サリドマイド開発会社が50年を経て被害者に初めて謝罪

 日本で薬害を学ぶときに必ず出てくる1960年代のサイドマイド事件ですが、8月31日にドイツ国内で行われたサイドマイド事件の記念碑の除幕式で、1957年にこのサリドマイドを開発し、販売をした旧西ドイツのグリュネンタール(Grünenthal)社のCEOが、薬害が明らかになってから50年を経て初めて、障害を持って生まれた数千人に対し、謝罪のスピーチを行い、海外で話題になっています。

Grünenthal entschuldigt sich für Contergan
(Aktuell Deutschlan 2012.08.31)(動画あり)
http://www.dw.de/dw/article/0,,16213300,00.html

Die Folgen der Entschuldigung von Gr・enthal wegen Contergan
(SPIEGEL ONLINE 2012.08.31)
http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/die-folgen-der-entschuldigung-von-gruenenthal-wegen-contergan-a-853290.html

Speech on the occasion of the inauguration of Thalidomide-Memorial
(Grünenthal 社 ステートメント 2012.08.31)(英訳)
http://www.contergan.grunenthal.info/grt-ctg/GRT-CTG/Stellungnahme/Rede_anlaesslich_Einweihung_des_Contergan-Denkmals/224600963.jsp

ドイツ Google ニュース記事→リンク

 BBC などによれば、1972年にドイツで起こされた訴訟に対し同社は遺憾(regret)の意を示しただけで、責任を認めず、また、被害者に対しても十分な補償が行われていないとのことで、被害者団体は今回の謝罪を受け入れなかったそうです。

German thalidomide maker Gruenenthal issues apology
(BBC NEWS 2012.08.31)
http://www.bbc.co.uk/news/health-19443910 

German firm which invented birth defect drug Thalidomide apologises for the first time in 50 years – but British charity  demands compensation
(Mail Online 2012.09.01)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2196689/Were-sorry-German-firm-invented-birth-defect-drug-Thalidomide-apologises-time-50-years.html

German Drug Firm Makes 1st Apology for Thalidomide
(ABC NEWS 2012.08.31 AP配信)
http://abcnews.go.com/Health/wireStory/german-drug-firm-makes-1st-apology-thalidomide-17128129

Thalidomide Apology 50 Years Later
(Medical News TODAY 2012.09.01)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249763.php

 日本でも、被害者は1000人(中学生向け副読本より。いしずえの資料によれば、西ドイツで3049例、日本309例、英201例、カナダ115例など全世界で3900例。死産も加えると全世界で5800例と推定)にも及んでおり、今回の話題について日本でも是非報じてもらい、薬害について改めて考えるきっかけにしたいものです。(英国各紙は、健康被害の概要を伝えている)

サイドマイドと薬害(財団法人いしずえ)
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishizue/aboutthalidomide.html

サイドマイド(ウィキペディア)(→リンク

関連論文→PUBMED(FULL-text で読めるものや写真あります)

J-stageでも多くの論文・報告がヒットします→リンク(サリドマイド・奇形で検索)

YouTube→リンク (やっぱり衝撃です)

Thalidomide Victims

THALIDOMIDE THE FACTS

Thalidomide Awareness 2009

Germany’s Largest Drug Safety Scandal – Thalidomide, 50 years on | People & Politics

関連情報:TOPICS
 2011.05.10 薬害って何だろう?(中学生向け副読本)
 2011.07.23 薬害や公害等に関する情報提供サイト

8月1日 17:50、18:20更新


2012年09月01日 15:06 投稿

コメントが9つあります

  1. アポネット 小嶋

    AFP配信記事を時事通信が伝えています。

    独製薬会社、50年目の謝罪=「不十分」と被害者-サリドマイド薬害
    (時事ドットコム)
     http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012090100279

  2. アポネット 小嶋

    YouTube には実にたくさんの動画がアップされていました。

    特に2番目の動画“THALIDOMIDE THE FACTS”がわかりやすかったです。

    ブラジルで最近多くの被害者がいること、そして日本などで厳格な管理の下で現在使用されているという理由がよくわかります。

    また、きちんと学んでみようと思います。

  3. 小嶋さん、いつも素早いアップありがとうございます。

    いしずえ(サリドマイド被害者の福祉センター)にも
    この件でAFP通信から取材がありコメントを求められました
    (私、サリドマイド被害者の1人で、いしずえの理事長をしています)。

