臨床試験データはすべて開示されるべき(欧州)

 タミフルの有用性について行われたコクランのシスティマテイックレビュー(TOPICS 2012.01.18)では、必要なデータが製薬会社から開示されず、十分な評価が行えなかったことが問題視されましたが、このレビューアーらが改めてPLos Medicine 誌で、臨床データの全ての開示を求める記事を10日掲載しています。(今後も関連記事が出てくると思います。一部、翻訳・解釈に自信がないところがありますのでご了承を。原著でご確認下さい)

The Imperative to Share Clinical Study Reports: Recommendations from the Tamiflu Experience
PLoS Med 9(4): e1001201. Published: April 10, 2012)
http://www.plosmedicine.org/article/info:doi/10.1371/journal.pmed.1001201

 レビューアーらは、「承認された薬を服用して、代金を払うのは一般の人たちである、したがって、一般の人たちはそれらの薬に関する完全な情報にアクセスできるようにすべきである。」などとして、「臨床試験データーは企業秘密(商業的な秘密の情報)と考えるべきではない」と述べています。

 これに対し、欧州の医薬品規制の担当者による異例の見解も10日付けで同誌に掲載されています。

European regulators propose way forward for publication of full clinical trial data
(EMA 2012.04.11)

Open Clinical Trial Data for All? A View from Regulators
PLoS Med 9(4): e1001202. Published: April 10, 2012)
http://www.plosmedicine.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pmed.1001202

 上記見解は、EMA、AESSAPS、MHRAの担当者とオランダの医薬品評価委員会(CBG-MEB)の担当者により共同執筆されたもので、コクランのレビューアーらの「臨床試験データーは企業秘密(商業的な秘密の情報)と考えるべきではない」とする意見には同意するものの、「全てのデータをオープンにすると患者の守秘性が侵害されるリスクがある」「独立した研究者だからといって利益相反がないという考えには疑問がある」として、臨床試験データの全てをオープンにはすることには懸念があるなどとした見解を述べています

 そのうえで、見解ではデータを公開するための方法(これは私にはよく理解できず紹介できません。原著で確認をお願いしま~す)を示し、この問題についての議論は歓迎する用意があることも明らかにしています。

関連情報:TOPICS 
  2011.01.18 タミフルの有用性に疑問(コクランレビュー)

参考:
Drug data should be made public: report
(豪州ABC Science 2012.04.11)
http://www.abc.net.au/science/articles/2012/04/11/3474805.htm
Drug firm Roche faces criticism over swine flu drug data
(Channel 4 News 2012.04.11 動画あり)
http://www.channel4.com/news/
drug-firm-roche-faces-criticism-over-swine-flu-drug-data

Drug trial results must be made public
(The Coversation 2012.04.11)
http://theconversation.edu.au/drug-trial-results-must-be-made-public-6358
EMA calls for open access to clinical trial data after Tamiflu concerns
(PMLiVE 2012.04.11)
http://www.pmlive.com/pharma_news/
ema_calls_open_access_clinical_trial_data_tamiflu_concerns_398270


2012年04月12日 09:51 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    薬害オンブズパースン会議の注目情報に解説記事が掲載されています。

    コクラングループの臨床試験データ全面情報公開の要求に行政官がプロスメディスン誌で見解
    (薬害オンブズパースン会議 注目情報 2012.08.23)
    http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=361

    記事を書く際に難義したデータ公開すため方法については、

    必要なのは3方面からのアプローチである。

    1)個人情報保護のための適切なスタンダードの確立
    2)確立したメタアナリシスの質スタンダード、または他の確立したデータ分析の採択
    3)データ共有のためのルール作り:
    市販後の観察データについては、欧州規模で生データ共有のためのガイダンスが策定された。同様の試みをランダム化比較試験データでも追求する。

    としています。