セチリジンなどのスイッチも了承されていた(一般用医薬品部会)

 業界紙を購読している方は既にご存じだと思いますが、17日に開催された薬食審の一般用医薬品部会(TOPICS 2012.10.17)では、エパデールとは別に3成分についての審議が行われています。業界紙をとっていない身では、どのような結果になったのかわからずじまいでしたが、m3.com 掲載の薬局新聞の配信記事で、ようやくその結果がわかりました。

エパデール スイッチ化で要薬剤師薬時代の幕開
(m3.com / 薬局新聞 10月24日 配信 要会員登録、掲載は1週間くらいです)
 http://www.m3.com/news/GENERAL/2012/10/24/160721/

 審議されたのは、エパデールも含めると以下の4成分で、このうちのゲンタマイシンは医学会から「耐性菌が生まれる懸念」や「適切な医療機会を損なう恐れ」などの指摘があり、継続審議になったそうです。

成分名 販売名 効能効果
イコサペント酸エチル エパデールT、エパアルテ(持田製薬) 健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪値の改善
(承認条件として「一定数の症例データが蓄積されるまでの間、適正使用調査を実施」、「3年間の安全性に関する製造販売後調査」が設定)
セチリジン塩酸塩 ストナリニZ(佐藤製薬)
コンタック鼻炎Z、コンタック鼻炎24(GSK)
花粉・ハウスダストなどによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和/くしゃみ・鼻水・鼻づまり
トリメブチンマレイン酸塩 セレキノンIBS、セノレックスIBS、アダプトコーワIBS(田辺三菱製薬) 腹痛又は腹部不快感を伴い、繰り返し又は交互に現れる下痢及び便秘(以前に医師から、過敏性腸症候群(IBS)の診断・治療を受けた人に限る)
ゲンタマイシン硫酸塩 ゲンタシン軟膏・ポリベースG(佐藤製薬) おでき・とびひ

 トリメブチン塩酸塩については、1日配合量として300mg が配合された 田辺胃腸薬<調律>、パンシロントリム、イノセアアクト(現在は販売中止)の3品が胃もたれなどの効能で配合剤が2007年から発売(現在は第2類)されていますが、今回の製品は単剤です。使用目的が異なるとはいえ、配合剤が第2類、単剤が第1類というのは少し矛盾を感じます。(もちろん第1類としての情報提供を否定するものではありませんが)

 一方、ゲンタマイシンの審議継続についても矛盾を感じます。薬局医薬品から一般用医薬品になった、クロロマイセチン軟膏やテラマイシン軟膏(いずれも第2類医薬品)が、効能効果として「化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎)」の効能を掲げているからです。安全性に差があるのであればともかく、こういった理由で継続審議とするのであれば、これらの販売のあり方も検討する必要が出てきます。

 いずれにせよ、セルフメデイケーションを推進したいのなら、会員の関心を高めるためにもどうしてこの程度のことくらい、日薬はすぐにアナウンスしないんでしょうね?!

関連記事:
RISFAX 2012.10.18
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=39597


2012年10月24日 18:32 投稿

コメントが7つあります

  1. 薬剤師がきちんと意識を向けて関わってないから、こんな変な承認なんじゃないですかね?

    もうかれこれ20年近く経ってしまう、薬局業務運営ガイドラインには、はっきりOTCを販売と書いてあっても、最初は保健所うるさかったですけど、最近指導されてないし。
    そこをきちんと積み上げてくるべきでしたよね。
    行政の縦割りで連携がなされていない。

    そして医師会も思うところは多々でしょうけど、突合チェックが厳しくなると調剤報酬の医科から減額なんですし、薬剤師と連携し合って、「これは保険利かないから続けたければ薬局で購入して下さい。」って事も必要じゃないですかね?
    そして長期に購入する人は受診勧告しないといけないし。
    そのためには、こんな物がOTCであるって事も医師が知る必要があると思いますし。

    セルフメディケーションって患者が好き勝手に購入する事じゃないと思う。製薬メーカーや販売の経済性優先でなく。

  2. アポネット 小嶋

    いつもコメントありがとうございます。

    ここのところの薬事日報配信記事を見ると、厚労省の担当官からセルフメディケーションへの関与やOTC販売への積極的な取り組みを期待する考えが示されていますね。

    中井企画官「地域医療のカギはOTC薬‐薬剤師向け研修会実施を検討」
    (ヤクジョブ.com/薬事日報 2012.10.15 配信)
    http://yaku-job.com/news/detail/9FAD71C1AF062AD8EF538FFDFDBDE8A70D3DDC94/

    近澤薬剤管理官「優良薬局を報酬で評価へ」‐本来のかかりつけ発揮促す
    (ヤクジョブ.com/薬事日報 2012.10.15 配信)
    http://yaku-job.com/news/detail/9ED8B89BC1AC69D906427EEC27B111F1086F232A/

    このうち15日の記事については、日経DIでも取り上げられています。

    優良薬局を調剤報酬で「評価」することの限界
    (日経DI Online 2012.10.16)
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201210/527246.html

    上記のコメント欄に辛辣な意見があるのですが、「町の相談薬局を、行政が潰してきた」のに、私も今さら、「親身な地域薬局を差別化するような調剤報酬のあり方があってもいい」というのはちょっとどうなのかと思いました。

    当然、患者さんの負担が増えるんですよ。定額制や加算分は含めない仕組みを導入するなら別ですが。だからポイントに行くってことを考えないのでしょうかね。

    在宅医療に貢献するのもいいけど、確かに薬局がもっとセルフケアやセルフメディケーションへの支援することのほうが、よほど医療費の削減につながると個人的には思うので、スイッチOTCのあり方など、もうちょっと現場の薬剤師や経営者が目を向ける策を考えた方がいいと思います。

