タミフルOTC化でも耐性増やワクチン接種率低下は認めず(NZ)(UPDATE)

 ニュージランドでは2007年からインフルエンザシーズン(5-9月)に限り、タミフルの処方せんなしでの販売が認められていますが、OTC化によって、インフルエンサウイルスの耐性が増えたり、後で使うために備蓄購入される、インフルエンザワクチンの接種率に影響を与えることはなかったとする論文がJournal of Antimicrobial Chemotherapy 誌のオンライン版に発表されています。(FULL TEXT で見たい)

Five years of non-prescription oseltamivir:
effects on resistance, immunization and stockpiling
J. Antimicrob. Chemother Online First 4 Sep 2012)
http://jac.oxfordjournals.org/content/early/2012/09/04/jac.dks337.abstract

(2015.01.02追記)
確認したところ修正版がフルテキストで読めるようになっていました。
http://jac.oxfordjournals.org/content/67/12/2949.full

http://jac.oxfordjournals.org/content/67/12/2949.full.pdf

 アブストラクトしか見れないのでほんとの概要だけですが、調査はランダムに選んだ85薬局から70薬局の回答が得られたもので、薬局での処方せんなしでの販売率は販売当初は髙かったものの、新型の大流行の際でもそれほど高くはならなかったそうです。(2007年27%、2008年31%、2009年と2010年、11%)

 また、新型の流行時にも生活者が備蓄のための購入に走るということはなかったとのことで、販売側(薬剤師)がきちんとプロトコルに従った供給が行われたことがうかがえます。

関連論文(こちらはオープンアクセス)
Is non-prescription oseltamivir availability under strict criteria workable?
A qualitative study in New Zealand
J. Antimicrob. Chemother. (2011) 66 (1): 201-204.)
http://jac.oxfordjournals.org/content/66/1/201.long
http://jac.oxfordjournals.org/content/66/1/201.full.pdf

関連ブログ:
タミフル(Oseltamivir)をOTCにしてみたら:ニュージーランド
(感染症診療の原則 2012.09.07)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/9d9cb7ff2e7acda5ba50e78932a26a82
(ご存じじゃなかったんだ)

Tamiflu oseltamivir(Roche NZ)
 http://www.tamiflu.co.nz/

関連情報:TOPICS
 2009.04.30 薬剤師のプロフェッションが問われるタミフル直接販売(NZ)
 2007.05.16 シーズン中は、処方せんなしでもタミフルが入手可能に(NZ)
 2009.11.06 ノルウェー、抗FLU薬の処方せんなしでの販売に踏み切る
 2009.11.14 処方せんなしでの抗FLU薬の販売(続報)(ノルウェー)

参考:
NEWS SCAN(CIRAP 2012.09.06)
http://www.cidrap.umn.edu/cidrap/content/bt/vhf/news/sep0612scan.html

9月7日 10:50 リンク再設定 14:15更新


2012年09月07日 10:17 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連ブログです。(濫用ってことになっちゃうんだ)

    タミフル濫用してもさほど耐性生じないのかも(NZ)
    (新型インフルエンザ・ウォッチング日記 2012.09.09)
    http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/70043e5cc855aad5bb588d404afcd7c6

    う~ん 国民性か?

    確かに日本で同じようにしたら、どうなるだろうか?

  2.  OTC化という見出しで、GSL化と勘違いされたのでしょうか?
     もっとも、日本ではOTC医薬品販売における薬剤師(若しくは登録販売者)の関与が、先般の販売制度改正にも拘らず、明確には見えないことが問題かもしれません。
     ニュージーランドや豪州では、日本と違って、薬局以外で医薬品を販売する店舗は無いことも大きな違いと思います。(とはいえ、結構日本では第二類若しくは指定第二類に区分される医薬品が、小包装に限って、GSLとして、コンビニ等で販売されています。 無論、オセルタミビルはGSLではありません。)

  3. アポネット 小嶋

    ご存じと思いますが、ニュージーランドの医薬品は下記の3つの分類に分けられ、この3つに当てはまらないものは、General Sale Medicines(GSL:自由販売医薬品)に分類され、一般の商店での販売が可能になっています。

    1.Prescription Medicine(処方せん医薬品)
    2.Restricted Medicine (also referred to as Pharmacist Only Medicine)(要薬剤師薬)
    3.Pharmacy-Only Medicine (also referred to as Pharmacy Medicine)(薬局医薬品)

    Classification of Medicines
    Classification Process
    Classification categories and criteria
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/classificationCategoriesAndCriteria.asp

    そして、医薬品のカテゴリーの検索ページ(→リンク)でoseltamivir を検索すると、「処方せん医薬品」と分類が表示される一方、次のような但し書きがでてきます。

    except when sold in a pharmacy between the months of April to November inclusive by a registered pharmacist who is satisfied that the medicine is for the treatment of a consumer who is resident in New Zealand, is 12 years of age or more, and currently has the symptoms of influenza

    まいけるさんがご指摘の通り、オセルタミビル(タミフル)は現時点では処方せん医薬品のままであり、確かにOTC化という表現は不適切かもしれません。

    しかし、プロトコルに従い、オーバーザカウンターで販売するということを考えると、OTCという表現でもいいような気がしますがいかがでしょうか。

    ちなみに、Restricted Medicine(要薬剤師薬)は、検索ページ(→リンク)で、select a classification を restricted にチェックを入れて検索ボタンを押すと、一覧で出てきます。

    日本では処方せん医薬品のファムシクロビルやトリプタン製剤が条件があるものの、処方せんなしでの販売が可能なことがわかります。(チョッピリうらやましい)

  4.  すみません、本体の方ではなく、コメントで引用されたブログの中身に対するコメントのつもりでした。 書き込みの際に注意が足りず、失礼しました。
     米国でも、処方せん医薬品(Rx)の区分(法的規制)はそのままで、薬剤師の判断(および、その薬剤師が勤務する薬局の環境整備?)を持って、処方せん無しに販売できるとのパラダイム転換提案が出ています。 ニュージーランドの抗インフルエンザ薬は、その先がけ事例に当たっていたと理解しています。
     英国の薬事法制大改正でも、処方せん医薬品(の区分にある医薬品)を薬剤師(薬局を適切に経営するという縛り月というのも興味深いと思うのです)が交付できるとする規定が、多々盛り込まれています。(すでに、あった諸規定を整理統合したもので、それほど新規な話ではないらしいのですが。)