaku/file/dm-report19.pdf

統計数理研究所・日本製薬工業協会共催シンポジウム
医薬品の安全性情報を考える2(2005.12.07)
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/
symposium/pdf/20051206/9.20051206JPMA_ISM_symposium_part2.pdf

(今回の研究で出てくる、ROR:Reporting Odds Ratio の解説があります)

9月13日 フルテキストへのリンク追加


2012年07月09日 23:48 投稿

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