糖尿病患者へのラジレスとARB/ACEの併用は禁忌(欧州医薬品庁)

 欧州医薬品庁(EMA)は17日、アリスキレン(商品名:ラジレス、海外では配合剤もあり)についてのレビュー結果を明らかにし、ARBまたはACE阻害剤とラジレスとの併用については、糖尿病患者及び中等度から重度の腎障害への患者については禁忌とする勧告を行いました。

European Medicines Agency recommends new contraindications and warnings for aliskiren-containing medicines
(EMA Press release 2012.02.07)

Questions and answers on the review aliskiren-containing medicines
(EMA 2012.02.16)

 EMAでは12月に予防的措置として糖尿病患者へのラジレスとARB/ACE阻害薬との併用を行わないとした勧告(TOPICS 2011.12.24、日本でもメーカーにより同様の措置がとられる(TOPICS 2011.12.28))が行われていますが、その後EMAのCHMP(医薬品委員会)がレビューを開始し、今回の勧告に至っています。

 EMAではこれらを併用した場合、腎障害がある患者及び糖尿病患者(I型、II型)において、低血圧・失神・卒中・高カリウム血症などの有害なアウトカムのリスクが示唆されたとして、今回の勧告を行ったとしています。

 EMAでは、これら患者が併用療法を行っている場合は併用を中止し、必要に応じて他の降圧療法を考慮すべきとした他、他の患者についても併用療法についてのリスクベネフィットを慎重に考慮すべきだとしています。

 つまり、ラジレスとARB/ACE阻害薬との併用療法そのものについても、その臨床的意義に大きな疑問が投げかけるものとなっています。

 日本では、昨年末にEMAに準じた対応がとられているので、おそらく同様の対応がとられることでしょう。

Product Information as approved by the CHMP on 16 February 2012, pending endorsement by the European Commission(新しい製品情報→リンク

 Novartis to revise product information in the European Union for high blood pressure drug RasilezR following assessment by CHMP
(Novartis Media Relase 2012.02.17)
http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2012/1587016.shtml

海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.3
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/03120202.pdf#page=10

関連情報:TOPICS
 2011.12.24 糖尿病患者へのラジレスとARB/ACE併用は留意が必要
 2011.12.28 糖尿病患者へのラジレスとARB/ACEの併用回避を勧告
 2012.01.11 ラジレスとARB/ACEの併用は高カリウム血症のリスクを高める
 2012.01.24 ラジレス情報(カナダ)


2012年02月18日 00:23 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    ALTITUDE をキーワードにPubMed で検索したら、下記の論文がヒットしました。

    Baseline characteristics in the Aliskiren Trial in Type 2 Diabetes Using Cardio-Renal Endpoints (ALTITUDE)
    (J Renin Angiotensin Aldosterone Syst. 2012 Feb 14. [Epub ahead of print])
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22333485
    http://jra.sagepub.com/content/early/2012/02/14/1470320311434818.abstract
    http://jra.sagepub.com/content/early/2012/02/14/1470320311434818.full.pdf
    (今のところオープンアクセス)

    Conclusionsはハイリスクの2型糖尿病の人の心臓・腎臓に対して潜在的安全で有用と決定づけられるとなっているんですけどね。

  2. これはデザイン論文ですよね。
    結論は,この試験で(うまくいけば)併用の有用性が証明できるだろう(”will” determine)って。
    この状況で読むと痛々しいですが。

  3. アポネット 小嶋

    ご指摘ありがとうございます。

    併用療法の有用性を期待してこのデザインで臨床試験したけど、中止したということですね。

    今のところ、データとしてでてきたのは、やはりHealth Canadaのもの(原文和訳)だけみたいですね。

  4. アポネット 小嶋

    ノバルティスファーマ社は22日、スイス本社17日発出の英文のプレスリリースの日本語訳を掲載しています。

    ノバルティスは欧州医薬品委員会(CHMP)の評価に基づき
    欧州において高血圧治療薬「ラジレス®」の添付文書を改訂
    (ノバルティスファーマ株式会社2012.02.22)
    http://www.novartis.co.jp/news/2012/pr20120222_01.html

    冒頭「この内容は、現在のところ欧州内での改訂であり、日本の添付文書については、PMDAと協議中です。」となっています.

    去年末の予防的措置は厚労省の指示ではなく、自主的な注意喚起のことを考えると、果たして添付文書が禁忌となるかどうかは微妙ですね。(中途半端で現場では困るけど)