ライフイノベーションWG、調剤基本料の24点への統一を求める(Update)

 22日、行政刷新会議、規制・制度改革に関する分科会のライフイノベーションWGの第9回会合が行われ、調剤基本料の一元化や医療用医薬品の医療機関及び医薬品・医療機器の広告の原則自由化、OTC医薬品のインターネット販売規制の緩和など、医療・介護・保育の各分野で改革を進めていく上で検討すべき項目として挙がった39の項目を了承したそうです。

第9回ライフイノベーションWG(2010年12月22日開催)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/life/1222/agenda.html

議事録(2011年2月16日掲載)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/life/1222/summary1222.pdf

資料2 検討項目一覧
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/life/1222/item_101222_02.pdf

資料3 規制・制度改革検討シート
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/life/1222/item_101222_03.pdf

 注目の調剤基本料の一元化については、TOPICS 2010.11.24 で「最悪、24点への一元化、さらには点数の引き下げもあるかも」と指摘しましたが、やはりWGとして24点への1元化で一致したようです。

 厚労省では、WGの問い合せに対し、

  • 調剤基本料は処方せんの受付一回につき40点を基本としているが、受付処方せん数が多く、かつ特定医療機関からの処方せんの集中率が高い(処方せんの受付回数が月4,000 回超、かつ特定医療機関に係る調剤の割合が70%超)一部の薬局(約1%程度)は、例外的に低い点数(現在は24点)設定とされている。
  • これは、特定の医療機関からの処方せんを多く、かつ集中的に取り扱うことができる一部の薬局では、類似の処方せんの受付が多くなり、医薬品の在庫管理が効率的に行えるなど経営効率が高いことによるものである。これに対し、多数の医療機関からの処方せんを受けている薬局においては、幅広い種類の医薬品在庫をそろえる必要がある等、このような経営の効率化は困難である。
  • 従って、仮に調剤報酬を24 点に一元化した場合、多数の医療機関からの処方せんを受けている多くの薬局の継続が困難になる可能性がある。

とした見解を伝えたものの、WGでは次の点を理由として、次期診療報酬改定で調剤基本料を24点に一元化することを検討すべきとしています。

  • 保険薬局の調剤基本料は原則40 点であるが、受付回数4,000 回超・特定医療機関からの集中率70%超の薬局は24 点となっている。しかし、その質的な差は認められない。むしろ、疑義紹介率および調剤ミス発見率、さらには時間に関する患者満足度などはいわゆる「門前薬局」の方が高いとの調査結果がある。
  • 多数の医療機関から処方せんを受け付ける薬局のほうが、いわゆる「門前薬局」よりも質が高ければ合理性があるが、逆の結果が出ている調査結果もある。であれば、配慮すべきは薬局の経営ではなく、患者から見た合理性である。
  •  現に、病院と診療所の再診料は今次の診療報酬改定で統一されたところである。
  • 薬剤費適正化の観点から、かりに240 円に統一したとすると、最新の公表値である平成21 年度の処方せん受付回数で計算して、年間約978億円の節減となる。

 また、川渕委員はWGに、平成21年6 月に実施された医療経済実態調査を引用し、保険薬局の利益率は6.0%(個人7.7%、法人6.0%)と病院に比べてすこぶる良好で、仮に調剤基本料を24 点に一元化したとしても、実質1.8%(978 億円÷薬局調剤医療費53,955 億円×100)の値下げで、薬局の継続も可能」といった意見を示しています。

項目10「調剤基本料の一元化」に関する担当府省からの回答に対する反論(参考資料2)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/life/1222/item_101222_10.pdf

 やはり、川渕委員は増大を続ける医療費全体の中で、調剤薬局だけが企業化し、拡大していることに対して、相当の違和感を持っているのでしょう。

 今後、日薬の合理性ある反論が期待されるところですが、調剤ポイントの付与(上記反論でしっかり引用)や薬局の賃料に毎月367万円も払える(TOPICS 2010.12.21)という現実があることを考えると、逆に批判を浴びそうな気もしますね。

 一方、患者さんからみた合理性を考えるのなら、私は患者さんから見てもわかりずらい調剤報酬の算定の仕組みと自己負担のあり方を改めるべきだと思います。以前にも指摘したように、私は「薬剤費+日数による定額負担」といった仕組みにすることの方がよいと考えます。

 なお、CBニュースによれば、「DPC制度の改善」については、委員の間で意見が分かれたため、結論を先送りとし、メンバーを絞って再検討することになったそうです。

 来月に行われる、規制・制度改革に関する分科会として、これら項目が正式に承認されれば、今後関係省庁との折衝に移ります。果たしてどうなることでしょう。

関連ブログ:行政刷新会議「調剤基本料を一元化して24点に」
        (薬局のオモテとウラ 12月29日)
       http://blog.kumagaip.jp/article/42299635.html

