生活者にとって薬の専門家は誰?(米国調査)

 米国では地域薬局の薬剤師活動の理解と社会の評価は高いと思っていましたが、Int J Clin Pharm 誌に発表された調査結果を見ると、普段薬剤師が行うべきと考える業務のいくつは、薬剤師の熱意に関わらず、生活者には必ずしもまだ十分理解されていないという現状を垣間見ることができます。

Pharmacy Patrons’ Awareness of Pharmacists’ Education and Routine
Patient Care Responsibilities
Int J Clin Pharm. 2011 Jul 22. [Epub ahead of print] オープンアクセス)
http://ejournals.library.ualberta.ca/index.php/JPPS/article/view/9840

 この研究は西バージニアのMorgantownという地域の9薬局17人の薬剤師と、229人の薬局利用者を対象に行われたアンケート調査で、下記の11の日常的な薬局業務(RPCS:routine pharmacy care services)の提供の責任について、「医師と薬剤師」「医師だけ」「薬剤師だけ」「どちらともいえない(not sure)」の4つの選択肢で選んでもらうとともに、これらをを行う頻度についてそれぞれ尋ね、薬剤師と生活者との薬局業務への認識の違いを比較しています。

 routine pharmacy care services 薬剤師の回答
(N=17)
薬局利用者の回答
(N=229)
Educate patients about how to use medication correctly 医師と薬剤師(82.4%)
薬剤師だけ(17.6%)
医師と薬剤師(77.3%)
薬剤師だけ(10.5%)
医師だけ(11.8%)
Counsel patients about medication side effect and possible interaction 医師と薬剤師(58.8%)
薬剤師だけ(41.2%)
医師と薬剤師(69.3%)
薬剤師だけ(19.3%)
医師だけ(9.6%)
Provide patients with written information about their drugs 医師と薬剤師(23.5%)
薬剤師だけ(76.5%)
医師と薬剤師(32.9%)
薬剤師だけ(59.2%)
医師だけ(7.5%)
Remind patients when medical or lab tests are due 医師と薬剤師(35.3%)
医師だけ(64.7%)
医師と薬剤師(12.3%)
医師だけ(83.1%)
薬剤師だけ(1.8%)
Help patients to select nonprescription (OTC) products 薬剤師だけ(70.6%)
医師と薬剤師(23.5%)
医師だけ(5.9%)
薬剤師だけ(50.9%)
医師と薬剤師(39.9%)
医師だけ(7.0%)
Identify the best prescription therapy for patients 医師と薬剤師(58.8%)
薬剤師だけ(11.8%)
医師だけ(29.4%)
医師と薬剤師(44.1%)
薬剤師だけ(9.2%)
医師だけ(44.1%)
Take steps to adjust patients’ drug therapy (if needed) 医師と薬剤師(82.4%)
医師だけ(11.8%)
薬剤師だけ(5.9%)
医師と薬剤師(30.1%)
医師だけ(61.1%)
薬剤師だけ(3.5%)
Answer patients’ questions about their drugs 医師と薬剤師(70.6%)
薬剤師だけ(29.4%)
医師と薬剤師(69.4%)
薬剤師だけ(27.1%)
医師だけ(3.5%)
Answer patients’ questions about their medical condition 医師と薬剤師(64.7%)
医師だけ(29.4%)
薬剤師だけ(5.9%)
医師と薬剤師(24.2%)
医師だけ(73.5%)
薬剤師だけ(2.3%)
Help patients better manage their medical conditions 医師と薬剤師(88.2%)
医師だけ(11.8%)
医師と薬剤師(33.8%)
医師だけ(62.7%)
Advise patients about healthy living and preventing disease 医師と薬剤師(82.4%)
医師だけ(5.9%)
薬剤師だけ(5.9%)
医師と薬剤師(39.7%)
医師だけ(55.9%)
薬剤師だけ(1.7%)

 上記を見ると、全体的に薬剤師が「薬剤師中心」「医師と薬剤師協働」の仕事と思っているもののうちいくつは、医師(だけ)の仕事とも思っている薬局利用者が少なくないことがうかがえます。(OTCも医師がというのが多いのは意外。OTCを処方薬代わりに使っているのでしょう。生活指導などは、薬剤師よりも医師という考え。)

 一方、PRCSが必要とされる頻度については、くすりについての情報提供や疑問への対応については高いという結果が得られています。

 一地域での調査であり、またサンプル数もそれほど多くないので、この結果が直ちに全米の傾向を表したものではありませんが、総じて米国のこの地域では、薬の専門家は薬剤師だけではなく、医師に対し、より大きな信頼を寄せているといえます。(日本でも簡単にできそうな調査。結果はどうなるでしょう?)


2011年08月15日 16:08 投稿

コメントが1つあります

  1. 面白いですね。

    薬局利用者の意識調査から垣間見られる、薬局当事者と利用者のギャップ

    色々なトラブルの幾つかは、そういったところから起こっているのかも知れません

    読売新聞の発言小町を読んでみたり、種々のクレーム事項に対応しているとそのように感じる時があります

    薬剤師が思うように、薬局利用者が思ってくれるような 又逆も

    独りよがりにならないための方策

    それを模索してみないといけないのかも知れません