児童生徒がいる空間での次亜塩素酸水の噴霧はNG?(文科省通知)

 この記事についてはコメント欄で追記があります。

 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、需要に追い付かない状態になっている消毒用アルコールの代用品として、次亜塩素酸水が注目を集めているところですが、5月29日公表された、独立行政法人製品評価技術基盤機構によるファクトシートの公表で波紋が広がっています。

新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第2弾)
~物品への消毒方法の選択肢がさらに広がります~
(独立行政法人製品評価技術基盤機構 消毒手法タスクフォース 2020.05.29)
https://www.nite.go.jp/information/osirase20200529.html

次亜塩素酸水の販売実績、空間噴霧について(ファクトシート)
https://www.nite.go.jp/data/000109500.pdf

 経産省ではこのファクトシートについて、本資料は、新型コロナウイルスの消毒において期待される「次亜塩素酸水」について、その販売実態や空間噴霧をめぐる事実関係を、現時点までに得られた情報に基づいて経済産業省がまとめたものであり、経産省やNITEとして何らかの見解を示すものではありません。今後、新たな知見が得られれば随時修正を行って参りますとしてますが、使用の見直しの検討をにじませています。

新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第二弾)
(経産省 2020.05.29)
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005.html

 この発表を受け、6月4日文科省は、次亜塩素酸水の噴霧器の使用については、その有効性及び安全性は明確になっているとは言えず、学校には健康面において様々な配慮を要する児童生徒等がいることから、児童生徒等がいる空間で使用しないなどとした、「学校における消毒の方法等について」という事務連絡を発出しています。

学校における消毒の方法等について
(文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 事務連絡 2020.06.04)
https://www.mext.go.jp/content/20200604-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
(何で削除するんだよ! 2020.06.18確認)

以下抜粋しておきます

1.日常的な消毒について
①消毒薬等について

  • 物の表面の消毒には、消毒用エタノールや0.05%の次亜塩酸ナトリウム消毒液*を使用します。また、一部の界面活性剤で新型コロナウイルスに対する有効性が示されており、それらの成分を含む家庭用洗剤を用いることも有効です。
  • 次亜塩素酸水は、「次亜塩素酸ナトリウム」とは異なるものであり、新型コロナウイルスに対する有効性についてはまだ十分確認されていません。
    *児童生徒等には次亜塩素酸ナトリウムを扱わせないようにしてください。

②消毒の方法について

  • 児童生徒等がよく手を触れる箇所(ドアノブ、手すり、スイッチなど)や共用物は1 日に1回以上、消毒液を浸した布巾やペーパータオルで拭きます。
  • トイレや洗面所は、家庭用洗剤を用いて洗浄します。
  • 消毒作業中に目、鼻、口、傷口などを触らないようにしてください。
  • 換気を十分に行います。

〇エタノールを使用する際の注意点について

  • エタノールを布等に含ませ、消毒対象を拭き、そのまま乾燥させます。
  • 揮発性が高く、引火しやすい性質があるため、電気スイッチ等への直接の噴霧は故障や引火の原因になります。

〇次亜塩素酸ナトリウムを使用する際の注意点について

  • 次亜塩素酸ナトリウムで消毒する際は、必ず手袋を着用します。なお、ラテックス製ゴム手袋を使用する場合はラテックスアレルギーに注意が必要です。
  • 手指消毒には使用しないでください。
  • 色落ちしやすいものや腐食の恐れのある金属などには使用しません。
  • 非常にアルカリ性が高く、薄めた液でも材質によっては変色や腐食を起こす場合があることから、拭いた後は必ず清潔な布等を用いてしっかり水拭きし、乾燥させます。
  • 希釈した次亜塩素酸ナトリウムは使い切りとし、長時間にわたる作り置きはしないようにします。
  • 次亜塩素酸ナトリウムの噴霧は、吸ったり目に入ったりすると健康に害を及ぼす可能性があるため、絶対に行わないでください。
  • 製品の使用上の注意を熟読の上、正しく取り扱ってください。

〇次亜塩素酸水の噴霧について

  • 次亜塩素酸水の噴霧器の使用については、その有効性及び安全性は明確になっているとは言えず、学校には健康面において様々な配慮を要する児童生徒等がいることから、児童生徒等がいる空間で使用しないでください。

