2012年度の厚労省の方針(関係部局長会議)

 19、20日の2日間にわたり、都道府県などの担当者に2012年度の厚労省の方針を説明する全国厚生労働関係部局長会議が開催されています。

 資料が、厚労省のウェブサイトに掲載されています。ざっと目を通したところ、これまでの報道等の詳細を知ることができましたので、私たちに関係の深い分野についていくつか紹介します。とりあえずは、医薬食品局の部分で目に留まったところを抜粋しました。

平成23年度全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)資料
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/01/tp0118-1.html

 プレゼンテーションスライド→PDF1 [1,595KB]、 PDF2 [1,757KB]

1)在宅医療の推進(無菌調剤体制整備)について

   プレゼン資料 [7-8ページ]、詳細資料 [9ページ]

  • がん患者等の在宅医療を推進するため、高い無菌性が求められる注射薬や輸液などを身近な薬局で調剤できることよう、他の薬局の無菌調剤室の利用を可能とする体制の構築が必要。
  • 都道府県等に対しては、在宅医療の推進に向けて、地域の他の薬局の無菌調剤室を利用した無菌調剤体制の適切な構築と運営に協力を要請。

コメント:
 今回モデル事業がうまくいくといいけど。でもこれを果たして、全国に広げることが可能なのでしょうかね? 会営薬局があるところはいいけど、会営薬局がない地域はどうするんでしょうね。県などが新たに公的薬局開設の後押しを考えているのでしょうか?

関連情報:TOPICS
 2011.12.26 無菌室の共同利用に関するパブコメ
 2011.11.14 過疎地における医薬品供給は誰が担うか?

2)医薬品・医療機器等の安全対策の強化

   プレゼン資料 [19-26ページ]、詳細資料 [9ページ]

1.医療情報データベース基盤整備事業について

  • 現在の自発報告による副作用報告制度においては、①副作用の発生頻度が把握できない、②類似薬との比較が困難、③罹患している病気による症状との区別ができないなど、得られる情報に限界がある。
  • このような問題に対処するため、大規模な医療データを薬剤疫学的手法により、医薬品・医療機器の安全対策に活用する研究が国際的に進められている。
  • 平成23年度より開始した、1,000万人規模のデータを収集するための医療情報データベースの構築とPMDAに情報分析システムを構築する事業を2012年度も継続する。

2.医薬品リスク管理計画の導入に向けた取り組み

  • 医薬品のリスクを最小にするため、得られた知見に基づいて、安全性上の検討課題(安全性検討事項)を明らかにし、必要な情報を収集するため、市販後臨床試験、市販直後調査、使用成績調査等の調査を計画する(リスク監視計画)とともに、患者向医薬品ガイドの作成などリスクを最小化するための方策(リスク最小化活動) を講じる。
  • 「医薬品リスク管理計画」の策定を制度として確立するため、導入のための検討を進める。2011年4月には、「医薬品リスク管理計画」ガイダンス案を公表し、パブリックコメントを募集している。
  • 今後はパブリックコメントを踏まえ、制度導入に向けて、現行の「医薬品、医薬部外品、 化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準」(GVP)及び「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準」(GPSP)との関係の整理、具体的なモデ ル計画書の作成などの検討を進める。
  • 来年度早期にはガイダンスを通知し、一定の周知・準備期間を設けて導入することとしている。

3.患者からの副作用報告制度の導入の検討

  • 厚生労働科学研究「患者から副作用情報を受ける方策に関する調査研究」(研究代表者慶応義塾大学薬学部望月眞弓教授)が進められている(http://rx.di-research.jp/、調査研究は12月28日に終了)
  •  この研究成果を踏まえ、今年度中に、PMDAにおいて、患者からの副作用報告を受け付ける仕組みを試行的に開始する予定
  • 都道府県に対しては、 制度の試行、実施に際しては、機会をとらえて、広報など周知に協力を要請

コメント:
 いよいよ、日本でも海外並みに規制当局が主体となって、患者さんからWEBを通じて直接副作用の情報の収集を開始するようです。厚生労働科学研究の結果も注目ですね。でも副作用情報を収集するのはいいけど、その内容について詳しく私たちが知ることができる仕組みも併行して検討しているのでしょうか?

