生保医療、後発品利用促進の検討必要(提言型政策仕分け)

 23日、内閣府・行政刷新会議の「提言型政策仕分け」(http://sasshin.go.jp/)で、社会保障分野として、「なぜ生活保護費が増えているのか。何に使われているのか~生活保護医療の適正化策はどうあるべきか。」が取り上げられています。

社会保障:生活保護の見直し(生活保護医療の見直し等)
  http://sasshin.go.jp/shiwake/detail/2011-11-23.html#B5-6

Ustream.tv 録画(1時間16分10秒頃~42分0秒頃、1時間51分~の後半の部分が興味深い)
 http://www.ustream.tv/recorded/18691183

 評価結果もアップされています。→ PDFファイル(生活保護医療の適正化策はどうあるべきか。)

とりまとめ(提言)

 生活保護費の急増の要因は、その半分を占める医療扶助である。真に必要な方への医療水準は維持しつつ、以下に掲げる対応を含むあらゆる方法を通じて適正化に取り組むべき。

  1. 指定医療機関に対する指導強化
  2. 後発医薬品の利用促進やその義務付けの検討
  3. 翌月償還を前提とした一部自己負担の検討

 さらに、医療機関のモラルハザードが大きいことから、実態調査の仕組みを構築し、不適切な診療を行っている機関は指定を外すなどの厳格な対応を行うべき。

 論点 財政当局提案 仕分け人の評価
生活保護医療の適正化策はどうあるべきか。 生活保護医療は、全額税負担で自己負担が一切ないため、患者と医療機関の双方にモラルハザードが生じやすいことを踏まえ、後発医薬品の促進など生活保護医療の適正化を強化するべきではないか。 給付の適正化の観点から(翌月償還を前提とした)一部自己負担の検討をすべき (8名)
指定医療機関に対する指導強化、後発医薬品の利用促進などを通じて適正化すべき (10名)
現状維持 (0名)

主な意見

  • 医療機関のモラルハザードが大きい。調査のしくみと検査をしっかり行うことが重要。
  • 一部自己負担の検討については、試行的に医療扶助の多い自治体からはじめてみてはどうか?
  • 指定医療機関の精選と関係するが、ジェネリックの利用を基本とし、ブランド品を用いるには医師に理由書を書かせるべき。
  • 生活保護受給者の健康を守り、適切な生活指導、服薬指導等を行なうためにも、指定医療機関を精選すべき。これは患者のアクセス制限にはならない。通院費も保護費に含まれている。フリーアクセスのため、かえって通院費が高くなっていないか検証すべき。
  • ①医療費の多くが高齢者が占める現状、②生活習慣に問題を抱えていることを勘案すれば、予防医療(生活習慣病対策)、受診指導の徹底が不可欠。かかりつけ医と保険者機能を活用することが一案。
  • 一般制度を活用することを前提にするのではなく生活保護世帯に重点的な生活習慣病対策、受診指導が必要。
  • “かかりつけ医”を義務化して、定期的にかかりつけ医の診療行為をチェックする。自治体は適正なかかりつけ医のリストを作成する。
  • 救急の場合はどの医療機関にかかってもよいが、慢性の場合は家庭医、かかりつけ医にまずかかってアクセスコントロールをすべき。(自立支援プログラムに明示的にくみこむ。)
  • 指定医療機関をより限定し、不適切な診療を行う機関は指定を外すなどの厳格な対応を行う。
  • 後発医薬品を原則使用することにすべき。
  • 介護保険(特に65 歳以上)の対応を参考に、医療についても現行の対応(保険に入らず自己負担ゼロ)を早急に改める。
  • 生活保護医療は自己負担がないため、過大な医療支出につながる。一部自己負担を導入すべき。
  • 生活保護医療に関しては後発医薬品を義務付けること。
  • 一定以上の疾病のある方、障害者等を除き定額の一部自己負担を導入する。
  • 指定病院制度をより適切に運用する。
  • レセプトの全面電子化を早急に達成し、不正受給が行われない仕組みを作る。
  • 生活保護費の支給の適正化(減額)との兼ね合いの中で一割程度の負担を検討(但し、傷病、障害者、後期高齢者等に分けてていねいに検討)
  • 後発医薬品の利用率が生活保護者の方が非生活保護者よりも低いのは問題。非生活保護者と同様、後発医薬品の利用目標を設定し、ロードマップ等を示されたい。
  • 指定病院については、より厳格な指定基準を設け、生活保護者の受診に支障のない範囲で絞り込むことも検討する。
  • 特殊疾病を持つ受給者を除き、医療費実績に基づき、1割負担、2割負担を課すべき。
  • 特殊疾病を持つ受給者を除き、原則後発医薬品利用を義務付けるべき。
  • ジェネリックの義務付けを検討すべき。

 議論では、仕分け人から、厚労省論点2ページcの資料を基に、「受診率や医療費について、高齢者では生活保護者の一般ではあまり変わらないのに、60歳以下の人では受診率、医療費共に高くなっている」(コメント:若い人の場合病気で働けない人もいるという事情も考慮する必要があるかもしれない)、また「未だ、不正受給や過剰診療が後を絶たない現状もある」と指摘し、患者を連れさえすれば儲かる可能性がある仕組みを見直す必要があると指摘、指定医療機関をより限定したり、後発医薬品の使用を原則とすべきとの意見が出されています。(医療機関のモラルハザードの可能性については仙石氏が厳しく指摘)

 また仕分け人から、生活保護者への後発品使用義務付けすべきではないかとの指摘については、厚労省の担当者は「現在の医療は制限医療ではない」ことを強調しましたが、それ以上はなかなか歯切れのよい回答ができませんでした。

 生活保護医療に限らず、自己負担額に影響を及ばない処方については、薬局でも後発品への変更にしにくい(あえて変更する必要がない)という現状は事実であり、公費患者にも後発医薬品を使用を促進する場合には、保険上何らかな仕組み作りは必要ではないかと思います。(薬局では、患者さんの実支払額で後発品に変更するか否かを見てしまうので、現実にはかなり難しいけど。変更が可能な後発品を使用したら自己負担なし、処方通りだったら後で返金の一部自己負担、公費患者に後発医薬品を処方した場合には点数をつけるとかのインセンティブも必要かも) 

関連情報:TOPICS 2011.03.04 生活保護における医療扶助の適正化


2011年11月23日 23:29 投稿

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