平成19年度後発医薬品の使用状況調査報告書

 9日、中医協の第18回診療報酬改定結果検証部会が開かれ、昨年11月に速報値が発表された、後発医薬品の使用状況調査(診療報酬改定結果検証に係る特別調査・平成19年度調査)の報告書が発表されました。

 第18回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会(2007年11月7日開催)
  資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0709-7.html
 報告書:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0709-7i.pdf
      (資料(検−1−9))

 データは11月発表のものと同じですが、自由記述で記された後発医薬品の使用にあたっての問題点・課題が、薬剤師・診療所・病院・病院医師それぞれの立場から整理されています。(以下、報告書より抜粋)

後発医薬品の
供給体制
・1つの後発医薬品に対して、それを使用する患者は少数で、また継続して来局するとも限らないため、後発医薬品を用意していたとしてもデッドストックとなる確率が高い。(薬剤師)
・後発医薬品の指示があるにもかかわらず後発医薬品が存在しない処方も認められる。処方薬の中のどれに後発医薬品が製品として販売されているか、すぐわかるシステムが必要である。(薬剤師)
・患者が、大学病院等の大きな病院について一番信頼できる点として認識しているのは薬であるので、後発医薬品の使用は、先ず大学病院から始めるのがよい。(診療所)
・例えば抗がん剤、インターフェロン等の高額で患者負担の大きなものに集中して発売を希望する。(診療所)
・薬価本に名前は載っているが、流通していない後発医薬品もあるのではないか。安定供給に不安を感じる。(病院)
後発医薬品の
品質確保
・後発医薬品の中には先発品より効果が悪かったり、添加物アレルギーが出現するなどの例が見受けられる。厚生労働省がきちんと試験し同等の効果があると明らかにしない限り、患者に自信を持って後発医薬品を勧めることができない。(薬剤師)
・積極的に効果や品質安定化した後発品は使用しているものの、発売当初のひどい副作用や品質不良により薬剤効果のなかった例が多すぎる。(診療所)
特に抗がん剤や造影剤、抗生物質製剤などについては「臨床的同等性」を保証する資料が必要と考える。(病院)
後発医薬品の
広報のあり方
・マスコミで報道されている割には、医師も患者も後発医薬品を知らない人が多い。(薬剤師)
・患者が後発品の意味を理解せず、「CM で言っているので」「健康保険組合より言われた」などと言ってくる。(診療所)
・後発医薬品についてはテレビCM 等で「同じ効果で安い」という面ばかり宣伝され、添加物等による新たな副作用の可能性についてはほとんど知られていないのが現状と思われる。(病院医師)
医師の後発医薬品に対する意識・知識の欠如 ・医師は後発医薬品があるかないか分かっておらず、後発医薬品がないものも「ある」と患者に話してしまい、医師と薬局の言うことが違うということで患者に怒られる。(薬剤師)
・後発医薬品に変更した結果を医師に文書でフィードバックしているにもかかわらず、2 回目以降の処方せんが変更されることはなく、さらに、2 回目以降で医師の署名がないために疑義照会をすることも多く、薬局側の負担が大きい。(薬剤師)
患者への説明における負担増 ・後発医薬品の説明のために利用できる資料も少ないため、自分たちで作成するなど、時間がかかる割に、報酬上の評価が少なすぎる。(薬剤師)
・後発医薬品メーカーの差違が大きく、種類も多く、どのように患者に話せばよいのか苦悩するし、薬価の差額もどうしてこのように違うのか説明するのも難しい。(薬剤師)
処方せんへの記載方法 ・薬品名が増加し、処方の際の薬品名間違いが増えてしまった印象を受ける。コンピュータ処方ではなく、手書き処方なので変更された薬品名を正確に覚えるのに時間を要した。院内の電算化後に積極的に後発医薬品を採用していく予定。(病院医師)
(※薬歴に書くのも一苦労なんですよね)
その他 ・後発医薬品を奨励するより、先発医薬品の薬価を後発医薬品並みに下げる方が、医師・
患者ともに納得できる医療費の節減になる。(診療所)
・粗悪な後発品を出すくらいなら、先発品メーカーの開発費・設備投資等が回収された時点で先発品の薬価を下げていく方が、安心して国民の健康が守れると考える。(診療所・薬剤師)
・後発医薬品の薬価を統一することの可能性について検討してほしい。(病院)
・先発品と後発品で成分は同じなのに、保険の通る病名が異なるものがあり混乱する。適応症・規格等を先発品と後発品の両者で統一する必要がある。(病院)

 これらの意見を読むと、現在のまず医療費削減ありき、使用促進ありきの厚労省の政策への不安や不満を感じます。私たちも意見はきちんと示すことが必要ですね。是非国は、こういった声を取り入れて政策をすすめてほしいと思います。

 なお、今年度も引き続き調査が11月〜12月に実施されます。今回は、処方せん様式の変更に伴い以下のような項目を調査する予定です。今回初めて、患者への意識調査も行われるようです。(詳細はこれから検討)

  • 処方せんに「変更不可」と記す件数とその理由
  • 処方せん受付枚数、処方せんに「変更不可」と記された割合及び後発医薬品への変更枚数
  • 後発医薬品に変更することによる薬剤料の変化
  • 後発医薬品の使用に関する医師、薬剤師及び患者の意識

 関連ですが、厚労省では同日、「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」の実施状況を、またGEメーカー40社が加盟する日本ジェネリック製薬協会(http://www.jga.gr.jp/)も会員各社の同プログラムの達成状況についてとりまとめ、公表しています。本当に順調なのかと思うところもありますが。

「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」の実施状況について
     (厚労省7月9日)
   http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/07/h0709-1.html

「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」のGE薬協会員会社の達成状況について
  (日本ジェネリック製薬協会7月9日)
   http://www.jga.gr.jp/AP_Report_2008_07_09.pdf

関連情報:TOPICS 2007.11.08 後発医薬品への変更進まず、処方せん書式の変更も視野に

7月10日 2:00掲載 10:10更新


2008年07月10日 02:00 投稿

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