  3. 本当に行政が相談薬局を潰したんですよね。
    昔は皆当たり前にやっていたんですよ。
    温故知新はいいですけど、ご自分達のやってきた事を反省して欲しいもんですね(日薬も)。
    まあ大昔は処方せん持って行った薬局で押し売りされたって医者を怒らせて・・・みたいな話でOTCに関して消極的になってたんでしょうけど。
    そもそも医師会との根回しがない(不十分)からいけないんですよね。
    でもセルフメディケーションの会議で医師も参加してるんだし、その意味をきちんと理解していただき、協力し合えば皆いい方向に行くんですけどね。

    調剤報酬で安易にお金出すのはおかしいですね。
    逆に優良店舗でない門前(夜間、休日対応しない・OTC販売しない・学校薬剤師や地域行事に参加しない・他?)を減算する方がいいかも。

  4. アポネット 小嶋

    セチリジンOTCについて、12月19日の薬事分科会を経て21日に正式承認されています。

    処方せん医薬品の指定も外れたことになりますが、医療用のセチリジン錠の処方せんなしでの販売も実質可能ということになるのでしょうか?(21日の官報の内容だとよくわからない)

    添付文書案は薬事分科会で公表されていますが、審査報告書もPMDAにアップされています。

    セチリジンOTC(ストナリニZ、コンタック鼻炎Z)承認審査報告書(PMDA)
    http://www.info.pmda.go.jp/ippan/O201200008/300089000_22400APX00579000_Q100_2.pdf

    添付文書案(日刊薬業WEB行政資料)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226585918847#page=53

    相談することの項に、「自殺願望・抑うつ」も記載されているんですね。

  5.  12月21日付けの官報では、厚労省告示第590号により、「薬事法第49条第1項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品」(平成17年厚労省告示第24号)の一部を改正するとして、第398号で指定されていた「セチリジン」が削除されています。また、施工期日を別に定めていませんから、即日施行となっているものと考えます。
     なお、告示では平成25年6月20日以前に、現に出荷されているものについては、「処方せん医薬品」である旨の表示は無視する旨が記載されています。
    したがって、セチリジンの製剤は「非処方せん薬品」たる薬局医薬品ということになったものです。

  6. アポネット 小嶋

    解説ありがとうございます。

  7. アポネット 小嶋

    ゲンタマイシンのスイッチが継続審議となった経緯がようやく掲載された議事録でわかります。

    10月17日一般用医薬品部会議事録
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002xdr5.html

    日本皮膚科学会及び日本臨床皮膚科医会は次にあげ4つの理由により、一般用医薬品への転用に反対するとの意見を部会に提出したそうです。

    1.ゲンタマイシン硫酸塩外用薬の一般用医薬品への転用により、更なる耐性菌の出現が危惧される。ゲンタマイシン硫酸塩外用剤は、これまで安易に使われ過ぎてきたことで耐性菌が増加している薬剤であり、近年、皮膚科では使用を控え、耐性菌も減少傾向にあるとの報告がある。また、本剤の黄色ブドウ球菌に対する感受性は、50%程度しかないものと考えられる。一般用医薬品への転用は、更なる耐性菌出現の危険性を高める可能性が高いとの御意見です。さらに、日本だけ転用される必要性についても理解に苦しむ。

    2.二つ目が、適切な治療法の選択には医師の関与が不可欠であるとのことです。ゲンタマイシン硫酸塩外用剤の適用によっては、外用剤のみでは効果がなく、内服が必要になるものもあり、またブドウ球菌でなく、溶連菌が原因の腎炎などを合併する場合も内服が必要であり、これらの診断には医師の判断が不可欠である。また、ゲンタマイシン硫酸塩外用薬では、耐性菌によって効果が期待できない菌種があり、症状が悪化すると危惧される。

    3.三つ目が、最善の治療の機会を失う危険性があるとのことです。患者自身又はその家族の自己判断により、ゲンタマイシン硫酸塩外用薬を使用した場合、耐菌性のため症状が悪化し、他人への伝染拡大を含め重症症状に至る危険性がある。一般用医薬品を過信するあまり、医療機関への受診機会を失い最善の治療を受けられないことは、費用対効果の観点からも国民に不利益が及ぶ危険性が高いと懸念される。

    4.他の一般用医薬品との配合で、国民の健康被害の拡大が懸念されるとのことです。本剤が承認された場合、既に第二類医薬品である吉草酸ベタメタゾンとの新たな配合剤が販売できる環境となる。医療用医薬品リンデロン-VG軟膏があまりにも有名で、知名度の高い薬だけに、安易に一般販売されれば、耐性菌を含めて誤った使用法、強力なステロイド外用剤での副作用による国民の健康被害の拡大が危惧される。

    これに加え、東海大学医学部専門診療学系皮膚科学教授の小澤明委員は、

    ゲンタシンをOTCとして認めれば、それを使う頻度が増加していったら更に感作します。皆さん、将来それでいいのですかと私は思います。ゲンタシンは緑膿菌にはよく効きますし、今でも50%効くのですから、そういう薬はきちんと使った方がいいのではないでしょうか。それが国民のためだろうと私は思います。これは私の意見ですけれども、再考された方がいいのではないでしょうか。

    と述べた他、効能の「とびひ」について、日医の鈴木委員は

    とびひですが、要望書にもありましたが、学校保健上、医師の治癒証明がないと登園、登校が認められないことになっています。そのような医師の関与が必要だということと、スイッチOTCとどのように整合性を取られるつもりですか。

    といった意見が示され、結局継続審議になったようです。

    でも、皮膚科の先生が心配されているゲンタシン軟膏って、今医療の現場で適正使用されているんですか?