PPIの長期使用と骨折リスク(カナダ研究)

 日本でも使用頻度が年々増加しているPPIですが、カナダの研究者はPPIの長期使用が骨折リスクを高める可能性があるとする研究結果をまとめ、CMAJ 誌に論文を掲載しています。

 PPIと骨折リスクとの関連性は、これまでも2つの大規模studyが発表されていますが、使用期間との関連性を調べたのは今回が初めてのようです。

 Use of proton pump inhibitors and risk of osteoporosis-related fractures
 (CMAJ 2008 179: 319-326.)
  http://www.cmaj.ca/cgi/content/abstract/179/4/319
  http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/179/4/319

 この研究は、1996年4月から2004年3月までのカナダ・マニトバ州の50歳以上の高齢者約63,000人のデータのうち、骨粗鬆症と関連付けられる股関節・脊椎・手関節の骨折患者約16,000人のデータを詳しく分析したもので、PPIの処方歴の有無や骨代謝に影響のある薬剤の投与の有無、合併症の有無、収入などを考慮して結果の調整を行っています。(OTCのカルシウム剤等サプリメントの摂取などは反映されておらず)

 その結果、数年程度のPPIの継続使用では有意差が認められなかったものの、7年以上の使用になると骨折リスクが2倍に、また大腿骨頸部骨折(hip fracture)リスクに限ると、5年以上の使用で62%、7年以上の使用で骨折リスクが4倍になるとしています。

 この研究でも、PPIがなぜ骨折リスクを増やすかはわからないとしていますが、胃酸分泌の抑制によりカルシウムの吸収を低めるためではないかという見解が示されています。

 各紙は、現時点ではそのような報告はないと関連性を否定するメーカーの見解を伝える一方、研究者らはPPIのカルシウム吸収への影響、骨代謝への影響などを調べるべきとしています。

 CMAJ 誌同号のCommentaryでも、ランダム化比較試験または前向きコホート研究で関連性を確証する必要があるとする一方、この論文を含めた3つの研究でPPIの用量と期間に依存して骨折リスクが高まる可能性があると指摘し、医師は骨折の潜在的なリスクがあることを考慮してPPIを処方するよう求めています。

Proton pump inhibitors: balancing the benefits and potential fracture risks
 (CMAJ 2008 179: 306-307.)
  http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/179/4/306

 関連情報:
TOPICS 2006.12.28 PPIが、大腿骨頸部骨折のリスクを高めるかもしれない(英国研究)

Proton pump inhibitors, histamine H2 receptor antagonists, and other antacid medications and the risk of fracture.
    (Calcif Tissue Int. 2006 Aug;79(2):76-83.)
   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16927047

参考:Nexium, similar prescription antacids may boost bone-fracture risk: study
(The Canadian Press 配信 2008.8.11)
   http://www.canadaeast.com/wellness/article/381092
Powerful Antacid Drugs Raise Fracture Risk(Healthday 2008.8.12)
   http://www.healthday.com/Article.asp?AID=618291


2008年08月12日 16:22 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    豪州当局TGAが、2日公表の“Australian Adverse Drug Reactions Bulletin”でこの論文などを取り上げ、豪州国内ではPPIと骨折リスクとの関連が疑われる事例は2例としながらも、大腿骨頸部骨折(hip fracture)はありふれた病気であるために関連付けにくいのではないとして、PPIを処方する際は、潜在的リスクがあることを留意すべきであるとしています。

    Proton pump inhibitors and possible fracture risk
    (Australian Adverse Drug Reactions Bulletin Vol.28, Number 1, February 2009)
     http://www.tga.health.gov.au/adr/aadrb/aadr0902.htm