メトホルミン製剤、高齢者への投与はOK?

 1月20日、メトホルミン製剤のメトグルコ錠250mgが厚労省から製造承認を受けていることは既にご存じかと思います。(大日本製薬様リンクすみません)

経口血糖降下剤「メトグルコ」の製造販売承認取得について
 (大日本製薬株式会社プレスリリース 2010年1月20日)
 http://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20100120-2.pdf

 従来のメトホルミン製剤との違いは用法に食直前が加わったことと、1日最高投与量として2250mgが設定されたことですが、禁忌の項目を見ると、従来のメトホルミン製剤では腎機能・肝機能・高齢者に禁忌であったのが、メトグルコでは軽度の腎機能障害、軽度の肝機能障害、高齢者については慎重投与に変更になっています。

 メトグルコ錠添付文書→リンク

 メルビン錠添付文書→リンク
 メルビン錠250mg適正使用のお願い→リンク

  メトホルミン製剤の高齢者への禁忌は、高齢者は乳酸アシドーシスを起こしやすい状態として1978年3月の行政指導により設定されているのですが、現在、欧州の添付文書では「加齢によって腎機能が低下する可能性があるため、高齢者では腎機能に基づき本剤の投与量を調節し、定期的な腎機能の評価が必要である」となっていて、また米国でも「加齢によって腎機能が低下する可能性があるので、高齢者では慎重に用量を調整し、適切な血糖降下作用が得られる最小用量を確立する。特に80 歳以上の患者の場合には定期的に腎機能をモニタリングし、一般に最大用量を投与してはならない。」とされているなど、海外では高齢者は禁忌ではないそうです。

 メトグルコの承認申請にあたって同社では、高齢者と非高齢者の乳酸値を比較、差が認められなかったことから、腎機能等に低下がなければ本剤の投与は高齢者であっても可能と判断し、高齢者を「禁忌」から「慎重投与」に変更したそうです。(下記より引用)

資料:新薬の承認審査に関する情報 平成22年1月承認分(PMDAウェブサイト)
    http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/g1001.html

 既に糖尿病の専門医などは、高齢者であってもメトホルミン製剤を処方することがあり、疑義照会が求められることが少なくありませんでしたが、これで問い合わせをする必要がなくなるかもしれません。ただ、現在のところ同社のメルビンなど既存のメトホルミン製剤は添付文書の変更(禁忌の項目)は行われていないようです。

 本来なら既存製剤の添付文書の変更が行われるところだと思いますが、まさかトレリーフ錠のように、「高齢者はメトグルコを使え」ということにはならないですよね。

関連ブログ:メトグルコ錠250mgが新薬収載されるワケ
     (薬局のオモテとウラ 1月26日)
     http://blog.kumagaip.jp/article/34952849.html


2010年03月16日 15:42 投稿

コメントが4つあります

  1. 寺岡 章雄

    いつも貴重な情報をありがとうございます。
    「トレリーフ錠のように」というところがよくわからなかったのですが—

  2. アポネット 小嶋

    トレリーフ錠はご存じのように、パーキンソン病の治療薬として適応がある、ゾニサミド製剤ですが、最近まで適応外として使われていたエクセグラン錠との価格差が大きな問題となっています。

    しかもエクセグラン錠の添付文書には、「用法・用量に関連する使用上の注意」の項目で,「ゾニサミドをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には,パーキンソン病の効能・効果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること」と記載され、臨床試験を経て保険承認がされている薬がある場合には、適応外での(保険での)使用を事実上禁じています。

    TOPICS 2009.08.10 同一成分でも効能効果の違いで薬価の大きな開き

    今度のメトグルコ錠の場合も、トレリーフ錠と同じように国内臨床試験の成績等に基づくという理由で、もしかしたらメルビン錠など既存のメトホルミン製剤について、下記のような文言が追記されるのではないかと考えてしまいます。

    「投与量が1日750mgを超える場合、高齢者に投与する場合はメトグルコ錠を投与すること」

    つまり、「メトホルミン製剤を処方する場合は、エビデンスのあるメトグルコ錠を使いなさい」ということです。

    ピグアナイド系製剤を臨床的にどう評価するかにかかっていますが、アマリール3mg(51.9円)や、グルファスト10mg(53.4円)位の薬価が設定されるのではないかと予想しています。どうでしょう?

    製剤的にも同一ではないようなので、メトグルコ錠の薬価は当然、メルビン錠の薬価9.6円(2010.4~)より高く設定されることは間違いと思いますが、今度の場合適応症が同じですから、20円程度なら仕方ないと思いますが、あまり価格の開きがあると問題が出てくるかもしれませんね。

  3. 寺岡 章雄

    よく分かりました。
    ありがとうございました。

  4. アポネット 小嶋

    3月31日に開催された中医協で総会で、1錠9.9円の薬価が示されました。(4月16日収載予定)

    第170回中央社会保険医療協議会(2010年3月31日)
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/s0331-12.html

    資料(総-1)医薬品の薬価収載について
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0331-12a.pdf

    類似薬効比較方式ではなく、原価計算方式で薬価を算定したそうです。

    ちょっと気の毒のような気もしますが、メルビン錠(1錠9.6円)とどのように棲み分けするのでしょう。