薬機法等制度改正(案)がとりまとめへ (医薬品医療機器制度部会)

12月14日、医薬品医療機器制度部会が開催され、医薬品医療機器等法(以下、薬機法)の見直しのとりまとめ案が示され、若干の表現の修正が求められたものの、大筋で了承されたそうです。

厚生科学審議会 平成30年度第10回医薬品医療機器制度部会
(厚労省 2018.12.14開催)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02814.html

厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_430263.html

2013年(平成25年)11月に公布された薬機法ですが、5年を経て、人口構成の変化や技術革新の進展などの環境変化を踏まえ、医薬品・医療機器等を取り巻く現状や課題について議論を行い、薬機法の見直しが行われてきました。

そんな中、医師会委員の執拗とも言える発言から、にわかに「薬剤師・薬局のあり方、医薬分業のあり方について」が議論の対象となり、「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について」もとりまとめが行われました。 

これまでも一部報道でご存知かと思いますが、制度部会での議論では、現場の薬剤師にとって業務負担になりかねない事項が求められていましたが、今回の取りまとめ案では、「調剤録への記載義務」は記されないなど、文言にはかなり配慮されたものになっています。法制化後の省令で盛り込まれる可能性はありますが。

薬機法等制度改正に関するとりまとめ (案)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000454472.pdf

上記案のうち、薬剤師・薬局のあり方 の部分について抜粋します

薬剤師・薬局のあり方 

1.基本的な考え方

○ 本部会では、医薬分業の現状を踏まえ、今後の地域における薬物療法の提供に当たっての患者支援のあり方について、別途「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について」にとりまとめた。

○ これを踏まえると、今後、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、薬剤師・薬局がその役割を果たすためには、各地域の実情に応じ、医師をはじめとする他の職種や医療機関等の関係機関と情報共有しながら連携して、患者に対して一元的・継続的な薬物療法を提供することが重要である。

○ そのためには、薬剤師は、調剤時のみならず医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握(服薬アドヒアランスや有効性の確認、薬物有害事象の発見等)による薬学的管理を継続的に実施し、必要に応じて、患者に対する情報提供や薬学的知見に基づく指導を行うほか、それらの情報を、かかりつけ医・かかりつけ歯科医に提供することはも ちろん、他の職種や関係機関と共有することが更に必要となる。また、適切な薬学的管理を行い必要な受診勧奨につなげるため、要指導医薬品、一般用医薬品、いわゆる「健康食品」等の使用状況等を把握することも重要である。

○ 薬局は、従事する薬剤師が以上のような役割を十分に果たせるような環境を整備する必要がある。その一環として、薬剤師の行う対人業務を充実させる観点から、品質の確保を前提として対物業務の効率化を図る必要がある。

○ また、今後、在宅医療の需要が増大することが見込まれるほか、がんの薬物療法に関して、経口薬が増加して外来で処方される機会が多くなっているなど、専門性が高い薬学的管理が継続的に必要となる薬物療法が提供される機会が増加しており、このような状況に適切に対応するためには、臨床現場で専門性が高く、実践的な経験を有する医療機関の薬剤師が中心的な役割を果たしつつも、地域の実情に応じて、一定の資質を有する薬局の薬剤師が医療機関の薬剤師と連携しながら対応することが望ましいと考えられる。このような中では、患者が自身に適した機能を有する薬局を選択できるようにす ることが重要であり、そのための環境を整えるべきである。

2.具体的な方向性
(1) 患者の薬物療法を支援するために必要な薬剤師・薬局における取組
① 服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援
○ 現行の薬剤師法等の規定では、薬剤師は調剤時に情報提供や薬学的知見に基づく指導を行うことが義務づけられているが、薬剤の服用期間を通じて服薬状況の把握等を行うべき旨は必ずしも明確ではない。このため、薬剤師には、調剤時のみならず、薬剤の服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行う義務があることを明確化すべきである

○ また、患者に対する継続的な薬学的管理・指導を効果的に実施できるよう、薬剤師に、上記により把握した患者の服薬状況等の情報や実施した指導等の内容について記録することを義務づけるべきである。

○ 薬局開設者は、その薬局に従事する薬剤師に対して、上記に関する業務を実施させるべきである。

② 医師等への服薬状況等に関する情報の提供
○ 薬剤師は、把握した患者の服薬状況等に関する情報について、医療機関・薬局において診療又は調剤に従事する医師、歯科医師、薬剤師へ適切な頻度で提供するように努めるべきことを明確化すべきである。

