2010.11.24 一般用医薬品部会議事録

 27日、OTCエパデールの承認の可否についての審議が行われた昨年11月24日開催の一般用医薬品部会の議事録がようやく公表されました。一部報道(TOPICS 2010.11.25)のとおり、医師の委員が承認に強硬に反対しています。

薬事・食品衛生審議会 一般用医薬品部会議事録
(2010年11月24日開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000019ijr.html

 日薬の岩月・生出委員が懸命に今回のイッチの意義を述べているのですが、鈴木委員(日医常任理事)や村島委員(国立成育医療センター内科医長)などが次のような問題点を指摘し、議論がすすまない(かみあわない)ことをうかがわせます。

  • 企業の□□(伏字になっていますが、おそらく「検診」でしょう)を想定すると、きちんと時間等守られて行われると思うかもしれません。しかし、私は□□□□に産業医として立ち合っていますが、実際には時間がまちまちで、守られていないこともあります。そのため、医療機関で再度測定すると、正常値ということが結構あります。そのような実態を踏まえ、医療機関を経ないで治療に安易に結びつけるということは、非常に問題があると思います。(検診結果は当てにしてはいけないということらしい)
  • 外国にはアクセスの悪い国もあり、イギリスのような国であればセルフメディケーションしかないのかもしれません。アクセスの悪い国はそのような流れにすることも考えられますが、日本は医療機関のアクセスの良い国です。そのため、薬局よりも病院や診療所へ行けば良いと思います。病院で診察した後に、薬が処方されるという流れは、今の国民が利益を最も享受している医療の仕組みです。それを変えることは、理解できません。(スイッチされると医療の仕組みが変わってしまうということを危惧しているらしい)
  • 物を投与することだけが、医師の仕事ではありません。食事療法や運動療法、その前提も全部医療の中に含まれております。病院であれば、医師も薬剤師も管理栄養士もいます。そういった方々が共同で治療をします。その延長線上に、このようなとが決まるものに関して、いきなり薬局へということは、非常に問題があると思います。
  • 薬剤師は、高脂血症でこういった薬が認められれば、大々的にお売りになりたいと思うと思います。株式会社等も多いので、営利企業として売上げを気にすると思います。しかし、日本の医療は非営利なので、きちんとした医師の診断の下、適切な治療をして薬を使う必要がなければ使わずに、食事療法や運動療法をお勧めして欲しいのです。また、採血も外国と違い、日本の場合、必要な時に気軽にできるので、そういった医師の管理の下で使うべきだろうと思います。(薬局が金儲けの手段に使うと思っているらしい
  • 恐らく製薬会社は大々的に宣伝すると思います。今の状況と発売されてからの状況は変わると思います。製薬会社は、その辺をしっかりとわきまえて行動するという指導を行ってください。(であるなら、トクホのEPAの宣伝はどうなんでしょうね?)
  • 努力しても境界域にいる患者さんに対し、「医療費を使って飲むほどではないので、自分で買って飲んでみてください」という流れが一番健全かと思います。しかし、具体的にそれは難しいと思います。最初に医師の受診が前提にあり、その上で医師の管理下で「薬を飲むほどではないが、希望されるならば、このような一般薬もあります。」という形でお勧めするのであれば、そのような手段はあるかと思います。いきなり自覚症状がないものに安易に不安をあおって、高価な薬の長期投与を助長させるようなことは、してはいけないことだと思います。(OTCは高いから保険で飲むことの方がいいということらしい)

 それにしても、企業の保護とはいえ、ここまで伏字にする必要はあるのでしょうか? 意味はないと思うのですが。

 また、今回の部会では医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としての利用も可能と考えられる候補成分についての検討が行われています。医学会等の意見については、ようやく先日公表(TOPICS 2011.04.14)されたばかりですが、部会では候補として不適当とした成分について、さまざまな意見が述べられています。

 このうち国民生活センターの宗林委員の発言には同意するものがあります。

  • 例えば血圧の薬(ACE阻害剤)についても、特保の方で同じような仕組みを持ったものがあります。今回は、血圧値を5mmHgぐらい下げることを目処として元々の書類が出ています。特保のものは、さらに下がるというデータに基づき、境界域を対象に「血圧が高めの方に」という商品が多く出ている現状があります。
  • 「血糖値が高い方に」というものもあります。医療費をどのように考えていくのか、あるいは医療現場の混乱、混雑も含め、消費者側の利便性、あるいは治療をしない人に対して少しでも治療を進めていくということも考え、スイッチ化のものについては慎重に検討して欲しいです。
  • 一つ一つの医薬品を捉えれば、賛成の意見も反対の意見も、どちらも納得できるお話であると思います。先ほどお話したように、「診断と医薬品の選択、用量の指示」まで、医師に関わってもらう必要があると思います。そして、毎月医療機関を受診して医療用医薬品を取りに行くのではなく、例えば半年ごとに定期的に受診し、数値が落ち着いた後に経過観察という仕組みを取り入れることにより、OTC薬を上手く活用していける道もあると考えています。
  • もう少し大局的に医療機関とのネットワーク、連携の中で、OTCを上手く活用していくことが必要です。消費者が100%負担をしてでも、薬の診断の選定まで終われば、6か月間はそれを利用していくという仕組みも大局的には考えて欲しいと思います。そういった形の考え方をお願いしたいと思っています。

 また、ドンペリドン(ナウゼリン)を引き合いに、禁忌の考え方が議論となっています。

 いずれにせよ、セルフメデフィケーションや一般用医薬品はどうあるべきなのかという話しになりかねず、今後の議論が非常に心配ですね。

 私たちも日頃から一般用医薬品の販売時や生活者向けの情報提供を行い、生活者からスイッチの推進の声が高まるようにすることも必要かもしれませんね。

関連情報:TOPICS
  2011.04.11 スイッチ成分として不適切だとするその理由は?
  2011.02.25 第一類医薬品2製品の承認を了承(一般用医薬品部会)
  2011.02.22 海外におけるスイッチOTCの状況(Update)
  2010.11.25 OTCエパデールの承認了承は見送り(Update2)
  2010.06.08 厚労省、スイッチ候補19成分を公表
  2010.10.20 糖尿病診断アクセス革命~地域薬局でHbA1c測定

 


2011年04月27日 13:38 投稿

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