Explor Res Clin Soc Pharm.誌に、“Selfcare for Health System Sustainability: An International Series on the Role of Community Pharmacy”(医療システムの持続可能性のためのセルフケア~地域薬局の役割に関する国際シリーズ)で掲載された、スペインの取り組みを紹介したい。(Xに2024.02.11に投稿したものを再構成しました)
Development of self-care in Spanish community pharmacies
(Explor Res Clin Soc Pharm. 2023 Sep 26)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10568415/
スペイン全土に分布する22,198のコミュニティ薬局では、5万5千人以上の薬剤師が働いている。
スペインの医療制度では、セルフケアは個人が自分の健康を維持し、病気を予防するために重要な役割を果たす重要な要素であると認識されている。
セルフケアの概念は、2006年に法律に盛り込まれ、「非処方薬に関してもセルフケアの概念を盛り込むことが重要である」と指摘された。
これは、21世紀の社会状況に合わせて法律の文言を適応させる問題であり、そこでは、定められた条件のもとで、非処方薬の使用がより重要になるが、それは、責任あるセルフメディケーションに関連するすべての事柄において薬剤師の役割が不可欠である。
そして、医薬品の合理的使用の枠組みの中で実施されなければならない。
政府は、セルフケアを医療システムの不可欠な一部として推進し、個人が自らの健康とウェルビーイングに積極的な役割を果たせるよう、リソースとサポートを提供することに取り組んでいる。
2009年、保健省の支援を受け、「地域薬局におけるファーマシューティカル・ケア・フォーラム」(Foro AF-FC, “Foro de Atención Farmacéutica en Farmacia Comunitaria”)が設立され、2022年には、Practical guideの中で地域薬局におけるサービスを大きく2つのカテゴリー(ファーマシューティカル・ケアと地域保健関連)を規定した。
Foro de Atención Farmacéutica en Farmacia Comunitaria
https://www.farmaceuticos.com/farmaceuticos/farmacia/farmacia-asistencial/foro-de-atencion-farmaceutica/
Practical guide to Clinical Professional Pharmacy Services (CPPS) in Community Pharmacy(2022)(English)
https://www.farmaceuticos.com/wp-content/uploads/2021/02/ON_GUIA_SPFA_FORO_2022_ING_PGs.pdf
Pharmaceutical Care Services には、軽度の疾患サービス(The minor ailment service)、アドヒアランス管理サービス(The adherence management service)が含まれる。
軽度の疾患サービスは、軽症患者に対して適切な薬理学的・非薬理学的治療を選択したり、患者自身が薬を選択する場合にはセルフメディケーションを評価したりすることを可能にしている。
上図のとおり、この手順は次の 4 つのステップで構成されている
- 患者へのインタビュー
- 情報の評価
- インシデントが発生した場合の履⾏または介入
- サービスプロセスの記録と評価。
このサービスには公的保険から報酬は支払われないが、提供される薬や製品の利益によって利益が得られる。
薬代は全額患者負担であるため、薬理学的なアドバイスやトリアージ以外の相談については、報酬は発生しない。
また、The International Self-Care Foundation が掲げる、7つの柱に基づくサービスも提供されている。
地域薬剤師と一般開業医の間で、軽症患者の管理に関するプロトコールが合意されていて、サービス効果の評価が行われている。
また、軽症患者をトリアージする際に薬剤師を支援する機械学習アルゴリズムが開発されている。
アドヒアランス管理サービスは、患者が服薬管理最適化能力を向上さている。
スペインの研究では、高血圧、喘息、慢性閉塞性肺疾患の患者の服薬アドヒアランス、臨床転帰、QOLを改善するために、このサービスが有効であることが示されている。
さらに各種疾患のスクリーニングも行われおり、高血圧や糖尿病、脂質異常症の他、癌やcovid-19、梅毒やHIVについても行われている。
日本でも地域薬剤師が行うこういったプロフェッショナルサービスについて、体系的にまとめたガイダンスが必要だと思いました。
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2009.01.03 薬局を活用したHIV無料検査の試行事業を開始(スペイン)(リンク切れ)
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2025年06月07日 14:01 投稿