SSRI・SNRIによる他害行為発生のリスク因子

 9月29日に公表された「医薬品・医療機器等安全性情報261号」で、医薬品医療機器総合機構に集積された企業からの自発報告データのうち、医薬品等安全対策部会において精査されたSSRI/SNRIによる他害行為等の副作用報告について、他害行為発生のリスク因子をもとにした症例の検討の結果概要が掲載されています。

医薬品・医療機器等安全性情報261号(厚労省2009年9月29日掲載)
 http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/261.pdf

 この調査では、女性111症例,男性110症例(不明1症)の計222症例について、患者背景因子別の全体集計と、他害行為を下記の3つのレベルに分け、集計を行っています。

レベル0 他害行為に関する具体的な情報は記載されていないものの、報告された副作用名がMedDRA標準検索式(SMQ)「敵意/攻撃性」カテゴリーに該当するもの、FDA Talk Paperで記載された他害行為関連の症状名に該当するもの、又は上記以外で企業にて他害行為に関する副作用であると判断された症例
レベル1 殺意等の傷害につながる可能性のある症例であり,例えば,暴言を吐く,カッとしやすくなるといった経過情報が記載された症例
レベル2 殺人等の傷害の症例であり、例えば、刃物で切る、家族・他患者に対する暴力行為といった経過情報が記載された症例

解析結果によれば、次の様なことがわかったそうです。

  • 他害行為レベル別に見ると、女性ではレベル0の割合が男性より高く、男性ではレベル2の割合が女性より高かった。女性の症例でレベル0の割合が高いことから、他害行為企図・念慮にとどまっている傾向がある
  • 他害行為レベルが高いほど年齢が下がる傾向が見られた。
  • 「大うつ病又はうつ病」の診断がある症例に比べて「うつ状態」「不安障害」「強迫性障害」の症例では他害行為レベルが高い傾向が見られた。また、併存障害「有」の症例では他害行為レベルが高かった。
  • 過去に衝動的行為が有った:症例では他害行為レベルが高い傾向が見られた。

 私が注目するのは、上記の3番目の「うつ状態」「不安障害」などで他害行為のレベルが高い傾向にある点です。このことは、「大うつ病又はうつ病」などのきちんとした診断がついていない症例において、他害行為が起こる可能性が高いことを示しており、「うつ病」であるとはっきりと診断していない患者さん(パーソナリティ障害による訴えや自称「うつ病」といった患者さんも含む?)に、精神科の専門医以外の医師からSSRIが処方された場合には、特に注意が必要ということになるのではないかと考えます。

関連情報:TOPICS
  2009.05.09 SSRI・SNRIに対し、衝動性亢進の注意喚起を指示
  2009.06.19 日本うつ病学会、「抗うつ薬」の患者・家族向け見解を発表


2009年09月30日 00:14 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    11月6日に開催された平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会に三環系、四環系抗うつ薬等と攻撃性、他害行為等の副作用報告をまとめて提示しています。

    資料2−5 三環系、四環系抗うつ薬等と攻撃性等について
     (厚労省11月13日掲載 リンク再設定)
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-11o.pdf

    厚労省では「敵意/攻撃性」等の副作用報告が認められない成分も含めて三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬びトラゾドン塩酸塩については、類似の薬理作用により抗うつ作用が得られていると考えられることから、SSRI及びSNRIと同様に使用上の注意を改訂し、注意喚起を行う必要があると評価されたとしています。