こどもにかかりつけ薬剤師制度は必要か?(国内研究)

このコホート研究では、医療保険における「かかりつけ薬剤師制度」を利用する患者の特徴を明らかにし、未成年者の薬学管理におけるその有効性を評価することを目的として行われています。

【BMC Health Serv Res. 2025 Sep 2】
Effectiveness of the kakaritsuke-yakuzaishi (family pharmacist) system for underage individuals in Japan: a cohort study using a health insurance claims database
https://bmchealthservres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12913-025-13358-5

かかりつけ薬剤師制度利用者と非利用者に分類し、エンドポイントとして、重複投薬・相互作用等防止加算の請求率を算出し解析。

重複投薬・相互作用等防止加算の請求率は、6歳未満と6歳以上のグループで差はなかった。また、多くの薬剤が処方されている患者や複数の医療機関を利用している患者の間で差がないことが示された。

重複投薬・相互作用等防止加算のうち、残薬調整に係るものについての請求率は絶対的に低く、未成年者では残薬調整を必要とする症例が成人よりも少ないことが示された。これは、風邪薬、解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬など、主に急性疾患の治療薬が多く、継続して使用されていないことが伺える。そのため、この制度は未成年者の残薬調整には十分な効果を発揮しない可能性がある。

一方、かかりつけ薬剤師制度の利用は、6歳以上のグループよりも6歳未満のグループの方が顕著だった。この傾向は、6歳未満のグループでは医療費助成や自己負担金の額が低いことが原因であると考えられる。このため、医療上の必要性を超えて、薬剤師による制度利用の提案や、患者・保護者側の同意を促した可能性がある。

かかりつけ薬剤師制度が未成年者における残薬や重複投薬、相互作用の防止に有効であることが示されたが、この有効性は、かかりつけ薬剤師制度の利用に関する特性に関わらず一貫しており、これらの特性を持つ人々への積極的な制度適用の傾向は支持されていないことが示された。

6歳未満の患者がより頻繁にかかりつけ薬剤師制度を利用していたにもかかわらず、6歳以上の患者と6歳未満の患者の間でその有効性に変化が見られないことから、医療資源の効率的な配分の観点から、6歳未満の年齢層への制度の運用は見直される必要がある。

現在、かかりつけ薬剤師指導料を請求するための患者の病歴に基づく資格条件はない。適用範囲を成人に限定するなど、これらの条件を改定することが不可欠であると思われる。

なお今回の研究では、残薬調整をしたもの算定をしなかった、服薬アドヒアランスが低いがかかりつけ薬剤師シ​​ステムの候補とも考えられる患者を捕捉していない、薬剤師の分布などの影響など、分析には測定されていない交絡因子が存在する可能性もあるとした。

まあそうだろうなという研究結果ですが、実際は小児科と耳鼻科といった「はしご受診」が考えられ、重複投薬・相互作用等防止加算を算定するケースはあると思います。

個人的には、かかりつけ薬剤師制度と重複投薬・相互作用等防止加算で、制度の有効性を測るのはどうなのかなという思いもあります。

論文での指摘にあるように、かかりつけ薬剤師制度はいろいろな病気に罹患し、さまざまな薬を常態的に服用する方たちへの薬学的なアプローチとしてのフィーだと思います。そういった点で、急性疾患での受診が多いこどもといった層に必要かどうかは議論があると思います。

またこの算定率で、いろいろと批判がある医薬分業へのメリットとしての見える化を可能にしている現状もあります。

ただ、小児医療費助成などがかかりつけ薬剤師制度を促していることは確かで、公費などにより調剤における自己負担金が無料または軽減されている層については、限られた医療財源を考えた時、指摘の通り制度の見直しが必要かもしれません。

次回改定でこの論文が、悪意をもって利用されないことを願うばかりです。

関連情報:
2016.05.18 調剤報酬の「かかりつけ薬剤師」の要件に異議あり(当時と異なることを留意)


2025年09月04日 19:05 投稿

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