受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究(厚生労働科学研究)

 世界禁煙デーに合わせて、各メディアが取り上げている厚生労働科学研究の報告書がWEBにアップされています。

受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究
(2016年度厚生労働科学研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201608009A

 この研究は、たばこ規制枠組み条約(FCTC)に照らして特に取組みが遅れている受動喫煙防止、広告・販売促進・後援の禁止、健康警告表示の3政策に重点をおき、政策化に役立つエビデンスの構築と実効性のある政策の提言を目的としていて行われていて、下記のような分担研究が行われています。(タイトルだけじゃわからないよね)

  • 受動喫煙防止の法規制の強化に必要なエビデンスの構築
    ・厚生労働省のホームページに公開されている受動喫煙防止対策の強化に関する資料と情報の整理
    ・全席禁煙化前後のファミリーレストランの売り上げの分析(海外の状況は資料8が詳しい)。全席禁煙化を行ったファミリーレストランの営業収入は、喫煙専用室を設置して客席を全席禁煙化した場合、営業収入は禁煙化前に比べて有意に増加することが明らかになったとした。
  • 他者危害性の理解につながる受動喫煙の新しい曝露指標の検討
    ・受動喫煙の他者危害性の理解につながる曝露指標に関する既存文献報告(4953 報)をレビュー
  • 受動喫煙防止等のたばこ対策による経済面の効果評価とモデルの構築
    ・たばこの超過医療費についの推計と喫煙関連疾患の超過罹患者数を算出
  • 受動喫煙対策や禁煙推進につながるメディアキャンペーンの効果検証
    ・受動喫煙の他者危害性の認識および支持する受動喫煙防止対策との関連を明らかにすることを目的とした行われたインターネット調査(15-71 歳の男女10114人)の結果分析
  • 健康警告表示の強化に必要なエビデンスの構築
    ・財政制度等審議会 たばこ事業等分科会表示等部会が2016年6月に提示した「たばこパッケージ表示の見直しと,警告文の表示」の見直し案(→リンク)についての評価についてのインターネット調査(9,939例・断面調査)の結果分析。警告表示の改定案はインパクトが小さいと認識されていると思われるとした。
  • 広告・販売促進・後援の禁止の規制強化に向けてのエビデンスの構築
    ・たばこ広告に対する気づきや認識についてのインターネット調査(9,939例・断面調査)の結果分析。「企業イメージ広告、喫煙マナー広告、未成年者喫煙防止広告」「未成年者喫煙防止広告」「たばこ広告規制のあり方」について考察
  • 政策干渉の観点からみたたばこ産業の広告やCSR活動の分析
    ・JT 意見としてJT ホームページ上に掲載されている38 事例について内容を精読し、自治体の受動喫煙対策に影響を与えるものかどうか分析。自治体に対しては、首長あての意見書を提出するなど、自治体の健康政策に対しての干渉とも言うべき活動を行われているとして、今後、他の自治体での受動喫煙防止対策強化に対する政策干渉の有無について、注意深く分析すべきと考えられたとした。
  • 健康警告表示の強化に必要なエビデンスの構築
    ・たばこ事業等分科会表示等部会が提示した「たばこパッケージ表示の見直しと,警告文の表示」の見直し案についてのインパクトについてのインターネット調査(9,939例・断面調査)の結果分析。表示等部会の提示案とは相当に乖離しており、健康警告表示として、より明確な情報提示の必要性が望まれていることが示唆されるとした。
  • たばこ政策形成における法的課題とその推進方策についての検討
    ・法律の専門家及び小児科医師等と意見交換を行い、子どもを受動喫煙から守る条例案文の策定検討。子どもの受動喫煙防止の条例が制定され、いずれは各地の地方自治体の条例及び国の法律によって全国に普及拡大が望まれるとした。
  • COPD等のたばこの健康影響の啓発と禁煙を推進する保健医療システムの構築
    ・質問票によるCOPD 簡易スクリーニングと呼吸機能を用いた禁煙アドバイスがCOPD の認知度や禁煙成功率上昇につながるかを検討することを目的にして行うRCの研究計画の作成
  • たばこ対策による健康面の効果評価とモデルの構築
    ・日本で実施可能性が比較的高い受動喫煙防止の法制化、健診等の場での短期介入普及、およびクイットライン(+メディアキャンペーン)を組み合わせることで2022 年度の成人喫煙率の目標値を達成できるかを検討。がん対策推進基本計画および健康日本21(第二次)の成人喫煙率の目標値を実現し、国民の疾病負荷を効果的に軽減するためには、たばこ価格の大幅値上げを含む包括的なたばこ対策を実施する必要があるとした。

 現在、受動喫煙の問題がクローズアップされていますが、こういった調査結果を政治家の方はよく目を通して頂きたいと思います。

関連資料:
第35回財政制度等審議会 たばこ事業等分科会(2016.06.07開催)
  資料(→リンク)  議事要旨(→リンク


2017年06月02日 13:07 投稿

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