第1類の書面による情報提供を行う店舗は3割に留まる

 厚労省は19日、前回調査(TOPICS 2010.06.18)に続き一般用医薬品が改正薬事法通りに販売されているかどうかの調査結果を発表しています。

平成22年度一般用医薬品販売制度定着状況調査結果報告書の公表について
 (厚労省 2012年1月19日公表)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000205gu.html 

 この調査は、2009年6月1日に施行された改正薬事法の趣旨を踏まえ、一般用医薬品の販売制度の実効性を確保するため、一般消費者の立場から制度の定着状況等を点検・調査することにより、医薬品販売の適正化を図ることを目的に、20092010年12月から20102011年2月に、全国の薬局・薬店から立地や人口規模などを考慮して抽出した薬局3,404店舗・薬店3,425店舗の合計6,829店舗(チェーン3,874、独立2,955)を対象に行われています。(栃木県は92店舗)

 調査方法は、民間業者の調査員が一般客を装って購入する覆面調査形式で実施され、第1類医薬品については、「胃腸薬(H2ブロッカー、鎮痛痙攣薬)」「鼻炎・アレルギー内服薬」「外用消炎鎮痛薬」「解熱鎮痛薬」、第2類医薬品については、「総合感冒薬」「鎮咳去痰薬」を対象として調査を行ったそうです。

 その結果、次のようなことが明らかになったそうです。(前回、平成21年度調査結果と比較してみました)

  • 第1類医薬品を取り扱う店舗(4,581店舗)のうち、リスク分類別の陳列が規定通り陳列されていなったのは10.3%(前回は10.8%(=不明瞭))
  • 店舗の従事者全員が名札を全員つけていなかったのは、薬局で19.1%(前回は22.8%)、薬店で17.9%(前回は33.2%)だったが、チェーン店では2.6%(前回は1.8%)に過ぎなかった
  • リスク分類の定義・解説の掲示を確認できたのは、薬局で40.5%(前回は31.5%)、薬店で38.9%(前回は28.1%)にとどまった(※リスク分類の定義・解説の掲示は、平成24年5月31日まで経過措置がとられている。)
  • また、第1類医薬品を取り扱う店舗(4,544店舗)のうち、第1類医薬品の情報提供に関する解説の掲示を確認できたのは49.0%(前回は48.0%)だった
  • 相談時の対応方法に関する解説の掲示を確認できたのは、薬局で45.8%(前回は30.5%)、薬店で38.6%(前回は28.7%)だった
  • 第1類医薬品の販売時に、文書を用いた情報提供が行われていた店舗は31.5%(前回は50.5%)で、口頭のみの説明が59.1%(前回は22.5%)、文書を渡されたが詳細な説明がなかった店舗が2.9%(前回は7.1%)で、説明がなかった店舗は6.5%(前回は19.8%)にとどまった
  • 第1類医薬品の販売時に説明を行ったのは74.0%(前回は70.4%)が薬剤師だったが、14.5%(前回は23.4%)が名札未着用などで資格不明、登録販売者が対応したケース(8.1%、前回は3.3%)、一般従事者が対応したケース(名前のみの名札、3.4%、前回は2.9%)もあった
  • 第2・3類医薬品を取り扱う店舗のうち、リスク分類別の陳列が不明瞭だったのは31.9%だった(前回は38.7%)
  • 第2類医薬品の購入にあたり、調査員が相談を行った際に適切な説明があったのは、薬局で83.7%、薬店で85.7%で、これを経営スタイルで比較すると独立店81.0%、チェーン店87.4%rと差異があった
  • 第2類医薬品に関する説明や相談への対応を行ったのは薬剤師が36.0%%、登録販売者が300.6%だったが、20.0%が名札未着用などで資格不明、一般従事者が対応したケース(名前のみの名札、13.3%)もあった

 また、これとは別に、ウェブ上で、一般用医薬品の販売サイトを掲載している4モールより、取扱商品数が多い販売サイトとの独自ドメインで医薬品の販売を行っているサイト200を対象に「郵便等販売に関する調査」も行われています。

  • 200サイト中2サイトで、第1類医医薬品の取扱いありとの記載があった
  • 第2類医薬品を取り扱っているサイト144 件のうち、会員登録を必要としない129件を対象に第2類医薬品の購入ができるか等の調査を行ったところ、ウェブサイト上で第2類医薬品の購入手続きを行った際に、過去の購入経験につい
    ての質問がウェブサイト上で「あった」ものは44.2%、離島居住者であることの確認が「あった」サイトは、14.7%にとどまった
  • また、ウェブサイト上で第2類医薬品の購入手続きを行った際に、過去の販売記録との照合等による確認が「あった」ものはなかった。

 一方、今回は今回調査を行った全国の調査員の自宅等に来訪した配置販売業者の来訪時の対応等についての調査結果もまとめています。(サンプル数52件)

  • 配置している一般用医薬品は、「第1類医薬品」が0 件、「第2類医薬品」が52件、「第3類医薬品」は50 件だった
  • 配置箱のなかで、医薬品がリスク分類別に陳列がされているかみたところ、「リスク分類別に区分されていた」ものが44.2%、「リスク分類別に区分されていなかった」ものが55.8%だった
  • 配置販売員が名札または身分証を「つけていた」ものが29 件、「つけていたが裏返っていた」ものが1 件、「つけていなかった」ものが22 件でだった

