処方箋医薬品はどういう経緯で決められたか(メモ)

零売問題で論点となるのは、処方せん医薬品(現在は処方箋医薬品)がどのように決められたかですが、ブラックボックスであるところが大きいと思っています。

もともとは旧薬機法改正に合わせて、不適切な零売排除や適正使用を一層徹底するために要指示医薬品の範囲を拡大する目的で作られたとの当時の議事録や回顧録などには記録があります。

ただ公式資料となるとこの程度の資料しか見当たりません。

【厚労省 2004.09.30開催】
薬事・食品衛生審議会薬事分科会・資料
https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11gs20.nsf/0/49256fe9001b533f49256f250004cb82

平成17年4月施行分改正薬事法関連事項について
https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11gs20.nsf/0/49256fe9001b533f49256f250004cb82/$FILE/siryou24.pdf

議事録
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/09/txt/s0930-7.txt

当時を振り返っても、私自身も処方せん医薬品の指定で混乱したということ以外はあまりよく覚えていませんで、結局、薬事分科会でこのあいまいな案だけを提示、あとは厚労省の事務局の裁量で決めて、事後承諾ということだったのではと今になると思っています。

@yu29ozaki さんが当時の経緯を調べて下さったんですが、やはり処方せん医薬品が、設定された経緯や、基準はブラックボックスで、おそらく限られたの技官たちだけで決められたのではないかと推測されます

一方、何を基準に処方箋医薬品ではない医療用医薬品が指定された背景には、医師会にはきちんと受診後に処方される仕組みを残す一方で、財務省が当時から考えていた処方箋医薬品ではない医療用医薬品(=OTC類似薬)については将来の保険外しを念頭に忖度して決めたのではないかと今でも思っています。

実際、それを裏付ける記事があります

【北海道医報 2005.04.01】
改正薬事法(中川俊男)
http://www.hokkaido.med.or.jp/cmsdesigner/dlfile.php?entryname=medical_report&entryid=00011&fileid=00000299&/1039-04.pdf&disp=inline

この通称「非処方せん薬」には、3匹の子羊と呼ばれる年 間の診療報酬請求額が900億円に相当する漢方薬、パップ剤、ビタミン剤、のほか抗ヒスタミン剤や抗高脂血症剤の一部などが含まれています。非処方せん薬は、薬価収載が継続 され、医師が処方すれば従来と同じく保険給付されますが、処方せんがなくても自費で購入が可能となります。

厚生労働省は、この非処方せん薬についても、処方せんがなければ販売しないようにとの行政指導を行うとしていますが、厳しい罰則規定がある処方せん医薬品とは違い、あえて罰則規定を設けないとしています。

「非処方せん薬」の全額自費での購入に 療機関を受診せずに済むという利便性を重ね合わせて考えてみると、患者の立場なら、「再診料+3割負担」の自己負担額を負わされるより、安価な薬やパップ剤なら、患者はむしろ、再診せずにまっすぐ薬局に向い処方せんなしで薬品を購入するほうへ流れていくと考える方が自然ではないでしょうか。

薬局側についても同様のことが言えます。 通知による行政指導に罰則やペナルティーがない限りは、強く販売を求める患者に対して、薬局に販売自粛のインセンティブなど働かず、結果として、患者が処方せんなしで薬品を購入するためのハードルが低くなるだけ であると考えます。

懸念されるのは、全額自費で購入する患者 が増えれば、厚生労働省が「非処方せん薬」 を薬価収載から外し、同時に保険給付も外す理由付けを与えることになるのではないかと危惧されます。 今後、非処方せん薬の取り扱いについて安全性の確保という観点からも、処方せんなしでは販売しないようにとの、強力な行政指導を求めてゆくべきであると考えています。

【保団連 2005.10.07】
医薬品の保険給付外しを加速する「改正」薬事法の危険性
https://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/051007yakuji.html

