自衛隊の装備品としての正露丸

 この数ヶ月、汚職疑惑で自衛隊の装備品問題が話題になっていますが、この装備品に正露丸が100年ぶりに復活したと産経新聞が伝えています。

 産経新聞によれば、「正露丸」はこれまでも、部隊ごとに購入され、駐屯地の救急箱などに置かれているケースはあったそうですが、今年3月の国連ネパール支援団(UNMIN)に参加する自衛隊員に「セイロガン糖衣A」を防衛省の補給統制部が一括購入して、海外部隊に初めて支給したことから、今回の装備品として100年ぶりの復活(納入は7個だったそうですが)となったとのことです。

 正露丸はもともと、陸軍が脚気予防薬として開発したものだったそうですが、日露戦争の前、腸チフスの研究中にクレオソート錠を飲ませていた被験者の便から細菌が検出されなかったことから、感染症の予防対策として陸海軍で使われるようになったようです。

 そして、当時軍で大きな問題になっていた脚気(死亡者が少なくなかった)も予防できるのではないか(当時は、ビタミンの概念がなく、脚気も菌によっておこるのではないかとして、正露丸で脚気菌が死滅できるのではないかと考えられた)として、大量生産が行われた時期もあったそうです。

 また、ご存知の方はいると思いますが、「正露丸」は第二次世界大戦までは、ロシアを征服するという意味を込めて「征露丸」との標記が行われていました。服用を奨励する意味もあったそうですが、戦後は「征」の標記が戦争を思わせるとして「正露丸」に改められ、現在に至っています。

 正露丸というと、一時期安全性問題が話題になるなど、医薬品としての評価は分かれるところですが、今回の装備品として採用は、効能・効果に「国のお墨付き」を与えることとなり、販売へのプラスの影響があるかもしれません。

 ただ、たんぱく質変性作用による腸管粘膜の障害や肝機能障害の報告もあるので、過剰摂取や長期連用は好ましくないようです。高齢者などは胃腸薬として常用している人はまだいるようで、食あたり時など、限定的な使用にとどめるよう販売時に注意は必要です。

関連情報:医師・薬剤師・販売店さま向け学術情報(大幸薬品株式会社)
       http://www.seirogan.co.jp/medical/index.html
      正露丸問題は・・・・(内科開業医のお勉強日記 2005.5.18)
       http://intmed.exblog.jp/1943829/
      正露丸(セイロガン)とはどんな薬なのか?(宮千代加藤内科医院HP)
       (資料は古いようです)
       http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/seirogan-01.html

参考:脚気一と征露丸(自衛隊ニュース2002年12月15日)(リンク切れ)
     http://www.mil-box.com/news/2002/20021215_10.html
    Fuji Sankei Business (11月14日)(リンク切れ)
     http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200711140038a.nwc
    堀美智子監修:OTC薬ガイドブック,じほう(2007)


2007年11月14日 23:00 投稿

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