③ 薬剤師の資質の向上
○ 以上のような役割を果たすためには、薬剤師自らが常に自己研鑽に努め、専門性を高めていくことが重要である。

(2) 患者が自身に適した薬局を主体的に選択するための方策
○ 患者が自身に適した機能を有する薬局を主体的に選択できるよう、薬局開設許可に加え、特定の機能を有する薬局を法令上明確にし、当該機能を果たしうる薬局であることを示す名称の表示を可能とすべきである。なお、具体的な機能としては、 「患者のための薬局ビジョン」においてかかりつけ薬剤師・薬局が備えていくことが必要とされた機能や患者等のニーズに応じて強化・充実すべきとされた機能を基本に、例えば、以下のような機能を持つ薬局が考えられる。

  • 地域において、在宅医療への対応や入退院時をはじめとする他の医療機関、薬局等との服薬情報の一元的・継続的な情報連携において役割を担う薬局
  • がん等の薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との密な連携を行いつつ、より丁寧な薬学管理や、高い専門性を求められる特殊な調剤に対応できる薬局

○ これらの薬局の機能に関する情報は、医療計画の策定等において活用されることが期待される。

(3) 遠隔服薬指導等
○ 遠隔診療の状況を踏まえ、対面でなくともテレビ電話等を用いることにより適切な服薬指導が行われると考えられる場合については、対面服薬指導義務の例外を検討する必要がある。例外の具体的な内容については、オンライン診療ガイドラインの内容や特区実証の状況等に加え、かかりつけ薬剤師に限定すべき、品質の確保など医薬品特有の事情を考慮すべき等の本部会での指摘を踏まえ、専門家によって適切なルールを検討すべきである。

○ 患者の療養の場や生活環境が変化している中で、患者が薬剤師による薬学的管理を受ける機会を確保するため、服薬指導及び調剤の一部を行う場所について、一定の条件の下で、職場等、医療が提供可能な場を含めるような取扱いとすべきである。

(4) 対人業務を充実させるための業務の効率化
○ 質の高い薬学的管理を患者に行えるよう、薬剤師の業務実態とその中で薬剤師が実施すべき業務等を精査しながら、調剤機器や情報技術の活用等も含めた業務効率化のために有効な取組の検討を進めるべきである。
(5) 麻薬流通の合理化
○ 在宅における緩和ケアを推進するためには、薬局において医療用麻薬が適切かつ円滑に患者に提供される必要がある。現行では処方箋を受け取った場合にのみ不足する医療用麻薬を薬局間で譲渡できる仕組みとなっているが、一定の要件の下で事前に譲渡することができるような仕組みを検討すべきである。

これまでの議論では

  1.  服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を実施することを薬剤師の実施すべき事項として法律に規定する
  2. 患者の服薬状況等の情報や実施した指導等の内容等に ついて、薬剤師が調剤録に記録することを義務づけることについて法律に規定
  3.  特定の機能を有する薬局を法令上明確にするとともに、患者の選択に資するよう当該機能を有す る薬局であることの名称の表示を可能とする

の3点が了承されましたが、「把握した患者の服薬状況等の情報や実施した指導等の内容について記録することを義務づけるべきである」として、2.の調剤録への記録の義務付けが盛り込まれませんでした。省令で記される可能性もありますが、薬歴に代わる可能性もあります。

また、1については議事録が現時点では公開されていないので、業界紙の報道によりますが、医薬分業のメリットを示すために、苦し紛れに出てきた感があります。

あの「患者のための薬局ビジョン」の実現を目指して、これまでは病院薬剤師が行うような高度な薬学管理を担うことを薬局に求めているようにも思われます。 関連ツイートをいくつか示しておきます。(フォロアーの方すみません)

当日、傍聴された方のツイートによれば、この件については次のような取り扱いになりそうです。

一方で、こういう懸念の指摘もあります。

3.についてですが、個人的には薬機法で規定することには疑問があります。

Pharma Tribune さんがこのタイミングで関連記事をアップしてくれました。やはり、薬局機能を薬機法で区分するのは無理があると思います。

一方で、とりまとめ案とは別に批判が集中した、医薬分業の今後あり方についても、まとめられています。 (とりまとめ案の13ページ以降)

薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について
(医薬分業に関するとりまとめ)

