第50回日本薬剤師会学術大会参加記(FIP会長講演など)

 10月8,9日開催の第50回日本薬剤師会学術大会日薬学術大会に行ってきました。去年は記事にできなかったのですが、今年は忘れないように何とかメモとしてまとめました。

特別講演6「超高齢化社会へと向かう将来における薬剤師の役割」

今回一部楽しみにしていたのが、2015年から国際薬学連合(FIP)の会長を務められているカルメン・ぺーニャ会長による、この講演です。わかりにくりとは思いますが、講演内容をまとめてみました。

 今回の講演ですが、自宅に戻って調べたところ、話の出発点は、ペーニャ会長が2015年にFIP年会で会長に選出された際に提唱した、“Two times two” plan という行動計画にあります。

FIP president describes plan for profession at opening of 75th world pharmacy congress
(FIP 2015.09.29)
http://fip.org/www/index.php?page=news_publications&news=newsitem&newsitem=211

 この行動計画では、People (patients and health professionals)、 services (public health and clinical pharmacy)、sustainability (in terms of access, use and disposal of medicines) という3つの分野にスポットをあて、FIPでは何をすべきかを議論重ねています。

 2016年はまず、people の分野を取り上げ、health care だけではなく、Home Care 分野での取り組みが重要だとして、セルフケアや非処方薬についても関心を注目を集めるべきだとしています。

 そのうえで、patients、health professionals 間の協力の必要性に加え、女性に力を与え(empowering women)、家庭内のヘルスケア行動をサポートする必要があるとしました。

Community pharmacies’ important social role must not be forgotten, FIP President says
(FIP 2016.08.28)
http://fip.org/www/index.php?page=news_publications&news=newsitem&newsitem=231

 そして今回の学術大会での講演は、2017年に検討が行われている、その次のservices (public health and clinical pharmacy)に関わるFIPの取り組むべき課題を紹介したもので、今年9月ソウルで行われたFIP総会でスピーチに基づいたものでした

We must generate jobs in the pharmaceutical sector, FIP President says
(FIP 2017.09.11)
http://fip.org/www/index.php?page=news_publications&news=newsitem&newsitem=251

 ペーニャ会長はくすりに関わる新たな雇用創出のために、社会の新たなニーズに対応した 5つのフィールドの new services に取り組むことを呼びかけました。

5つのフィールド 具体例など
public health 病気の人だけでなく、健康な人にも情報提供を行うことを求めた他、「国の政策に関与する」「積極的に関わる」事がキーワードとなりました。世界的な問題としては、女性や子どもに対しての取り組みや、農村地区(医者がいない)地域での取組の必要性を強調
clinical pharmacy くすりを使う目的、期間、潜在的なベネフィットやリスクをきちんと説明するといったことを、「責任ある形で伝える」「責任あるコミットメントする」ことを求めました(FIPで今後、具体的戦略計画が策定されるらしい)
research これら public health や clinical pharmacy の取り組みを行う上で必要な、薬剤師によるエビデンスの収集が役割として求められているとしました。
education 生涯学習の重要性を訴えました
new technologies これら4つのserviceを実現するツールや情報共有のためのコミュニケーションツールとしての利活用の必要性を強調しました。(慢性疾患管理には威力を発揮)

 講演内容はこれだけで、30分程度で終わってしましたが、座長が質問の時間を取っていただいたので、私は、public healthの分野について、特にどのような取り組みが必要かとの質問をしました。

 私の質問に対しペーニャ会長は、ワクチン接種の取り組みと、予防接種の必要性など母親への啓蒙活動など、将来の公衆衛生の問題に取り組むよう呼びかけました。この背景には、まだまだ少なくない開発途上国の識字率(教育を受けられない女性が多い)とグローバルな問題になっている移民の問題があります。

 開発途上国では、女性は教育を受ける機会がない国もまだあり、こういった国の女性は基本的な健康知識を学ぶことがなく、結婚妊娠を経るとともに、家族の健康を支える立場にあります。こういった女性に対してのdそのようにしてくすりを適正使用していもらうかの教育は必要で、ユニセフなどではピクトグラムの活用を進めているそうです。

