沖縄のアタマジラミにはスミスリンが無効らしい

 以前、スミスリン製剤耐性タイプのアタマジラミが急増しているという話題(TOPICS 2009.02.16)を紹介ましたが、アタマジラミの殺虫剤(スミスリン)抵抗性の全国調査を行っている国立感染症研究所昆虫医科学部(http://www0.nih.go.jp/niid/entomology/)が、沖縄県ではアタマジラミの多くがスミスリン製剤耐性タイプであることを明らかにしています。

アタマジラミ駆除剤抵抗性についての全国調査結果
(国立感染症研究所昆虫医科学部第三室 2012.07.11)
http://www0.nih.go.jp/niid/entomology/headlice/headlice.html

アタマジラミのピレスロイド系駆除剤抵抗性
(厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)分担研究2011年度報告書)
http://www0.nih.go.jp/niid/entomology/headlice/manuscript/2011kouseikaken.pdf

 研究所では保護者や医療機関等からの死んだアタマジラミの試料を提供していもらい、抵抗性に係わる遺伝子を検出する方法で薬剤抵抗性を調べています。

わが国におけるアタマジラミのピレスロイド系駆除剤抵抗性の発達状況
(IASR 31(12) p352-354,2010)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/370/dj3703.html

 その結果、沖縄県を除く全国のアタマジラミのピレスロイド抵抗性コロニー率は5.0%と推定された一方で、沖縄本島におけるアタマジラミのピレスロイド抵抗性コロニー率は96%であると推定され、日本本土における率に比べて顕著に高かったそうです。

 つまり、沖縄のアタマジラミにはスミスリンは効かないということを意味しますが、既に沖縄の保護者の間ではこのことが知られているのか、有効性や作用性の明らかでない未認可の薬剤商品などが代わりに利用されているケースも散見されるいるそうです。(ググると確かに出てくる)

 研究者らは、耐性アタマジラミ(ピレスロイド抵抗性コロニー)が蔓延している理由として、沖縄本島に国内最大の米軍基地があることに着目し、海外から耐性アタマジラミが持ち込まれていることを示唆しています。(外国では日本以上に耐性アタマジラミンが蔓延。だからといって、そのすべてが米軍とその家族が持ち込んだというのもどうだろうか。そうであれば、外国人の流入が多い都市でも多いと思うのだけど)

 下記論文などによれば、海外ではジメチコンの溶液やエッセンシャルオイルの外用が用いられる他、イベルメクチンやアルベンダゾール、ST合剤などの内服をする場合もあるようで、研究者らも新規アタマジラミ駆除薬の早急な導入が必要であるとしています。

関連論文:
Pediculosis capitis: An update.
Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2012 Jul;78(4):429-38.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22772612
Current treatments for pediculosis capitis.
Curr Opin Infect Dis. 2009 Apr;22(2):131-6.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19283911
http://journals.lww.com/co-infectiousdiseases/Fulltext/2009/04000/Current_treatments_for_pediculosis_capitis.8.aspx

関連情報:TOPICS
 2009.02.16 スミスリン製剤耐性タイプのアタマジラミが急増
 2008.04.25 アタマジラミの集団発生にどう対応するか

参考:
QLife Pro 2012.07.27
http://www.qlifepro.com/news/20120727/smiling-drug-resistant-occurs-in-okinawa-is-due.html


2012年08月07日 23:11 投稿

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