従来は医療用医薬品のなかで医師による処方せんまたは指示がなければ使用できない「要指示薬」以外の医療用医薬品(成分ベースで全体の約3分の2)は、「医師の使用を前提としながら、処方せんが必要ない薬」ということであった。この“法のすき間”を突く形で、一部の薬局・薬店やウエブサイト上で、「要指示薬」以外の風邪薬、鎮痛剤などの医療用医薬品を仕入れ、小分けにして直接消費者に販売するいわゆる「零売」(れいばい)が行われてきた。零売を取り締まる法的根拠は旧薬事法に存在せず、行政はあくまで「好ましくない」としか対応できなかった。

改正薬事法の目的の一つは、こうした医師の処方せんなしに医療用医薬品を販売している事例への規制を強化し、医療用医薬品は原則としてすべて医師の処方せんを前提とする処方せん薬とし、それ以外は一般用医薬品に再分類することであったはずである。

ところが、04年9月の薬事・食品衛生審議会薬事分科会で示された「処方せん医薬品指定基準」(「耐性菌が生じやすい、重篤な副作用が発現しやすい、医学的検査の必要性など本来は要指示薬に指定すべき品目」と厚労省が考えたもの)を経て、今年2月10日に官報告示された医療用医薬品の分類では、処方せん薬と指定されたのは従来の要指示薬の大半に注射剤全般や麻薬・血液製剤などを追加した約3分の2にとどまった。

これら以外の医療用医薬品については、「原則」として「効能・効果、用法・用量、使用上の注意などは医師、薬剤師などの専門家が判断、理解できる記載となっているなど医療において用いられることが前提」(05年3月30日付通知)としつつも、罰則や救済・補償規定はなく、薬局・薬店などで処方せん薬以外の医療用医薬品(いわゆる非処方せん薬)を販売することを容認した。

漢方製剤、ビタミン剤、パップ剤にとどまらず、ペリアクチン、ロペミンなど要指示薬であったのに非処方せん薬に分類されたものや、逆に要指示薬ではなかったのに処方せん薬になったもの(メバロチン、タケプロンなど主として売上高上位の医薬品)もある。さらに、常用量で副作用の発現率が高い劇薬指定の多くが非処方せん薬に指定された(ロキソニンなど)。しかも、この個別分類の根拠は示されず、まったくのブラックボックスである。

患者が医師の診断によらず、薬局・薬店などで広範囲の医療用医薬品を全額自費で購入できるようになり、その風潮が定着していくならば、漢方製剤、ビタミン剤、パップ剤を筆頭に薬価収載から外し、同時に保険給付も外す理由付けを与え、政府・厚労省がねらう医薬品の保険給付外しを加速させる危険性がある。また、非処方せん薬の一般医薬品への転用(スイッチOTC化)や規制改革・民間開放推進会議が要求しているコンビニ販売医薬品への転化もいっそう強まるであろう。

当時から、処方箋医薬品ではない医療医薬品の存在は、ビタミン剤の保険外しや零売による薬局からの直接購入を警戒していたことが伺えます。

今般、財務省が狙っていたこういった思惑は、維新が実現すべく保険外しを考えていましたが、政権政権に入ってからはトーンダウンして頓挫したことは記憶に新しいところです。

結果、こういった思惑が医療用でない非処方箋医薬品の取り扱いが今日までずっと混乱してきたのではないかと思います。

処方せん医薬品等の取扱いについて
(厚生労働省医薬食品局長 薬食発第0330016号 2005年3月30日)https://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/170330.pdf

処方箋医薬品ではない医療用医薬品の取り扱いについては上記の通りで、当時から「一般用医薬品 の販売による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合などに限る」とされていました。

また指定にあたっては、こういう裏話があったそうです

【新薬学研究者技術者集団・新しい薬学をめざして 34:99-101(2005)】
「処方せん医薬品」の怪
https://pha.jp/shin-yakugaku/doc/04_syohouseniyakuhin.pdf