 一方フロアからは、出産や介護などで、現場から一定期間離れてから再び現場に戻る女性薬剤師の学習支援はどうあるべきかの意見が寄せられました。

 これに対し、母国スペインでも女性薬剤師が多く同じような問題があるとして、ペーニャ会長はFIPでもこの課題について取り組みたいと述べられました。

 ペーニャ会長の自信をもった言葉は、まさに世界の薬剤師のリーダーだと実感した講演でした。

 尚、調べたとところ、ペーニャ会長は2016年5月の日本薬剤学会の公開市民講座で講演を行っています。

分科会 1 地域住民のセルフメディケーション・セルフケアのための薬局におけるコミュニケーションについて

 今後果たすべき役割として重要なテーマと思い、店頭で、地域で何ができるかの話が聞けると思い足を運びました。

 注目の基調講演を行った佐谷圭一先生は、「無財の七施」という仏教用語を取り上げ、患者さんや地域住民とどのような気持ちで接したらよいかを話されました。また、「レゾンデートルの追求」という哲学用語を取り上げ、薬剤師としての存在意義や、生き甲斐をもって患者さんと接して欲しいという話が印象的でした。

 また、他のパネラーからはセルフケアサポートとしての母親と子への育児支援の取り組みや、女性の健康力の向上のために情報提供などの具体的な取り組み紹介がありました。  

 国が目指す地域包括ケアでは在宅や残薬問題が注目されますが、店舗でのこういった取り組みも地域包括ケアの一つではないかと思いました。(ペーニャ会長が言っていることと同じと思った)

分科会 44 業界紙記者からみた薬剤師、薬局、薬剤師会

 分業バッシング、日本独自ともいえる地域包括ケアの推進が叫ばれる中、第三者(生活者)の立場で薬剤師に何が求められているか聞いてみたいと思い参加しました。

 この分科会は分業などのこれまでの苦労や現状への疑問を持つ?どちらかと言えば年配の参加者で席が埋まり、意外にも注目を集めました。

 演者の話に対してのフロアーからのさまざまな質問を期待していたのですが、厚労省の担当官や日薬の役員の姿もあったことから、「覚悟」など、あるべき論でまとめられてしまいとても残念でした。(シナリオがあったんだろうな)

 個人的には、「地域包括ケアにおける敷地内薬局の存在意義はあるのか」「モノからヒトへの業務を行うのに何が(何を効率化する)必要か」といった疑問をぶつけようと思いましたが、ちょっと発言できる雰囲気ではありませんでした。(分科会終了後、玉田さんとは何回も面識があったので、敷地内薬局についての疑問をぶつけました。答えはナイショ)

 ツイッターでチェックした限りでは、今回の学術大会では、来年の診療報酬改定に関する動きについての話や新しい話はあまりなかったようですが、分科会2の厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官の話が話題になったようです。

 中山氏は「重複投薬・相互作用等防止加算の算定回数が2016年改定後に大幅に増加したことを取り上げ、「薬剤師の活動が貢献できていることを世の中に示すことができる」として、「各地でもぜひ、(数字を)出していただきたい」と呼びかけたそうですが、この記事を見て、医薬分業バッシングに対してこの数字でメリットを示すというのはどうなのかと思いました。

 手間がかかるから加算は当然だという意見が一般的だと思いますが、患者さんにその費用が及ぶという制度設計は個人的には今も疑問があります。もし、この算定をリフィル推進も念頭に推進するのであれば、名称や算定要件などの制度設計を再検討した方がいいのではないでしょうか。(あいまいな方が中医協などでつっこまれないからなのだろう)

 大前提として、保険制度の中で同じ薬をもらうのに、薬局や加算の要件によって、もらうたびに金額が異なるというのは果たしてどうなのでしょうか?  しかも、これらの違いを患者さんへの説明は容易ではありません。

 海外でスタンダートな分業が認められてもらえないからといって、この呼びかけは正直疑問に思いました。フロアにいたらおそらく質問をぶつけていたかもしれません。強制分業もできないのにおかしいのではないかと。

 海外での地域薬局業務は、同じ対人業務でも調剤業務からワクチン接種やスクリーニングなど、ペーニャ会長がいうところの、public health やヘルスケアの支援に職能がシフトしている感があります。

 薬歴や処方提案などのかかりつけ薬剤師業務も重要ですが、調剤実務を補佐する助手も認められていない中、保険調剤業務を中心とした業務にますます傾注しなければいけない現状に、日本の地域薬剤師の将来はどうなってしまうのかとこの記事をまとめていて思いました。


2017年10月15日 00:52 投稿

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