メマリー錠学習メモ(Update)

 8日開催したアポネットR研究会は、第一三共さんにお願いしてメマリー錠についてについて学びました。(発売と偶然一致)

 今回も理解を高めようと下記サイトの資料にざっと目を通してから学習に臨み、いろいろな質問をしてみました。

 復習を兼ねて、上記資料も参考に研究会で学んだメモを示したい思います。

  • メマリー錠の成分であるメマンチン塩酸塩は、もともとドパミン遊離促進作用を主作用とするパーキンソン症候群治療薬としてドイツのMerz + Co. GmbH & Co.社(現:Merz Pharmaceuticals GmbH社) で開発され、1982年に「パーキンソン症候群」「集中力・思考力障害、意欲・自立性の低下、日常生活動作の障害、抑うつ気分などの症状を呈する軽度及び中等度の脳機能障害、又は認知症症候群」「脳・脊髄性痙性麻痺」などを適応に、まずドイツで発売された。(一部の国や地域で現在も販売が継続)
  • その後、メマンチン塩酸塩がドパミン遊離促進作用を示す濃度の約100分の1の濃度でグルタミン酸神経系のN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体チャネル阻害作用を有することが見いだされ、認知症に対する治療薬としての開発研究が開始された。
  • 2010年9月現在、「中等度から高度のアルツハイマー型認知症」などを適応に、Namenda®(米国)、Axura®、Ebixa®(EU他)などの名称で、世界70か国で販売されている
  • 構造式はアマンタジン塩酸塩(シンメトレル)と類似していて、アマンタジンにメチル基が2つついたもの(=ジメチルアマンタジン?)である。(知らなかったです)
  • 薬理作用は、NMDA 受容体に対しての低親和性の拮抗作用(活性化の抑制)で、過剰なグルタミン酸による神経細胞毒性及び記憶・学習に深く関与する長期増強(long-term
    potentiation:LTP)の形成障害を抑制し、記憶・学習障害などの症状の抑制作用が認められた。
  • アリゼプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)と作用機序が異なり、AchEI投与患者への上乗せ処方が可能であるが、AchEIからの切り替えは、AchEIの中止による影響があると考えられるので推奨されない。(併用時におけるいずれの薬物動態には影響はなかった)
  • また、メマリー錠とAchEIとの同時初回処方は理論的には可能だが、有害事象が発現した場合に原因薬の特定が困難となるので、あまり推奨はできない。
  • 一方、今後はメマリー錠から処方を開始し、症状を見ながらAchEIを上乗せするという処方パターンも今後は出てくる可能性がある。
  • 承認の効能・効果では、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症」となっているが、ADLや認知機能の評価スケールはさまざまなものがあり、中等度・高度の明確な定義はなく、程度の判断は医師の判断に委ねられる。
    (目安となる症状を表で列挙したものが用意されている。要支援2が中等度に該当するのではないかとの説明)
  • 単剤投与の臨床試験では聴力・視覚などの「注意」、箸の使い方などの「実行」、色や形の区別などの「視空間能力」、文章や会話の理解などの「言語」のスケールでプラセボと比較して有意差があった。
  • また、BPSD(認知症に伴う行動障害と精神症状。以前は周辺症状と呼ばれていたもの。今はこちらの用語が一般的)に対しては、行動障害や攻撃性の項目で有意差があり、イライラ感が強い人には有用かもしれない。
  • 1日2回投与は、臨床試験でのデータがないこと、半減期が長いこと、また海外では1日2回投与で有害事象が多かったというデータがあったことから、1日1回の投与が推奨される。
  • 中等度の肝機能障害患者ではメマンチンの薬物動態に影響を及ばさないことから、減量などの考慮は必要ない。
  • 中等度の腎機能障害患者では正常者と比べAUCが2倍に増加、また高度腎機能障害患者では腎機能の低下の程度に応じて腎排泄の遅延と血中濃度の増加が認めらることから、高度の腎機能障害患者では維持量は1日1回10mgに減量する。また、低体重患者についても減量を考慮する必要がある。
  • メマンチンは弱塩基性の薬剤のため、尿のpHがアルカリ性となると膜透過性がより高い非解離型の割合が大幅に増加し、尿細管から再吸収されやすくなり、腎クリアランスが低下する可能性がある。(つまり血中濃度が増加)
  • このため、尿アルカリ化を起こす薬剤(アセタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬、炭酸水素ナトリウムなど。会場より、一時ブームとなったクエン酸も考慮が必要ではないかとの声も)との併用は留意する必要がある。
  • メマンチンは薬物代謝酵素チトクロームPによる代謝を受けにくく、CYPに考慮した薬物相互作用の考慮は必要ない。
  • 一方、メマンチンの一部は尿細管の血管側膜に局在する有機カチオントランスポーター(OCT2)により分泌され排出される。
  • このため、同じ輸送系を介する薬剤(シメチジン、ラニチジン、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、メトホルミン、キニジン、ニコチンなど)と併用した場合、競合する可能性がある。(つまり血中濃度が増加。海外添付文書)
  • レボドパなどのドパミン作動薬の併用は、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗作用により、ドパミン遊離を促進させ、ドパミン作動薬の作用を増強させる可能性がある。
  • アマンダジン(シンメトレル)、デキストロメトルファン(メジコン)、ケタミンなどのNMDA受容体拮抗作用を有する薬剤との併用は相互に作用を増強させる可能性がある。(海外では、アマンタジンとの併用は避けるとの記載もあり)
  • 但し、これら血中濃度上昇時に、懸念される具体的な症状は明らかではない。
  • メマンチンにはメラニン親和性が認められている。反復投与時のヒトにおける涙液中の濃度が血漿中の濃度の2~4.7倍となる結果があるが、国内臨床試験において角膜・水晶体の状態に問題は認められなかった。
  • また、国内臨床試験では白内障や緑内障などの発症例も見られたが、これらは高齢者特有の事象であり、海外においても眼毒性に関する記載ががないことから、添付文書では注意喚起の記載は盛り込まれなかった。
  • 有害事象としては、投与開始時期に浮動性めまいが比較的多かったが、投与期間が長くなることで有害事象の発現割合が高くなる傾向は見られなかった。

 この間、Pubmed などで有害事象に関する論文をあたったのですが、特段問題になるようなものはなく、有害事象全体としても AChEIより少ないとの印象です。

 また、規格が5mg、10mg、20mgと多く、在庫については薬局泣かせですが、15mgまでは5mg錠で対応してもよいのではないかとのことです。(アリセプトのように14錠包装が欲しいな)

 おそらく有用性のある薬剤と思いますが、アリセプトとフルドーズで使用すると1日あたり1000円近くになるので、1割負担であっても患者さんにとっては結構な負担になると思います。

 また、「効果が認められない場合は漫然と投与しないこと」とはなっていますが、アリセプトと同様、投与中止のタイミングをどのようにしていくが現場の課題となりそうです。

2016.12.4 リンク更新


2011年06月10日 15:44 投稿

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