    日本ではグリュネンタール社ではなく、国内の製薬会社が独自にサリドマイドを販売したので、グリュネンタール社が今まで謝罪していなかったと知り、唖然とするばかりです。
    実は最近(1か月くらい前?)、グリュネンタール社がレンツ警告より、かなり前(たしか1年か2年も前)に「奇形の原因としてサリドマイドが疑わしい」という医師からの手紙を受け取っていたことを示す社内文書がマスコミに暴露され、ヨーロッパを中心に大きく報道されて問題になっていました。
    グリュネンタール社がそれを隠したままレンツ警告をマスコミが取り上げるまで対策を取らなかったことが被害を拡大させたのです。
    グリュネンタール社が、もっと早く対策をとっていれば日本でもより早く対策が取られたでしょう。
    謝罪は遅きに失したとはいえ当然で、今後はヨーロッパ各国と豪州等の被害者への補償(実は国によっては十分な補償を受けていない被害者も多いのです)はもとより、企業としてどのような社会的責任を果たすのかを注視しています。
    企業文化として薬害を起こさない取り組みを社内教育を含めて徹底してほしいと思っています。

  4. アポネット 小嶋

    佐藤さん、コメントをありがとうございます。

    (1:20追記 AFP配信記事に佐藤さんのコメントが載っていました)
    Thalidomide victims reject ‘insulting’ apology, 50 years on
    http://www.expatica.com/de/news/german-news/thalidomide-victims-reject-insulting–apology-50-years-on_242281.html

    動画をみると、1956年12月に最初の被害者が出ていたんですね。今のように情報が発達していない時代でしたので、医師や行政は解明するのに時間がかかったんでしょうか?

    それにしても、メーカーによる謝罪が初めてという見出しが並ぶのは本当に驚きです。

    日本でも全国紙できちんと紹介してもらいですね。

    佐藤さんは、2010年9月14日に開催された、第2回薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会で、ヒアリング参考人としてお話をされています。

    第2回薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会
     資料・スライド→リンク 議事録→リンク

    被害者の方たちも50歳前後になっており、風化しないよう、私たちも過去の教訓としてしっかり理解する必要があります。

    (9月2日14:30追記)
    佐藤さんの上記スライドでも、中年期から老年期の課題として、つぎのような点を挙げられています。まだ薬害は終わっていないんですね。

    薬による障害は全身に及び、身体構造が一般と異なることや、体の障害ゆえに強いられる無理な動きによる過度の負担等々で、健康を大きく損なう被害者が多数出てきています。また、ここ数年、壮年期を迎え、成人病や労働密度の強化、企業のリストラなどから健康と生活の両面の問題を抱える被害者が発生しています。

  5. AFP配信記事では「いしずえ」がなぜか”Sakigake”になってしまい、先ほどAFPに訂正をお願いしたところです。

    YouTubeの動画は、はじめて見ました(小嶋さん、紹介ありがとうございます)。

    全国紙では読売が独自の記事を出していますね。
    http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120901-OYT1T01146.htm

  6. シッフズジャパン鈴木

    推奨されていた2番目の動画みました。
    特に幼児の実写は、初孫を持う年齢になり、薬害再発防止を学び直したいと思わせました。

    佐藤様のコメントでは、グリュネンタール社がレンツ警告より、かなり前に「奇形の原因としてサリドマイドが疑わしい」という医師からの手紙を受け取っていたことを示す社内文書が暴露されたとのこと。会社の常識「機密は墓場まで」は通用しません。この点は特に、日本の薬害再発防止に活かしたいものです。

  7. アポネット 小嶋

    CNNとAFPが日本語の記事を配信しています。

    サリドマイド薬害の独製薬会社、50年の沈黙を経て謝罪
    (AFP BB NEWS 2012.09.02)
    http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2898685/9448906

    サリドマイド薬害の独メーカーが50年後の謝罪 被害者は不満表明
    (CNN 日本版 2012.09.02)
    http://www.cnn.co.jp/world/35021221.html

    (英字原文)
    Survivor: German firm’s apology for birth defects drug ‘not enough’
    (CNN 2012.09.01)(動画あり)
    http://edition.cnn.com/2012/09/01/health/germany-thalidomide-apology/

    ツイッターでも記事へのツイートが多く、関心の高さをうかがえるのですが、一方で、日本人でも多くの被害者が出ているという事実をどのくらいの人が知っているのだろうかと感じました。

    今回全世界への記事配信で、関心が高まり私のように上記の動画を見て真実を確かめようとしている人も出てくると思います。

    被害者のプライバシーという問題もありますが、ITで情報が共有できる時代ですので、日本でもこういった教育的動画があれば、いつでも見れるようにしておくといいのではないかと思いました。

  8. アポネット 小嶋

    関連ブログです。リンクありがとうございます。

    50年かけてやっとサリドマイド開発会社が薬害被害者に謝罪した
    (副業フリーランス英独翻訳者のメモ帳 2012.09.02)
    http://marburgaromaticschem.blog3.fc2.com/blog-entry-1959.html

  9. アポネット 小嶋

    関連ブログです。

    薬害サリドマイド、50年目の謝罪
    (弁護士「古賀克重法律事務所」ブログ版 2012.09.03)
    http://lawyer-koga.cocolog-nifty.com/fukuoka/2012/09/post-51a9.html

    豪州ではまだ完全な和解には至っていないようです。