1.医薬分業の現状
○ 医薬分業が目指すものは、医師が患者に処方箋を交付し、薬剤師がその処方箋に基づき調剤を行うことで、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して業務を分担・連携すること等によって、患者に対して有効かつ安全な薬物療法の提供を行い、医療の質の向上を図ることである。具体的には、薬局の薬剤師が患者の服薬情報を一元的・継続的に把握した上で、薬学的管理・指導が行われることにより、複数医療機関受診による重複投薬、相互作用の有無の確認などが可能となる。また、薬局の薬剤師が、処方した医師・歯科医師と連携して患者に服薬指導することにより、患者の薬に対する理解が深まり、薬を適切に服用することが期待できる。

○ これまでのわが国における医薬分業は、こうした姿を目指して推進されてきたが、近年、これまで長らく薬局においては概して調剤における薬剤の調製などの対物中心の業務が行われるにとどまり、薬剤師による薬学的管理・指導が十分に行われているとはいえず、そのような状況下での医薬分業については、患者にとってのメリットが感じられないとの指摘や、公的医療保険財源や患者の負担に見合ったものになっていないとの指摘がされるようになってきている。

○ 医薬分業の現状を見ると、1970 年代以降、診療報酬で処方箋料の引上げや薬価差解消等の措置がとられたこともあり、処方箋受取率は上昇を続け、現在では処方箋受取率7割、薬局数は5万9千を超えている。費用面では、調剤技術料は調剤報酬改定での引上げもあって直近で 1.8 兆円に達しており、収益を内部留保として積み上げている薬局もある。

○ このような中で、厚生労働省は、平成27 年に患者本位の医薬分業の実現に向けて「患者のための薬局ビジョン」を策定し、かかりつけ薬剤師・薬局を推進して、薬剤師の業務を対物業務から対人業務を中心とした業務へシフトさせ、薬剤師がその専門性を発揮するよう、医療保険制度等における対応も含めて施策を進めてきた。

○ しかしながら、その後も、医薬分業について厳しい指摘が続いているほか、薬局における法令遵守上の問題1 (医薬品の偽造品の調剤、調剤済み処方箋の不適切な取扱い等)も散見されている。

○ 今回、本部会では、薬剤師・薬局のあり方と併せて医薬分業のあり方に関して議論してきたが、医薬分業により、医療機関では医師が自由に処方できることや医薬品の在庫負担がないことに加え、複数の医療機関を受診している患者について重複投薬・相互作用や残薬の確認をすることで、患者の安全につながっているという指摘がある一方で、現在の医薬分業は、政策誘導をした結果の形式的な分業であって多くの薬剤師・薬局において本来の機能を果たせておらず、医薬分業のメリットを患者も他の職種も実感できていないという指摘や、単純に薬剤の調製などの対物中心の業務を行うだけで業が成り立っており、多くの薬剤師・薬局が患者や他の職種から意義を理解されていないという危機感がないという指摘、さらには、薬剤師のあり方を見直せば医薬分業があるべき姿になるとは限らず、この際院内調剤の評価を見直し、院内処方へ一定の回帰を考えるべきであるという指摘があった。このことは関係者により重く受け止められるべきである。

2.今後の地域における薬物療法の提供にあたっての患者支援のあり方
○ 近年、少子高齢化がさらに進展し、我が国の各地域において、医療・介護・保健・福祉等に関わる関係機関等が連携して住民を支える地域包括ケアシステムの構築が進められている。このような中で、患者は、外来、在宅、入院、介護施設など複数の療養環境を移行することから、療養環境に関わらず、医師と薬剤師が密に連携し、他の職種や関係機関の協力を得ながら、患者の服薬状況等の情報を一元的・継続的に把握し、最適な薬学的管理やそれに基づく指導を実施することが重要となっている。

○ 特に、今後、在宅医療の需要の増加が見込まれる中で、必要な患者に対して在宅で安全かつ効果的な薬物療法を提供することは大きな課題となっている。

○ これに薬剤師・薬局が関わるためには、「患者のための薬局ビジョン」でも指摘されているように、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を果たすことが必要である。

○ また、がんの薬物療法に関して、経口薬が増加して外来で処方される機会が多くなっているなど、専門性が高い薬学的管理が継続的に必要となる薬物療法が提供される機会が増加している。