関連情報:TOPICS
 2011.01.11 副作用自発報告システムの実証研究が始まる
 2009.10.25 生活者からの副作用自発報告システムは日本でも必要(国内研究)
 2009.01.10 患者副作用直接報告は、医療専門職からの報告を補完する
 2008.02.19 イエローカードオンライン副作用報告システムが本稼動(英国)
 2007.04.07 Adverse Medicine Events Line(豪州)

4.一般用医薬品のリスク区分の見直し

  • 一般用医薬品に関する新販売制度が施行(平成21年6月)され、一定期間が経過したことから、副作用等の報告状況や報告内容等を評価し、各リスク区分に分類されている一般用医薬品について、リスク区分の見直しを行うこととし、平成22年度より検討を進めている。
  • リスク区分制定当初は、「成分単位」でリスク区分が行われたが、「製剤単位」でのリスク評価も踏まえて、見直しを行っている。
  • まず最初に、配合剤としての配合パターンが比較的簡単な生薬製剤の見直しを行い、次に漢方製剤の見直しを実施した。
  • 平成23年9月に生薬製剤にかかるリスク区分の見直し結果に基づき、また、平成23年12月には漢方製剤にかかるリスク区分の見直し結果に基づき、告示の改正を行った。
  • 今後は、化学薬品を含有する一般用医薬品について、情報の整理を行ったうえで、平成24 年度より見直しを行う予定。
  • また、漢方製剤については、症状・体質などに応じて処方を選択することが必要であること、症状・体質にあっていない処方を選択した場合等には日常生活に支障を来す健康被害を生じるおそれがあることから、購入、使用に当たって適切な処方の選択が行われることを確保することが重要であり、平成24 年度以降、必要な調査研究を行って、対策を検討することとしている。

コメント:
 個人的には、海外のように包装数についても検討をして欲しいですね。

関連情報:TOPICS
 2011.12.26 アンブロキソールのリスク区分変更などが告示
 2011.09.30 ザジテンAL点眼薬などのリスク区分変更が告示

3)監視指導・麻薬対策の取組について

   プレゼン資料 [1-7ページ]、詳細資料 [29-35ページ]

偽造医薬品等の情報収集及び情報提供の体制づくり

  • ドラッグラグ等により、海外で販売されている国内未承認薬への関心の高まりがある中で、偽造医薬品(ニセ薬)、指定薬物などを消費者が知らずに購入し、健康被害にあう事例が発生している。
  • 個人輸入される医薬品・指定薬物、麻薬等に関し、消費者に訴求力のある新たなHP等を開設する。
  • 不正な医薬品の輸入や個人輸入される医薬品・指定薬物等による健康被害の情報 などを収集し、消費者や医師等に対する注意喚起や不正な輸入の監視を効果的に行うためのホットライン(コールセンター業務委託)を設置する。
  • 国際的ネットワークを活用しつつ、製薬企業、厚生労働省等政府関係機関、地方公共団体等からなる協議会を設置し、情報を共有化するとともに、偽造医薬品等の効率的な監視、消費者に対する情報提供、啓発など、官民が連携 して偽造医薬品等の流通防止の対策を進める。

コメント:
 日本でも、ようやく本格的な偽造医薬品対策がとられるうようです。どこが業務委託するのでしょうね? また、(個人)輸入のダイエット食品などはここでとりあげるのでしょうか? 結構健康被害が多いと思うんだけど。

関連情報:TOPICS
 2011.11.17 危険です!医薬品等の個人輸入(政府広報)
 2011.07.01 ED治療薬、ネット購入者の4割が有害事象を経験
 2011.04.27 医薬品個人輸入の危険性
 2010.02.14 日本における個人輸入の実態とネット販売規制の国際的動向
 2009.11.06 ネットでの医薬品購入は危険(英国キャンペーン)

4)医療用麻薬等の提供・管理体制の整備

 プレゼン資料 [8ページ]、詳細資料 [97-98ページ]

  • (財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターと共催で、各都道府県を含む関係団体の協力を得て、医師、薬剤師等の医療関係者等を対象とした「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会」を各地で開催している。
  •  医療機関等における麻薬等の管理・取扱いについて周知するため、昨春以降、「病院・診療所における麻薬管理マニュアル」等の改訂を行うとともに、麻薬小売業者(薬局)間譲渡許可の許可基準等を明確に示す通知を発出している。
  • 近年、医療機関における医療用麻薬等に関する違反事例が散見されており、昨年6月には医療機関における医療用麻薬等の適正使用及び管理の徹底を図る通知を発出した。
  • 麻薬管理者・麻薬施用者が医療用麻薬の適正使用・管理についてその場で確認できる小冊子「医療用麻薬適正使用ガイダンス」について、現在、在宅ケアに関する内容等を追加する改訂を検討中。
  • 在宅医療の推進を図るため、平成24年度に、オンラインシステムを活用して地域医療機関からの麻薬処方せんの交付や薬局間の麻薬の融通を円滑に行うモデル事業の実施を予定している。

コメント:
 これからは、オンラインで在庫情報の共有が必要ということか。地元でもWEB上で在庫情報を確認したり、訂正・追加ができるシステムを試験運用しているのですが、麻薬については実在庫数のデータも盛り込む必要があるかも。(モデル事業で使ってくれないかなあ) それでもデットストックとかも発生することは悩みの種です。譲渡許可のグループはもう少し緩和する、または行政主導でグループ化するなどの対応策もあっていいと思う。


2012年01月21日 17:44 投稿

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