過疎地における医薬品供給は誰が担うか?

 医薬品のネット販売の是非でいつも引き合いに出される、離島や過疎地における医薬品供給を誰が担い手となるかという問題ですが、北海道では、道の支援の下、北海道薬剤師会が拠点となる「地域医療支援センター薬局」を札幌に設置し、さらに、道北、道南、道東、十勝、オホーツクの各地方に抗がん剤も調剤できる基幹薬局を整備、ここから無薬局地域の患者宅に薬剤師を派遣するという検討が行われているそうです。

読売新聞・北海道版11月9日
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20111108-OYT8T01417.htm

毎日新聞・北海道版11月9日
 http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20111109ddlk01040208000c.html

 北海道保健福祉部の調査によれば、北海道内では調剤薬局がない町村は31もあり、うち12町村では一般用医薬品を販売する店舗も存在しないとのこと。

 採算などを考えれば、いくら大手でも出店をためらうのはわからないわけではありませんが、無薬局地区を作ることは、やはりネット販売の正当性を後押ししかねません。

 「過疎地に診療所はあっても薬局はない」という状況をなるべく少なくすることは必要であり、今回の行政のサポートと薬剤師会の協力は薬局の公共性という観点から重要な試みなどと思います。

 過疎地の薬局というと、すでにご存じの方も多いかと思いますが、徳島県美馬市木屋平地区で地域薬局活動を行っている、NPO法人「山の薬剤師たち」の取組は特筆するものがあります。

NPO法人山の薬剤師たち
 http://tokushimanpo.bokunenjin.com/yama_no_yakuzaishi/

 活動の詳細は上記サイトを参考にして頂きたいのですが、下記サイトでも紹介されています。

地域医療再生へ薬剤師たちの活動
(月刊地域づくり 2011.11 第269号)
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/book/monthly/1111/html/f10.htm

薬剤師としてへき地医療に取り組む
(エーザイ・New Movement for Pharmacy リンクすみません)
http://www.eisai.jp/medical/region/phar/nmp/management/mng036.html

 こちらは、徳島文理大学薬学部医療薬学講座在宅・地域薬学研究室徳島文理大学の研究室がサポートしています。

 大学のサポートというと北海道薬科大学の大学の研究室の夕張研究室の取組(夕張市立診療所での研修)なども知られていますが、地域薬局として独立した取組としては、まだほとんどないのではないでしょうか?

 住みよい地域社会を目指した活動としても、いくつもの賞を受賞されています。

とくしまNPO賞 表彰式が開催されました
 http://www.pref.tokushima.jp/docs/2011083100066/

平成23年度あしたのまち・くらしづくり活動賞決定! 受賞団体の活動概要
 http://www.ashita.or.jp/prize/23/23summary.htm

 上記の評価理由を見ると、

  • 過疎高齢化地域における薬剤師、薬局による地域・地域住民の見守りという新しいチャレンジにより、地域の高齢者の安全、安心に貢献している。
  • 看護師の本来の業務を向上させるとともに、地域外の医療関係者との交流を行うことにより、より広い地域での連携が生まれることが期待される。
  • 過疎地域の医療問題に薬剤師・薬局を動員し、新しい可能性を提示している。
  • 医療活動に携わる資格を持つプロとして、自分の「殻」を破り積極的に地域を支えようとしている。

 ことなどが取り上げられ、地域の中における薬局の役割というものは何かと考えさせられます。(といっても都会と地方都市における薬局の役割はまた違いますが)

 私も過疎地における医薬品供給は、地域住民の健康づくりにも貢献するこういった薬局が担うべきと考えますが、こういった(医療)過疎地などで薬局活動を可能にするためには、経営・人材などにさまざまなサポートは欠かせません。

 そして行政や薬科大学がサポートしつつ、こういった場に多くの薬剤師が進出し、新たな活動の展開も期待されます。

参考:
読売新聞徳島版11月13日
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20111112-OYT8T00752.htm


2011年11月14日 00:01 投稿

コメントが1つあります

  1. 私の薬局は市の中心部から20km以上あり、町内も限界集落になりつつある、過疎地域です。

    実際やっていて感じるのは、医療機関はきちんと過疎対策をしてますが、開設許可(医師数なども特例があったと思います)や、特例の診療所(巡回)などがありますが、薬局には全くありません。
    それどころか、麻薬の小分けや施設基準にしても街中と同じ基準ですが、15分や20分では近隣薬局などありません。
    しかし、休日夜間の営業時間お構い無しに患者さんやお客さんは来ます。
    でも、卸さんは平日の午後ですら、なかなか薬の配送をしてくれません。家族が往復40km以上かけて卸まで取りに行って、薬を配達して対応します。下手すると1人作るのに4時間かかってしまいます。

    ご紹介いただいたNPOなどは、診療所があるからやって行けますが、個人の薬局では、勤務してくれる薬剤師がいないし、薬事法改正(常勤)で、どんどん厳しい状況になっています。
    こういう状況を薬剤師会も、医師会のようにきちんと把握して欲しいと願ってきました。

    すみません、半分愚痴のようですが、昔は地域でも薬店が3件ありましたが、それも後継者がいなくて閉めて行ってます。
    色々な問題をきちんと分析し解決して欲しいと思います。