植物由来の非選択的β2アゴニストであることから、WADAの禁止リストとなっているヒゲナミンですが、類似の構造となっているコクラウリン(Coclaurine)についても、意図しないドーピングリスクを軽減するための規制上の検討の必要性があるとした論文が出されています
【J Nat Med. 2025 Aug 2】
Metabolism of coclaurine into the WADA-banned substance higenamine: a doping-relevant analytical evaluation of Kampo extracts
https://link.springer.com/article/10.1007/s11418-025-01940-4
【公益財団法人一般用医薬品セルフメディケーション振興財団 2025.06.30】
漢方薬の適正使用とセルフメディケーションの推進-アスリートの視点から-
(令和6年度研究結果報告書)
https://www.otc-spf.jp/wp-content/uploads/2025/05/r06b-04.pdf
研究者らは、ヒゲナミン類似構造を持つ(メチル化誘導体)であるコクラウリンを投与したラットでヒゲナミンの尿中排泄が判明されたことから、ヒゲナミンとコクラウリンを含む生薬を同定するために、128種類の漢方エキス製品を分析。
6種類の生薬(厚朴、山椒、大棗、辛夷、生姜、升麻)にヒゲナミンが含まれることが新たに確認された一方、9種類の生薬(桂皮、厚朴、呉茱萸、細辛、山椒、升麻、大棗、加工ブシ、黄柏)にコクラウリンが含まれることが新たに確認されたそうです。
下記レポートでも、ヒゲナミンは附子、呉茱萸、細辛、南天実、丁子などに含有とする一方、コクラウリンもヒゲナミンと類似の構造を持つことから、辛夷についてもアスリートの使用には注意喚起がなされるとしています。
神戸薬科大学 薬用植物園 レター vol.10
(神戸薬科大学 薬用植物園 2021.2.25)
https://www.kobepharma-u.ac.jp/botanical-gardens/news/docs/2021-2.3-letter.pdf
丁子といえばはクローブという名前で食品としても広く利用されていますし、健康補助食品の中にもこの成分を含むものがあるようです。
また山椒といえばうなぎを食べるときの風味付けにも使用使用されていますね。
こういった食材のでの摂取量がドーピング検査に影響するかわかりませんが、生薬由来の食材や香辛料についても注意する必要かもしれません。
(参考)
2017年禁止表国際基準の Higenamine (ヒゲナミン)に関する注意喚起
(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構、ソースは宮城県薬HP 2016.12.19)
https://www.mypha.or.jp/images/file/playtrue.20161228.pdf
ヒゲナミンに注意! 意図しないドーピングの危険がある植物中のアドレナリン類似物質
(スポーツ栄養Web 2022.04.22)
https://sndj-web.jp/news/001739.php
Higenamine in Plants as a Source of Unintentional Doping
(Plants (Basel). 2022 Jan 27;11(3):354)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8838985/
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2017.01.11 アスリートに生薬配合製品は勧めない方がいいかも(リンク切れあり)
2025年08月10日 13:13 投稿