○ このような状況に適切に対応するためには、臨床現場で専門性が高く、実践的な経験を有する医療機関の薬剤師が中心的な役割を果たしつつも、地域の実情に応じて、一定の資質を有する薬局の薬剤師が医療機関の薬剤師と連携しながら対応することが望ましいと考えられる。

○ これらのニーズについては、医療機関の医師等が中心となって対応することが不可欠であるが、今後一層の高齢化や人口減少が見込まれる中において地域包括ケアシステムの更なる進展が求められることなどを踏まえると、薬剤師が、薬局で勤務する中で他の職種や関係機関と連携しながらこれらの業務に関わっていくことには意義があると考えられる。

○ そのためには、薬剤師が他の職種からも患者からも信頼されるに足る資質を持つことが前提となるが、この点に関しては、今後の薬学教育の下で、臨床において患者に接しながら薬学的な問題を発見し、それを解決できるようにするための臨床に係る実践的な能力を有する薬剤師の養成がさらに進められることを期待する。加えて、薬剤師の免許取得後も、地域で求められている役割が発揮できるよう、常に自己研鑽に努め、専門性を高めていくための取組が必要である。

○ また、薬剤師・薬局が患者の薬物療法により積極的に関わるに当たっては、他の職種や関係機関との間で必要な患者情報を共有する取組がさらに重要となるとの指摘があった。

○ 以上に対し、経済的な利益の追求や効率性にのみ目を奪われ、薬剤師や薬局がこのような機能を果たさず、薬局が調剤における薬剤の調製などの対物中心の業務にとどまる場合には、患者にとってメリットが感じられないものとなり、今後の患者に対する医薬分業の地域医療における意義は非常に小さいと言わざるを得ない。

○ 薬剤師・薬局には、一般用医薬品等を提供する機能・相談機能を通じて地域住民による主体的な健康維持・増進を支援するという機能(いわゆる「健康サポート機能」)がある。今後も引き続き、薬剤師・薬局がそのような面においても更に役割を果たしていくことが強く期待される。

○ ここで、医療機関の薬剤師につ1 いて述べると、医療機関の薬剤師の業務は、入院患者に対する薬学的管理・指導や薬物血中濃度の確認、医療安全に係る対応等の業務を行う中で、チーム医療の一員として医師等と連携しながら患者に接している。

○ 本部会での議論では、現在の薬局薬剤師と比較して、医療機関の薬剤師は医療への貢献度が他の職種から見てもわかりやすく、その役割等が見える存在になっている一方で、院内の薬剤師業務が十分評価されておらず、医療機関の薬剤師の総数が薬局の薬剤師に比較して増えていないとの指摘があった。

○ 今後、薬局薬剤師と医療機関の薬剤師が連携して、外来や入退院時に患者情報等の共有を行いながら切れ目のない薬学的管理と患者支援を行うことが一層求められると考えられるが、そのためには、医療機関の薬剤師の役割はさらに重要になってくる。

これまでの審議会全体の感想に関するツイートもあげておきます。

今後は、法制化にむけて国会などでの審議が進められるものと思われます。

パブリックコメントなどでも意思表示をする機会もあると思いますので、是非皆さんも注視して頂ければと思います。

(この記事は今後更新する可能性があります)


2018年12月14日 13:28 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    各紙が取り上げています

    一方、厚労省医薬・食品衛生局総務課薬事企画官の安川孝志氏は、制度部会後に報道陣にあいまいになっている点について考えを示したそうです。

    名称については、こういう記事も

  2. アポネット 小嶋

    この制度部会委員の阿真京子さんが、部会の感想をツイートしています。

    中川委員の勢いに、発言ができる雰囲気じゃなかったできなかったんでしょうね。

    でもこういうツイートをしてくれて安心しました。

  3. アポネット 小嶋

    この制度部会、このテーマに限ったことではないのですが、進め方には大いに問題があります。

    以前次のようなツイートをさせて頂きました。

    たまたま、傍聴された方のツイートですが、外部の人も審議の進め方には違和感があると指摘しています。

    こういった中でとりまとめられたこの案が、本当に法改正として必要なのかどうかも考えてみる必要があると思います。

  4. アポネット 小嶋

    正式なとりまとめと、これに対する日薬の見解です。

    薬機法等制度改正に関するとりまとめ
    (平成30年12月25日 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000463479.pdf

    【日本薬剤師会 平成30年12月27日】
    薬機法等制度改正に関するとりまとめを受けて
    https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pr-activity/PressRelease_20181227.pdf