〇新型コロナウイルスに対して効果が確認された界面活性剤を含む洗剤について

  • 効果が確認された界面活性剤を使用している洗剤のリストが独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページ(https://www.nite.go.jp/information/osirasedetergentlist.html)で公開されています。
  • 使用する際には、経済産業省及びNITE が作成したパンフレット「ご家庭にある洗剤を使って身近なものを消毒しましょう」(https://www.nite.go.jp/data/000109484.pdf)を参考としてください。
  • 手指、皮膚には使用しないでください。
  • スプレーボトルでの噴霧は行わないでください。

これに先立ち、日本薬剤師会学校薬剤師部会が動画を作成しています。学校薬剤師は必見です。

動画16:06あたりからは次のことについて解説があります

  • 次亜塩素酸水の空間噴霧はしないでください
  • 次亜塩素酸水は人体に使用しないでください

【動画チャンネル日本薬剤師会 2020.06.03】
新しい生活様式における学校の衛生管理(環境消毒編)

 それにしても、消毒薬(エタノール)の供給や、代替薬も含めた有効性や安全性についての情報など、経産省にかき回されて、厚労省、特に薬系技官は何をやっているんだろうと思います。

6月17日コメント欄で追記(タイトルに?を付記しました)


2020年06月05日 12:32 投稿

コメントが3つあります

  1. 今回の騒動でも、厚労省やそこに勤務する薬系技官は、クルーズ船のお世話や、機材の調達に振り回されこそすれ、政策の立案や提言において活用されなかったように見えます。
    これは、厚労省が規制官庁として、処分権限を持つだけに、自縄自縛に陥っていたとみることもできるかと思います。
    他方、経済産業省は、産業振興を旨としていることから、様々なことに口を出すことで、存在を際立たせることが修正となっており、極端には騒がせて何ほの世界です。
    そもそも、阿部のマスクを始めとしたものの確保に大勢の厚労省職員(今でも100人を超える者が従事していると聞きます。)が動員され、本来の医薬品審査や、食品安全の取組みが停滞しているとの苦情があります。

  2. アポネット 小嶋

    お久しぶりです

    あとはアルコール供給対策への疑念ですよね。

    早い時点で代用品を認めることや、酒税の緩和、薬局へ優先配布して、手指消毒薬の自家製剤とか、いろいろ出来たはずです。これも経産省が業界を保護するために、厚労省を押さえ込んでいたのではないかと思っています。

    さらに特定アルコール(高濃度アルコール)の無償配布も、要望をとりながら、配布はかなり遅れていて、本県では地域薬局の優先順位は一番最後。しかも数量はごくわずか。県の薬務の力はこんなものかと。(地域薬剤師会が中心になって取り組みをしているところもありますが)

    かかりつけだ、対人業務をやれという一方で、地域に必要な医薬品の供給をサポートできないことは地域薬局の信頼感低下にもつながりかねません。

    地方も含め、薬系技官はこの間何をやってきたのかという思いです。

    たぶん、改正薬機法の省令づくりに時間がとられているんでしょうけど。

  3. アポネット 小嶋

    6月16日、文科省はこの通知文を踏まえた、学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~の更新版で、上記の「日常的な消毒について」が追記されています。

    学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(文科省 2020.6.16 Ver.2)
    https://www.mext.go.jp/content/20200616-mxt_kouhou01-000007426_01.pdf

    ところが、次亜塩素酸水の噴霧についての部分だけが修正されています。(21ページ)

    〇次亜塩素酸水の噴霧について
    ・ 「次亜塩素酸水」を消毒目的で有人空間に噴霧することは、その有効性、安全性ともに、メーカー等が工夫して評価を行っていますが、確立された評価方法は定まっていないと言われています。メーカーが提供する情報、厚生労働省などの関係省庁が提供する情報、経済産業省サイトの「ファクトシート」などをよく吟味し、使用について判断するようお願いします。なお、児童生徒等の中には健康面において様々な配慮が必要な者がいることから、使用に当たっては、学校医、学校薬剤師等から専門的な助言を得つつ、必要性や児童生徒等に与える健康面への影響について十分検討して下さい。

    理由はNITEがQ&Aで「「次亜塩素酸水」の噴霧での利用は安全面から控えるよう弊機構が公表したとする報道が一部にありますが、噴霧利用の是非について何らかの見解を示した事実はございません。」との見解を示したからだそうです。

    NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について~よくあるお問い合わせ(令和2年6月13日版)~
    https://www.nite.go.jp/information/osirasefaq20200430.html