90年代後半から2000年代初めにかけて医療用医薬品の販売がいろいろなところでいろんな形で広がりだしはじめました。この事態を重く見た当時の厚労省・宮島医薬局長は日本薬剤師会の当時の佐谷会長に相談し、佐谷氏は要指示薬を廃止し医療用医薬品を全面的に「処方せん医薬品」にする代わりに、宮島氏は「要薬剤師薬」をつくることを約束したといわれています。

こうして「処方せん医薬品」は2002年の薬事法改定に盛り込まれ、この4月より施行されることになりました。

「要薬剤師薬」は、日本薬剤師会・会長交代に伴いその詰めもあやふやになってしまい、また「処方せん医薬品」も、実施にあたり医療用医薬品すべてでなく要指示医薬品を拡大したものと当初こうそうからかけ離れらたものとなってしましました。

  • 「処方せん医薬品」以外を多く残したという事は、処方せん、つまり医療で必要ないということであり保険給付削除対象ということは、いつまでもついてまわり財務省も狙っています。
  • 今までも分割販売されていた多くのものは「要指示薬」以外であり、医療用医薬品の約1/3を「処方せん医薬品」以外にしたことは、分割販売できる対象医薬品を多く残した事になります。
  • そもそも法律の盲点をついた医療用医薬品の販売規制を是正するのが今回の目的だったはずでしたが、「処方せん医薬品」に指定されなかったものについては行政指導でその販売を自粛してもらうとしていますが、法的な販売規制はなく、医療用医薬品の分割販売の問題解決にはなっていません。

【医療と社会 2023年 33巻 2号】
〈医療政策ヒストリー座談会録〉 第9回「2002(平成14)年薬事法改正」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/iken/33/2/_contents/-char/ja

2) 三師会との調整(p174-175)

新田:
三師会との間での調整については何かございましたか

國分:
今日の座談会の予習で、当時企画法令係長だった三好さん達から先日、色々リマインドのためのレクを受けてきたのですが、日医(日本医師会)からは要望が1つあったという話がありました。新潟のあるドラッグストアチェーンが医療用医薬品を売っており、それはいかがなものか、というのが、 日医側からのお話でした。

佐藤:
零売(薬局が医療用医薬品を処方箋なしで顧客に分割販売すること)の話です。

圏分:
で、規制強化をするということになり、要指示医薬品を処方箋医薬品という形で見直す一方で、副作用被害報告の義務を医療機関にも課すということになったんですよね。私は忘れていましたが、これは画期的なことだったと三好さんが覚えていました。バーターというわけではないんでしょうが、感染症や副作用への対応はきちんとしないといけないという思いは日医と共通していたということだと思います。あの時の日医の常任理事は確か…。

佐藤:
菅谷(忍)さんです。ですから霜鳥総務課長と,菅谷常任理事の間で話をつけておられました。

新田:
これは霜鳥課長が動かれたのですね。

國分:
霜鳥さんはいわば渉外専門でしたので、日医とか議員会館とかには、足繁く通って情報交換をされていました。菅谷常任理事とは大変円滑だったようです。

制度改正の説明を色々している中で、日医側にこの機会に要望はないか、というお話をしたところ、新潟のドラッグストア対策を何とかしてくれという話が来たんだと、記憶しています。処方箋医薬品になって大きく変わったことって、何でしたっけ?

佐藤:
処方箋がないと売れない、というカテゴリーを作ったのです。要指示医薬品は処方箋なしでも薬局の薬剤師が売ることができたので。

磯部:
あの時は要指示医薬品を要処方箋の医薬品にしました。そこは実態的に変わりません。医療用医薬品は通知も含めて基本は処方箋が必要であると、全て処方箋が必要ということまではしていませんが、そこはちゃんとやったんですという説明はしました。注射薬を全て入れるというようなこともありました。これまでの整理の仕方がわるかったのですよ。

佐藤:
処方箋がなくても売れるカテゴリーは今でも残っています。

何と医師会とバーターで制度を取り入れたとも読み取れますよね。

このような経緯で決められた、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)の取り扱いを、あのような判決文で否定していいのかどうかは考えさせられるところです。

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2026年09月20日 17:38 投稿

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