 第1類医薬品の販売時における書面による説明が行われていた割合が、前回調査の5割から3割に減っていることは各紙とも問題だと指摘しており、今後議論となる可能性があります。

 ちょうど調査時期がロキソニンの販売開始時期と重なります。繰り返し購入の人と考え、書面による説明が省略されていた可能性もあります。(ロキソニン購入者からは、「使用者向医薬品ガイドはいっぱいいあるのでいらない」と私も言われたことあり。指名買いの人や繰り返し使用の人への対応は検討課題だと思う)

 ネット販売業者や日薬、業界団体からどのようなコメントが出るか注目ですね。

関連情報:TOPICS
 2010.06.18 2割の店舗で第一類の説明を行わず(覆面調査の結果が公表)
 2011.04.19 使用者向医薬品ガイドでのロキソニンSの説明は義務なのか?
 2012.01.01 新年雑感

参考:
医療介護CBニュース1月19日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36413.html
産経新聞1月19日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120119/bdy12011922170001-n1.htm


2012年01月20日 01:00 投稿

コメントが4つあります

  1. 22年度調査が24年に発表ですから、21年度調査は23年に発表したんですよね?
    この(22年)調査の後に、その前の年(21年)の事を発表(23年)したんですから、調査結果が啓蒙活動に役立ったとは言えないと思います。
    覆面調査の2年間の結果を1年ずつ発表してるようなものです。

    結果を発表した後に、個々の薬局で注意した結果でも%が落ちているなら批判されても仕方ないって思いますけど、何か前年調査の結果が生かされてないって言ってるような印象です(業界の新聞の方です)。
    個人的には、出された数字が少し意図的だって感じますけど。

  2. アポネット 小嶋

    元記事中の調査期間が誤っていました。すみません。

    日薬からさっそく会員向けに「薬事法遵守徹底のお願い」と題する日薬ニュース号外が出ましたね。

    担当者を集めて、今後現場への周知を徹底させるようです。

    ぼんたさんが指摘されるように、私も去年の3月までに調査が終わっているものをなぜ今頃公表なのかという気がします。

    前回調査は調査終了後3か月ほどで出たのに、今回は震災の影響を考えてもこんなに遅くなるのは何か理由があるのではないかと勘繰りますね。(調査は、みずほ情報総研株式会社の委託)

    去年の6月というと、一般用医薬品の郵便等販売の経過措置延長の省令が公布されたばかりであり、この結果を公表すると、「ちっとも書面で情報を提供していないじゃないか→ネット販売を容認してもいいのでは」といったことになるのを恐れたのではないのと想像してしまいます。

    また、前回調査の記事コメントでも指摘しましたが、今回の調査でも、具体的に調査の際どのようなシナリオで試買を行ったかが明らかになっていません。

    報告書では、「店舗側が会計をしようとした時点までに店舗側から説明があるか」「調査員は、調査方法として、購入しようとする際に情報提供を要しない旨の意志は表明しない」としたそうですが、症状を訴えたのか、もしくは○○下さいと指名買いをしたのかもわかりません。(厚労省もまさかシナリオくらいは自分でつくってから外部に委託したんでしょうね?)

    仮に、指名買いだとすれば、「使ったことがありますか?」と尋ねて、「ええまあ」と答えてしまったら、口頭での説明にとどまることだってあると思うんですよね。

    今回の調査対象は、「胃腸薬(H2ブロッカー、鎮痛痙攣薬)」「鼻炎・アレルギー内服薬」「外用消炎鎮痛薬」「解熱鎮痛薬」を対象としたそうですが、これに該当するのはおそらく、「ガスター10」「ザジテンAL鼻炎カプセル」「ロキソニンS」などが多く占めていると思うので、せめて薬効別の対応の違いくらいは示して欲しかったですね。

  3. こんな下らない調査に無駄な予算使うなと言いたい。大体、文書提供って言ったってちゃんと梱包されてるからいいんじゃないのか!既得権益死守の何ものでもない。そこまでしてやるんだっら処方箋へ戻したらどうだ?本末転倒です。それから店頭告知でも、使用者から情報提供不要の意思表示があれば適用しないとの表示も両方表示せよ(薬事法第36条の6の4)。

  4. しかし、薬局・薬店の比率は、薬局が約半数。
    そのうち日薬入ってるのは何割でしょう?
    日薬だけの問題じゃないって思いますけど。

    そもそも日薬は、冊子配っただけで、薬事法改正の講習会とか県でやってないでしょう。
    これだけ大きな問題であれば、開設者・開局全員参加で、何回か講習会すべきじゃないですかね?(うちの県だけだったらすみません)

    結果出ました。声明だしました。メール(FAX)しました。
    それだけで会員が改善はしないでしょう。
    周知徹底のやり方に問題あるって思いますけどね。

    でも、調剤報酬改定の直前にこんな話題・・・って思ってしまいましたね。考えすぎでしょうけど。