関連情報:TOPICS
  2010.11.24 ライフイノベーションWGで調剤基本料の一元化が俎上へ
  2010.11.11 気になるライフイノベーションWGの議論の行方
  2010.11.06 調剤は物品販売か? ポイント付与容認に思う
  2010.12.21 究極の門前薬局、最高使用料は月額367万5千円

参考:
 医療介護CBニュース12月22日
  https://www.cabrain.net/news/article/newsId/31632.html

12月24日 15:00更新 29日リンク追加 2月16日リンク追加 


2010年12月24日 11:44 投稿

コメントが4つあります

  1. アホネット

    >やはり、川渕委員は増大を続ける医療費全体の中で、調剤薬局だけが企業化し、拡大していることに対して、相当の違和感を持っているのでしょう。

    我田引水な感想というのはこういう事をいうのですね。病院だってグループ化し、どんどん拡大しておりますが、ちゃんと新聞等読んでいますか?川渕先生がその事をご存知ないわけないでしょう。しかも書いている通り、医療経済実態調査では法人より個人の利益率の方が高いです。小規模薬局が経営が苦しいなんてあなた方をはじめとする薬剤師会の連中はいつも言っておりますが、嘘であるデータがちゃんと出ているわけですよね。だから先生はこのような提言をされたわけですよ。

    つくづく思いますが、薬剤師は世間を知らずに自分達の保身ばかり考えて行動しますね。内輪での足の引っ張り合いにご熱心で、医療の全体像が全然見えてませんね。まあそんな世間知らずの欲張り村の村長さん達の主張など今後通るはずもありませんが。せいぜい頑張ってください。

  2. アポネット 小嶋

    厳しいご指摘ありがとうございます。

    個人が法人より利益率が高いというのは資料に書いてある通りで、私自身も決して軽視しているわけではありません。

    薬局の企業化について肯定的な考え方のようですが、確かに米国やカナダ、英国など企業化を行って、生活者へのきめ細かいサービスが行われている国もあります。

    しかしその一方で、薬剤師以外の経営を認めない国、複数店舗の経営を制限する国、開局に当たっては薬剤師会の入会を義務づける国、開局の制限(適正配置)を行う国など、公共性やプロフェッショナルを守ることを優先する国もあり、企業化だけを是としているわけではありません。

    川渕氏は、「個人も儲かっているんだから下げても大丈夫でしょう」ということも言いたかったとは思いますが、やはり医療費全体で調剤報酬を占める割合が増え続けている状況に一定の歯止めをかけたいのだと思います。

    個人的にもこのまま、医療費の中で調剤報酬だけが増えていくのは、相当のメリットが国民に理解されない限りは、今後は許されないと思います。

    しかし、調剤に頼らない薬局づくりというのも、海外のように医療用医薬品を一般用医薬品に積極的に転用する、薬剤師職能を公衆衛生や保健にも活用するといったことがすすまない現状では難しく、いきおい調剤報酬の行方だけに大きな関心を寄せてしまうのです。

    「内輪での足の引っ張り合いにご熱心で、医療の全体像が全然見えてませんね。」ということは私も感じます。

    調剤だけに頼らない薬局づくり、医療全体の中での薬局や薬剤師が果たすべき役割なども日薬に示してもらい、将来の目標にしたいのですが、現状はパイをいかに守るかだけがクローズアップされ、とても残念に思っています。

  3. アポネット 小嶋

    日本チェーンドラッグストア協会は14日、都内で開催した記者会見で、調剤ポイントが調剤基本料の一元化の議論に影響するのを回避するために、調剤ポイントの付与を自粛することを検討していることを明らかにしたそうです。

    ドラッグストア協会  調剤ポイントの一時自粛検討、基本料の議論受け
    (日刊薬業WEBフリーサイト1月14日)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/dantai/article/1226555220661.html?pageKind=outline

    調剤報酬の改定議論に影響を及ぼすことは想定されていたでしょうが、基本料24点への統一という話が出て、ようやく危機感を持ったようですね。

  4. アポネット 小嶋

    日本チェーンドラッグストア協会1月20日、行政刷新会議に対して、「調剤ポイント付与」を論拠とした調剤基本料一元化に対して、意見書を提出したそうです。

    下記記事に概要が紹介されています。

    日本チェーンドラッグストア協会/行政刷新会議に「調剤ポイント付与」で意見書
    (流通ニュース 2011年1月20日)
    http://www.ryutsuu.biz/strategy/d012025.html