チアゾリジン系薬剤による骨折リスクは女性の方が2倍高い

 ピオグリタゾン(アクトス)やRosiglitazoneなどのチアゾリジン系の糖尿病治療薬(thiazolidinediones)については、臨床試験で骨折の発生頻度が上昇することが知られています(日本でも2007年11月の改訂で、その他の副作用の項に追記)が、10日、英米の研究者らによる10のランダム化比較試験13,715人のデータと、2つの観察研究(症例対照研究と後ろ向きコホート研究)31,769人のデータを解析した研究結果がCMAJ 誌のEarly releaseに掲載されました。

Long-term use of thiazolidinediones and fractures in type 2 diabetes: a meta-analysis
CMAJ Early release, published Dec. 10, 2008)
   http://www.cmaj.ca/press/080486.pdf
   http://www.cmaj.ca/cgi/rapidpdf/cmaj.080486

 研究者らは、ランダム化比較試験については2型糖尿病患者で1年以上介入したもの、観察研究については骨折リスクや骨密度に関する記載のあるものをセレクトし、骨折のリスクや骨密度の変化について解析しています。

 その結果、10のランダム化比較試験の解析で、thiazolidinediones投与群で骨折リスクが1.41倍に達したことが明らかになった他、5つのランダム化比較試験で男女(男性7,001人、女性4,000人)ごとのリスクを比較したところ、男性では骨折リスクの上昇が認められなかったのに対し、女性では骨折リスクが2.23倍に達したそうです。

 また、腰椎と股関節の骨密度の変化を調べたところ(2つのランダム化比較試験)、腰椎で1.11%、股関節で1.24%の減少が見られたそうです。

 さらに研究者らの推計によれば、実際に骨折が起こる頻度は、ハイリスクグループ(thiazolidinedionesを服用している閉経後の高齢者)では21人に1人であったのに対し、ローリスクグループ(メトフォルミンを服用している56歳未満の女性)では55人に1人という大きな差が生じたそうです。

 thiazolidinedionesによる骨折リスク上昇のメカニズムについては、依然としてわかっていませんが、今回そのリスクに性差があることがわかったことから、今後のさらなる研究をを通じて明らかになっていくものとの思われます。

 また、同時に発表された論評では、こういった新薬については定期的・標準化された市販後調査の必要性や、新しい治療方法の承認にあたっては、医薬品の承認とファーマコビジランスのバランスが注意深くとられる必要があるとしています。

Thiazolidinediones: Do harms outweigh benefits?
CMAJ Early release, published Dec. 10, 2008)
  http://www.cmaj.ca/cgi/rapidpdf/cmaj.081713

 いずれにせよ、ピオグリタゾンを服用している女性については、骨折しないよう留意することが必要のようです。(関連性はわかりませんが、私もちょっとした転倒で手首を骨折した事例を体験しています)

関連情報:TOPICS 2007.03.10 チアゾリジン系薬剤と骨折リスク

Diabetes drug pioglitazone (Actos): risk of fracture
     (CMAJ 2007; 177 (7).)
  http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/177/7/723

参考:
Diabetes drugs ‘double bone risk’(BBC NEWS 2008.12.10)
  http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/7771944.stm
Long-term use of diabetes drugs by women significantly increases risk of fractures(EurekAlert! 2008.12.10)
  http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-12/uoea-luo120808.php


2008年12月11日 01:30 投稿

Comments are closed.